第114回 夢の賞与でございます
「ひょっほぉーい! えふふふ、んはははは! うあぁーい! ぬふふへへへへへえっ! 冬休みぃーっ!」
文字に起こしますと何やらとてつもない感じでございますが、最後の言葉がすべてを物語っております。
つまり、ただいまお嬢様が浮かれてはしゃいでおられます。
寄宿舎からお荷物を移されてお屋敷にお戻りになるや――
バオバブ様内部の螺旋階段を駆け上がられ、手すりに飛び乗られてするすると滑り降りられています。
それを3度繰り返されてから、下の居間でダブルスピンジャンプを5連続で成功なさいましたと同時にわたくしのお淹れした紅茶のお席にご着席になりました。
「お嬢様、あまり飛び回られますと……」
わたくし、お嬢様にご注意申し上げる言葉を少し考えました。
埃が立ちますよ、とかお怪我をなさいますよ、とかは申し上げられません。
お掃除は完璧にしておりますし、お嬢様がお怪我をなさるようなお屋敷の作りにもなってはおりませんので。
止むを得ず、わたくし血を吐く思いで申し上げました。
「……見えてしまいますよ」
「えっ!? ……サンのバカー!」
全ては、お嬢様が一人前のレディーになられるためでございます。
もちろんわたくし、自らそのような角度に立つことはございません。
緊急の際にもこのように、お嬢様のスカー
ほら、何事もなく飛ばすことも出来ます。
なお、お嬢様に罵られることは、冬のボーナスでございます。
「ところでお嬢様。エヴァーウッド領へのお出かけのご準備は整っております。後はお嬢様のお返事のみでございます」
「ひょっほぉーい! トモミと一緒! トモミと一緒!」
お嬢様に尻尾がございましたら、分身する勢いでお振りになられたことでしょう。
誤解のないように申し上げておきますが、
わたくし、覗いたりそういったことは決していたしません。
そんなことをしておりましては、連載自体がピンチになりますので。