第113回 冬休みでございます (下)
校庭の片隅にて、お嬢様とトモミ様が両手を取り合われ、くるくると30回転ほどなさっておられます。
「ジョー! 実技試験上手くいったのね、良かったわ!」
「トモミー! ありがとうー! タンスの裏もピッカピカなの! サンのおかげよ!」
「うふふふふ!」
「あはははは!」
わたくしは、お二人のお靴が砂埃に汚れないよう、またつるりとお滑りになってしまわれないよう、地べたに寝そべりましてカーペットをいたしております。
「お嬢様、試験終了、お疲れ様でございます。魔法学校のカリキュラムにおきましても高難度の魔法剣を成功なされたことにより、お嬢様は中等部への飛び級がほぼ内定かと存じます。正式な通達は、冬休み中に届きますかと」
「飛び級!? 私が? 夢みたいね。……あ! ということは、来年から、またトモミと一緒にいられるのね!?」
わたくしの、お嬢様に魔法剣を伝授いたしました目的の一つはそれでございました。
お嬢様は初等部4年生から中等部1年生へ飛び級されます。
これにより、トモミ様との学年が3個から1個に縮まります。
お嬢様にお寂しい思いをさせないことは、わたくしの人生の第一義でございますので。
ちなみにもう一つは、派手な魔法のパフォーマンスをご披露いただくことで、魔法使い誘拐犯を釣り出すことでございました。
これはどなたにも内緒でございましたが、アルギュロス殿下には気付かれたようでございます。
「トモミ、私冬休み中はトモミと一緒に過ごしたいな。ねえ、サン。いいでしょ?」
「承知いたしました。とは申しましても年末年始の行事はございます。お嬢様はそれにご出席いただく必要がございますし、宿題もちゃんとなさるのでありましたら、直ちにエヴァーウッド侯爵様にお伺いを立てて参ります」
角度的には見えておりませんので、ご安心いただきつつも通報は少々お待ち下さい。
いえ、多分逮捕はされないとは存じますが念のため、でございます。