第100回 共同作業でございます (下)
正餐の場は、小ぢんまりとした丸テーブルでございます。
お嬢様がご着席されるのを見計らってからお料理をお運びしようといたしましたことろ、
「私が運ぶから」
「は。承知いたしました。お嬢様のお望みのままに。火傷をなさらないよう、この鍋つかみをお使い下さい」
わたくしのハンケチーフは、耐熱性が高くなっておりまして、猛火の中でもこれさえ敷けば、たちまちリゾート気分でございます。
……となりますのは流石にわたくしだけでございますが、今回こっそりと熱遮断魔法をお掛けいたしました。
お嬢様のご安全が最優先でございますので。
一応、魔法を悟られないよう、耐熱温度は100℃までと、弱めになっております。
「サンの分もよそってあげるね! 私、学校の給食も、よそうの得意なんだから」
「身に余る光栄、恐悦至極に存じます。わたくし、このことは100年経っても決して忘れません」
「オーバーね、サンは。さ、出来たわよ。いただきましょう」
本来、貴族階級では、主と使用人が同じ食卓を囲むことはございません。
が、なにぶん、お嬢様はこれまでずっと独りぼっちでいらっしゃいました。
そのため、お嬢様をお支え出来るのは、わたくしだけでございます。
「とてもおいしいわ! サン、あなたの教えてくれたスープ、私これなら100杯はお代わり出来ちゃう!」
「お嬢様が川魚の下処理をしっかりとなされたためでございます。こちらの温泉卵もお召し上がり下さい。温泉につけて、全体にヒビが入っておりますので簡単に殻は剥がれます」
「こっちも最高ね。けど、本当に100人前もあると食べきれないわね」
「後日、別の卵料理として再利用いたしますので、ご心配には及びません。今夜はパーティーでございます。お嬢様には、何もお気兼ねなさらずにお楽しみくださいませ」
「まあ。サンと私、二人だけのパーティーね。素敵だわ。……何のパーティーかは分からないけど、こういうことは100回でもやりたいわ」
「左様でございますね。お嬢様、次のお料理もございます。『川マグロのカルパッチョ ~謎の虹色ソースがけ~』でございます」
おかげさまで100回でございます。
いつもご贔屓に与りまして、誠にありがとうございます。
さて、次回より少し更新頻度が変わります。
毎週月・火・水曜日の夜に投稿していく予定となります。
日付をまたぐこともございますが、
皆様の通勤通学のお時間には間に合うことと存じますので、
これからも変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。