第17回 絆の双生児でございます
トモミ様のために何かをしてあげたい、とお嬢様がおっしゃいました。
わたくし、そのお優しいお心に、直立のまま全身の痙攣が止まりません。
「お嬢様、いまこの瞬間、トモミ様とご一緒の時を過ごされていらっしゃること自体が、すでに何物にも代えがたいお二人へのプレゼントとなっております。されど、なお何か特別なことをとおっしゃるのでありましたら、お嬢様から一方的にではなく、お二人でお力を合わせて何かを成し遂げられるのはいかがでしょう。そうなさることが、この夏休みの思い出だけでなく、大人になられてからもお二人のお心の中に燦然と輝く宝物になりますかと存じます」
お嬢様はちょっと考え込まれましたが、すぐにトモミ様とにっこりお顔を合わされました。
こうしていらっしゃると、お二人はお年の差を全く感じさせない仲の良い姉妹、まるで双子のようにも思えることがございます。
「ねえ、サン。私、トモミと一緒に本格ソーセージが作りたい」
ソーセージはご存じの通り、挽き肉を動物の腸に詰めた保存食でございます。
熟練の技術や専用の器具、清潔な衛生環境が必要な、難易度の高い挑戦でございます。
ですが、ご安心下さい。
わたくし、このようなこともあろうかと、先ほどお仕事の片手間に簡単ソーセージ製作キットの開発に着手いたしまして、たった今完成いたしました。
お嬢様が朝召し上がった牛乳の瓶や、お暇つぶしに遊ばれるリリアン編みなどから着想をいただきましてございます。
これさえありますれば、ゴツイ髭を蓄えた男性でなくともちょちょいのぱっ、でございます。
「承知いたしました。では、あとは材料の調達に参りましょう」
狩猟でありましたら、雰囲気を出すためゴツイ髭を蓄える係はわたくしにお任せ下さい。
あごの下に手を添え、顔に力を入れ、手をすっと下ろすとともににゅるんと生やします。
これぞ執事魔法――
≪執事押出≫!!
形から入りますと気持ちも切り替わり、よい効果が期待されますね。
ちなみに、お嬢様は粒マスタードと辛子マヨネーズを交互にお付けになる派でいらっしゃいます。