第125回 お嬢様、明けましておめでとうございます (下)
お洒落なポチ袋に執事印のシールを貼りまして、懐に忍ばせ居間へと向かいます。
少し遅めの朝食、あるいは少し早めの昼食をお召し上がりになったお嬢様とトモミ様が、今頃はお正月遊びをお楽しみかと存じます。
「失礼いたします。お茶のご用意が――おや」
そこはまるで、スプラッタ劇場でございました。
お嬢様もトモミ様も、それぞれ綺麗なおぐしをこれでもかと乱され床に伏されていらっしゃいます。
辺りには、ボードゲームの駒やカルタゲームの札、果敢にもリーチを繰り返された点棒にお上がりになったみかんの皮……
ありとあらゆるものが散乱しております。
「なんということでございましょう」
わたくし、片手にお茶のトレイを優雅な仕草で乗せたまま、ハンケチーフを取り出し自分の顔に当てました。
お嬢様とトモミ様は、全身全霊でいらっしゃいました。
夜更かしなさって起きられた後、お正月の初日から全力で遊び惚けられて、ついにはゲーム中に力尽きてしまわれたのでございます。
ハンケチーフは見る見るうちに赤く染まりました。
子猫のようなお昼寝ぶりの愛らしさに、わたくしの毛細血管は決壊でございます。
それは大変結構でございますが、お布団でお休みにならないとお風邪を召しますし、獅子のような寝ぐせもついてしまいます。
七輪でお餅を焼きつつポチ袋をひらひらさせて匂いを送り込みますと、お二人ともがばりと起きられました。
これからはわたくしも参加いたしましょう。
取り札をいたしますので、どうぞご存分にお叩き下さい。
お手付きも多少はアリでございますので、どうぞどうぞ、こう、バシイィと。
お外に出られた際には、羽根つきもいたしましょう。
わたくしが羽根をいたしますので、こう、ドギャアァと。