第140回 執事白熱教室でございます
お嬢様は、トモミ様とご一緒にお部屋でのんびりなさっておられます。
トモミ様と、トモミ様のエヴァーウッド家からのご厚意は大変にありがたき幸せでございます。
とは申しましても、一介の使用人たるわたくしまでそれに甘えるわけには参りません。
ので、わたくしは執事らしく、ちゃんと働いております。
エヴァーウッド家本邸の維持管理に関しましては、既に人手が足りております。
お掃除やお料理の方も、こちらには使用人が大勢おりますので、問題ございません。
そこでわたくしは、トモミ様のお部屋にて、インテリア兼照明の役割を買って出ております。
「ぴかー。でございます」
眼球から当然のごとく発光いたしております。
家具の一部になりきって気配を消し、あるじのお気を煩わせないことは、執事にとって基本にして奥義でございます。
「こうでしょうか、師匠!?」
横ではヌパン様も、眼球から発光しつつ棒立ちになって頑張っていらっしゃいます。
「光の強さや角度は適切でございます。ただ、瞬きをなさいますと明かりが点滅し、お部屋がチカチカいたします。視力低下や頭痛の原因になってしまいますのでご注意下さい」
「はい、ありがとうございます、師匠!」
わたくし同様、ヌパン様はそれっきり一切の瞬きをしないようになりました。
うまくいきましたので、そのままわたくしとヌパン様とでお部屋の周囲をくるくる徘徊いたします。
暖かく静かなお部屋の中、ゆっくりとしたひと時を過ごす少女たちを取り巻いてフンッハッフンッハッと謎のポーズを決めながら周回する成人男性(複数)。
春も遠からじでございます。
昼光色ではなく暖色系でございますので、心も身体もぽっかぽかでございます。
カラーコンタクトレンズを入れ替えて瞬きを連射いたしますと、マジでエモいクラブに早変わりでございます。