第145回 執事ック複合でございます
即席のスキー場に皆様をご案内いたしましてから、スキーの用具をご用意いたします。
材料は、周囲に自生しております樹木、スギやヒノキなどでございます。
まず、皆様の身長を目視にて確認いたします。
それからてくてくと樹木に近づき、上下を指でなぞります。
3歩離れて指パッチンをいたしますれば、バラバラと細長い板が切り分けられました。
切り分ける際に板の先端もカールさせましたし、足を乗せる接続具も樹皮から組み立てました。
樹脂もたっぷりでございますので、よく滑り雪が付着いたしません。
最後にいい感じの枝をストックとしてお渡ししまして――
いざ、インストラクター執事のエスコート開始でございます。
このスキー場、初心者から上級者、さらには超級者(執事、あるいは怪盗)までお楽しみいただけるコース配置となっております。
初心者コースから参りましょう。
近くに大木が数本、寝転んでしなっております。
太い横枝に並んで座りますと、樹木が起き上がって枝ごと動きます。
そのままういーんと反対側に寝転がりますと、そこは初心者コースの頂上でございます。
「じゃあサン、わたしたちこっちで練習してるわね。行きましょう、トモミ」
「ええ。お手柔らかにね、ジョー」
わたくしとヌパン様は超級者コースへ参ります。
次の寝転がる大木へ乗りまして、ものすごい勢いでカタパルト投石機のように弾き飛ばされます。
7600メートルほど飛びました先には冬眠から覚めたばかりの小山のような象、タイタニックマンモスがおりますので、その鼻から額にかけて滑走しつつさらに飛びます。
さらに樹木の先端を飛び移りますこと数十回、エヴァーウッド領の誇る霊峰の、万年雪をたたえる槍のような山頂に到着いたしますので、タッチして戻ります。
スキー場の入口に回転しつつ帰還し、びたーんと全身で落下いたします。
そのタイムと、びたーんの美しさを競う、今とてもホットなスポーツでございます。
美しさの基準は、手足の関節が直角であること、雪に深々とめり込んで人の形がくっきり残ること、
落下の際にスキー用具は全て外してびたーんの近くに並べて突き刺すこと、などが挙げられます。