第105回 魔法少女オジョウサマーでございます
「ふふ、哀れなものね。でも、ゴミはゴミらしくそうしているのがお似合いかしら。さあ、塵ひとつ残さず消し去ってあげるわ! 覚悟なさい!」
お嬢様はすっかり御機嫌麗しく、廊下から階段周辺まで、壁も天井もはたき掛け……
いえ、魔法剣掛けを施しておられます。
剣の尖端の黒い球体はぎっちり固まって、静電気もくすぶって参りました。
確かに、お嬢様には、普通の魔法はちょっと苦手なところもございます。
が、決して素質自体が欠落されているわけではございません。
それに、こうして趣向を凝らせますことで、学校のお勉強の感覚から少し離れますと、こうして伸び伸びと水を吸うスポンジのように上達されます。
「お見事でございます、お嬢様。ところで、暗黒のエネルギーは正義の味方が使用されるのもまた趣きがございますかと」
「ふふっ、ちょっとはコツが掴めたかしら。ありがとう、サン。悪役が正義の心に目覚めていく過程もカッコイイわよ」
わたくしが指先を指揮棒のように振りますと、邪悪なる埃の塊はふわっと窓の外に飛んで行きまして、指パッチンで綺麗な花火となりました。
「魔法の維持と操作に関しましては、これで必要十分でございます。実のところ、今の魔法剣のような方法は、初等部ではまずカリキュラムにはございません。中等部の最終学年相当の難易度となっておりますので」
「まあ。それじゃあ私、ちょっとだけ天才気分だわ。……けど、私だけだと、こんなの絶対出来ないわね」
剣を下ろされ、お嬢様はしょぼんとされました。
その、コロコロお変わりになるご表情、額縁に入れて飾りたくなりますが、ここはフォローを申し上げます。
「わたくしは最初と最後以外には何もいたしておりません。お嬢様のお力にございます。また、魔法にしても早起きにしても、初めの瞬間が難しいものでございます。後は魔法の発動とゴミ処理を習得なされば、生活に役立つ魔法剣はお嬢様のものとなります」
お嬢様が瞳をキラキラさせてこちらを見つめられると、何かの心に目覚めて参ります。
最初のセリフを浴びせられた壁の埃に対しまして、
わたくし怨念ジェラシーでございます。
ジェラ執事でございます。