第118回 聖誕祭でございます
大広間の至る所で、乾杯の音頭が上がっております。
エヴァーウッド騎士団とそれを擁する貴族の方々が大勢いらっしゃいます。
今回は、聖誕祭のパーティー兼戦勝パーティーでございます。
トモミ様は広間の向こうで、お偉い方々のご挨拶を受けておられまして、お忙しそうでございます。
そんなトモミ様を、お嬢様は指をおくわえになってご覧遊ばされておいでです。
お嬢様がお寂しい思いをなさらないために、わたくしちょいと細工をいたしました。
「シャンシャンシャン。シャンシャンシャン。でございます」
広間の中央に置かれた大きなモミの木がございます。
それに飾り付けられたベルが鳴り響きまして、そこかしこでダンスが始まりました。
ムードが変わりましたことを機に、トモミ様はこれ幸いと微笑まれました。
先約をご理由にお偉方を辞し、お嬢様の所へ駆け寄って来られます。
「ごめんなさい、ジョー。遅くなってしまったわ」
お嬢様は何もおっしゃらず、お着物姿のトモミ様にぎゅっと抱き着かれました。
わたくしも一安心でございます。
周囲の方々の注意を更にダンスの方へ引き付けるべく、ベルをリズミカルに鳴らし続けますとともに、広間の照明をカラフルなものへと変更いたします。
具体的な方法といたしましては、わたくしが身体を小刻みにゆすりつつ、瞳をチカチカと発光させることで可能でございます。
何しろわたくし、ただいまモミの木をいたしておりますので。
これぞ執事魔法――
≪執事電飾≫!!
まあちょっと乗りすぎまして、ダンス会場が貴族らしからぬ賑やかムードになりましたが、ご愛嬌といたしましょう。
ついでにわたくしも激しくヘッドバンキングをいたしましたところ、モミの木のてっぺんにございましたお星様がどこかにひゅーんと飛んで行きました。
変装とは申しましてもモミの木でございます以上、わたくしちゃんと足から水を吸収いたします。
そこはこう、リアリティーの追求でございます。