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魔法執事の変態日記でございます。  作者: あうすれーぜ
お嬢様の小学生時代でございます
143/150

第143回 甘露なる褐色のなんかどろっとしたのでございます


 わたくし、夜中にお外に出ております。

 正確には、物干しざおに掛けられ寒風に棚引いております。

 バタバタ、バタバタ。


 何故かと申しますと、お嬢様が枕投げもとい執事投げに熱中なさる余り、トモミ様のお部屋にございました花瓶を倒してしまわれたからでございます。

 もちろん水はわたくしにダイレクトアタックでございます。


 冬は乾燥いたしますので、執事もよく乾きます。

 バタバタ、バタバタ。




 さて。

 本日は、この国に伝わる聖人の生誕日にちなんだ、ちょっとした催し物がございます。

 わたくしの故郷にも、バレンタインデーという名前の、よく似たイベントがございます。

 何やらアツアツな感じでございます。


 こちらの国では、地域にもよりますが、主にお花を贈る風習がございます。

 冬場はお花が高級品でございますし、春を待ち侘びるといった意味も込められております。

 わたくしの故郷では、お菓子を贈ることが多くなっております。

 特に人気なのが、カカオという植物の実を使ったお菓子でございます。


 あいにく、この国にはカカオはございません。

 以前、お嬢様に、何かカカオの代わりになるものはとご質問をお受けいたしました。

 わたくしがカカオのお菓子の特徴をお伝えいたしましたところ――


 ちょっとこれは自慢になってしまいますが、わたくし、その折にお嬢様から贈り物を賜りました。

 お嬢様お手製の、




 泥団子でございます。




 当時、お嬢様は6歳でいらっしゃいました。


 わたくしにはあの無機物の球が、至宝にも勝る宝物でございます。


 それからわたくし、図々しくも、今年の催しには何か頂けるかと、気もそぞろでございます。

 わたくしの方からは、海を越えた熱帯原産の食虫花をご用意いたしておりますが、ついつい期待と不安にそわそわしてしまいますね。

 バタバタ、バタバタ。

当時の贈り物には、枯れ葉やわらの切れ端などが無造作にトッピングされておりました。

味わい深い趣きとなっております。


実際の味わいもまた、深いものがございました。

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