第117回 SATAN砕でございます
エヴァーウッド領の外れにございます、ちょっと険しい山道に来ております。
こちらも普段は美しい丘を見下ろせる、大変素敵な所でございますが、ただいまどんよりと暗雲に包まれております。
「本日は、当家主従を作戦に加えて頂きまして、誠にありがとうございます。わたくし、旅のご案内をさせて頂きます、執事でございます。
では先遣隊の皆様。右手上空をご覧下さい。魔王でございます」
わたくしの観光ガイドによりお空を見上げました方々は、一様に「うおお」や「何ィ」と歓声を上げられております。
お嬢様もお空をご覧になり、「きゃっ」とびっくりなさってわたくしにしがみ付かれました。
当然のごとく鼻血でございます。
暗い空を飛んでおりますのは、平たく申しますと鳥と羊を合わせて墨汁につけ、物凄く大きくした感じの生き物でございます。
かつては魔王ワールウィンドナイトメア、といういかにもな名前で呼ばれておりましたが……
わたくしには今夜のメインディッシュでございます。
「お嬢様。合挽肉ハンバーグと黒フライドチキン、お好きな方で調理いたします。つきましては、わたくしに14秒ほど御前を離れます旨、ご許可をお願いいたします」
「サン。私、ジンギスカンがいいわ。みんなで焼いていただきましょう?」
「承知いたしました」
すかさずわたくし上空に執事ジャンプいたしまして、上空6500メートルでくるりと1回転いたしました。
そのまま斜めに急降下しての執事キックでございます。
少々野蛮ではございますが、流星のような蹴りは瞬く間にメインディッシュの心臓を貫きました。
少しも苦しむ間もなく屠畜完了でございます。
お肉の落下地点は例の美しい丘となっておりますので、新たな名物の誕生でございます。
戦闘シーンは1分間に500文字をお読みになると仮定いたしました際の目安でございます。
ちなみに部隊の編成は、先遣隊と炊き出し隊で構成されております。