第122回 執事も走る時期でございます
聖誕祭にまつわるお坊様の長ーい講話が終わりまして、お嬢様はへとへとになってトモミ様にもたれかかられて戻って来られました。
「トモミ……わたしもうダメ。後のことは頼んだ……わ……」
「任せて、ジョー。今からお昼ごはんだけど、あなたの分も食べちゃうから。あの黒い怪鳥のローストよ」
「ホント!? 早く行かなきゃ!」
お嬢様が冥府の淵よりご帰還なされたところで、わたくしお嬢様の御前にすっと歩み出ます。
「お嬢様。本日よりルビンフォート領にて年越しの儀が行われます。つきましてはご出席のため、昼過ぎには一旦こちらを発たねばなりません。これはお嬢様がこちらにご滞在なさる際、エヴァーウッド侯爵様とお取り交わされたお約束にございます」
お嬢様は、本心ではがっかりなさりたいところを、ご自分の領民を気遣われて明るく答えられました。
「ええ、分かってるわ。サン、それに関してひとつおねだりしたいことがあるのだけれど」
「は。おねだりとおっしゃらずともご命令とあらば何なりと。なお、魔王メインディッシュのお肉のご領地へのお土産ということでございましたら、わたくしこのようなこともあろうかと侯爵様より既にご許可を頂いております」
お嬢様のお顔がぱあっと明るくなりました。
トモミ様もにこにこでいらっしゃいます。
「ところでトモミ様。お嬢様の一時ご帰宅は確定でございますが、トモミ様の年末行事に関しましては未定と伺っております。僭越ながら、ルビンフォート家にご招待させて頂きたくお願い申し上げます」
申し終わるや、わたくしばっと床に四つん這いになりまして、猫のように上体をにゅーっと伸ばしました。
2人乗りのバスでございます。
これぞ執事魔法――
≪執事戦車≫!!
今年も大変お世話になりました。
来年は1月1日の夜あたりに更新の予定となっております。
第123回 お嬢様、明けましておめでとうございます (上)
にてお会いいたしましょう。