第15回 運命の再会でございます
お嬢様のご友人、トモミ・エヴァーウッド様はお嬢様よりも少し年上、12歳と伺っております。
艶やかな黒髪を伸ばされ、大人びた微笑みを絶やさぬ楚々とした方でいらっしゃいます。
「御機嫌よう、サン。あれからどうしていたのかしら」
「エヴァーウッド侯爵令嬢様におかれましても御機嫌麗しゅう御慶び申し上げます。7か月ぶり、でございますね」
「トモミと呼んで。以前の……7か月11日18時間6分19秒前の、あの時の私たちのように」
「もったいないお言葉。トモミ様、わたくしはとりわけ変わり映えもいたしませんが、トモミ様はあれよりさらに大人になられました。『貴人3日会わざれば刮目して見よ』、わたくしの故郷に伝わる格言にございます。本来は『男子3日会わざれば――』と申しますが、トモミ様におかれましてはわたくしのような凡庸な男など、遥かに置き去りになさるご成長ぶりでいらっしゃいます」
「まあ、それでは私、あっと言う間におばあちゃんになってしまうわ。でも、それなら今日中に貴方の年に追いつくかしら」
なにやらただならぬ関係に思われますが、少しご解説いたしましょう。
トモミ様は恋に恋するお年頃で、恋愛事に興味津々でいらっしゃいます。
ただ、トモミ様にとっては男性と1秒間目を合わせるのが交際開始でいらっしゃいまして、3分間目を合わせないと破局らしゅうございます。
その観点で参りますと、トモミ様とわたくしは、これまでに286回付き合っては別れ、よりを戻しております。
と、誤解なされてはいけませんが、トモミ様のご用事はわたくしなどではございません。
「では、エスコートをお願い。私、ジョーに着せてあげたい服をたくさん持ってきたの」
「は。わたくし、僭越ながらリクエストいたしますと、お着物姿が超絶見とうございます」
トモミ様は、お嬢様がとても大好きでいらっしゃいます。
本来、和装には悪代官が付き物でございます。
が、なにぶん、取引先の悪代官はいま、改心して空き缶拾いに精を出しております。
そのため、お着物姿のお嬢様に『よいではないかよいではないか』をして
『あ~れ~』できるのは
わたくしだけでございます。