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魔法執事の変態日記でございます。  作者: あうすれーぜ
お嬢様の小学生時代でございます
22/150

第22回 レッツパーリィでございます


 夕暮れ時、空が茜色から葵色に変わりゆくころでございます。

 じゅうじゅうと小気味のよい音と香ばしい匂いを煙とともに立ち昇らせて、金網の周りに笑い声が響きます。


 お嬢様もトモミ様も、午後からのソーセージ作りをよく頑張られました。

 わたくしの開発いたしましたソーセージキットで、60本を15分かかりました。

 本日の正餐は、泣く子も笑うバーベキューパーティーとなっております。

 焼いておりますお肉は、恐らく都の高級レストランでもなかなか提供されない超が付くほどの特上品、しかも1頭から僅かしか取れない内もものさらに内側や額の辺り、フィレとロースの間の芯の部分など、希少な部位も惜しみなく使用しております。


「すっごくトロトロで、柔らかーい! ほっぺたがとろけちゃうー!」


 わたくし、薄切りにしたお肉を焼きながら、食材に対する祈りを捧げております。

 ここから山を越えた隣国の奥地にお住まいの狩猟民族の方々から教えを賜りました、獣の神への感謝の舞でございます。

 裸になって火の周りをぐるぐるしつつ両手を上げ下げし、獲物の魂を抱え上げる仕草を表す、極めて尊いダンスでございます。

 もちろん、ここは淑女のおられる正餐の場、わたくしドレスコードは遵守いたしております。

 革靴とやたら長いネクタイは埃ひとつなく着用、髪はきちんとオールバックに固めてございます。

 現地の言葉でウホウホウッホウホウホッホイと唱えますが、これは獣の神様ありがとうございますあなたの下さった貴重な肉を食して我々は命を繋げることができます魂はお返ししますので今後ともよろしくお願いします、という意味でございます。


 お肉でございますが、わたくしも祈りながらひとくちいただいたところ、あまりの霜降りのおいしさに、ほっぺたどころか身体中のいたるところがポロッポロリンと落っこち申し上げました。

 ひょいと拾ってぴったんことくっつけましたので事なきを得ましたが、いかんせん全身福笑い状態でございます。


 と、ほどよくお腹いっぱいになりましたところで、辺りは宵闇に包まれました。

 お次は花火をご用意いたしております。

 わたくし、花火の明かりに照らし出されないよう、いまから気が引き締まります。

祈りの舞の間は、お嬢様やトモミ様のお目に触れないよう、

わたくし神速で金網を周回いたしました。

お皿をお持ちする角度やお野菜をお取り分けする際の手の位置など、

細心の注意を払っております。


改めて申し上げるまでもございませんが、この物語は全年齢向けとなっております。

従いまして、どなた様がお読みになっても、圧倒的セーフでございます。

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