第141回 新執事風土記でございます
トモミ様のお父上にしてエヴァーウッド家当主であらせられます、エヴァーウッド侯爵様が、お嬢様のためにパーティーを開いて下さいました。
ご本人は『ささやかなもので済まぬな』とご謙遜なさっておいででしたが、あまり豪華で派手なものをお好みでいらっしゃらないお嬢様にはちょうどピッタリでございます。
ついでに申しますと、お嬢様の魔力体質と指名手配中のヌパン様に関しましても既に侯爵様にお伝えしてありますので、騒ぎを大きくしないように調節して頂けたようでございます。
本来、お嬢様への給仕は執事であるわたくしがいたしております。
が、なにぶん、向こうの侍従長の方には、今回は執事もあくまでお客様ですので、と断られてしまっております。
そのため、お嬢様へのお毒見役は不在でございます。
いえ、決してこちらのセキュリティーを信用していないわけではございません。
ただ、万が一ということでございます。
もう少し本音を申しますれば、お嬢様は、大切になさっていたお屋敷が天空へ発射されてご傷心中でいらっしゃいます。
そのお嬢様へ、お慰めにかこつけて『あーん』をしたかったところ、その大義名分を失ってしょんぼり執事でございます。
仕方がありませんので、お嬢様にお元気になっていただくために、領民の方々からの応援メッセージをご紹介いたしましょう。
わたくしの口の中と、ルビンフォート家お屋敷跡の目安箱が、中継で繋がっております。
では早速。
「ういーん。ベロベロベロ。でございます」
えー、まずは。
雪でございます。
吹き込んでいたようでございます。
飲みこんでおきます。
後は、でございますと……
雪、雪、雪、雪、雪、雪、でございます。
あ、大根も入っておりました。
お裾分けのようでございますね。
わたくしがぬもーと口から大根をお出しするのをご覧になり、お嬢様も大笑いでいらっしゃいます。
もちろん、大根は投稿後スタッフが責任をもっておいしくいただきました。