1
木々が生い茂った森の中、一つの小屋がある。作りは簡素で周りの木を伐採して小屋を組んだものだとわかるほどには、適当に作られた様相をしている。
その適当な小屋の中に、一人の男がいた。齢100を超えてなお衰えぬ気迫を持った男は、自身の死期に気づき山奥へ一人こもったのだ。
「俺にもようやく死期がきたか。仲間たちはとうに旅立ったというのに一人生きながらえるというのは、なんとも寂しいものよ。我ら魔術師の願いはこの時代において叶うものではなかったが、後世の者たちが至るものと信じてこの一生を終えよう。願わくば...」
最後に一言つぶやき、男は息を引き取った。
意識が覚醒する。
ん?俺はまだ生きていたのか?死期を誤るとは思えんかったが、どういうことだ?目に映るものも、俺がいた場所とは異なるようだし、何より体の感覚が違う。心なしか手足は短いし、起き上がろうにも体に力がはいらない。まさか、転生というものなのか?
半年の月日が流れた
俺はどうやら本当に転生してしまったようだ。であれば、前世で叶わなかった大魔術の成功を今世で叶えてみるのもいいな。そう決意した俺はまず現代の魔術がどれほど発展したか調べてみることにした。
調べる方法は容易い。魔術的要素を探れば魔術がどこに使われているかわかるため、あとはそれを観察していれば魔術の水準がどれほどかある程度わかるのだ。詳細なものは分からないが、魔術に用いられている魔力の運用効率などを見れば発展の度合いもわかるだろう。
俺は己の体内の魔力を意識下におく。魔力神経と呼ばれるものは誰もが持っているもので、その魔力神経を活性化させ魔力を操作することで魔術を扱えるようになる。どうやらこの体は魔力神経が少ないようだな。まぁ、魔術を扱うにはそれほど不便はないが。次に、周りに漂う魔力の把握をする。あたりに魔力は潤沢に存在した。ただ、気になることとして、魔術が使われた痕跡が見当たらないのだ。たまたまこの部屋に魔術を使うものがないだけなのかもしれないが、前世では生活において魔術を用いるのが当たり前であり、どれほど発展したのか期待していただけに拍子抜けした感は否めない。さらに魔術的要素を探ろうにも、この体では慣れていないためか反応がいまいちつかめない。そんなことをしていると、一人の女性が部屋に入ってきた。
「あら、アルマが起きてるわ。まだミルクの時間には早いのだけれど、オムツのかえでもないし、起きていて泣いてないのはどうしてかしらね?まぁいいわ!せっかく起きてるならママの相手をしてちょうだい!」
抱き上げられた俺は、女性を観察する。どうやら俺の母親らしい。その女性は表情は明るいが疲れが見え、やつれてこそいないが食事を満足にとれていないのか少し細すぎる気がする。そして、驚愕な事実を話していた。
どうやら生後すぐに魔術鑑定を行った結果、俺は魔力を扱うための魔力神経が少ないため、魔術師にはなれそうにないと言っていた。そのため適正魔術がどの属性がもわからいとのことで、魔道具を用いて補助することもできないようだ。俺の家は代々魔術師としての家系であるため、魔力神経が少なく、魔術を使えないというのは周囲の魔術師の家から欠陥品として見られるため、俺は病弱設定となり家から出ることはない生活を送ることになるらしい。あと、気になることといえば、魔術という部分を魔法と呼んでいたことだろうか、おそらく聞き間違いだろう。
前世で俺は大賢者と呼ばれたことがある。その所以として4大属性すべてに適正を持つことからついた呼び名だ。魔力神経こそ前世より少ないが魔術を行使できないほどではない。そして、俺自身を調べた結果、前世と同様に4大属性に適正があることもわかっている。
これはどういうことだろうか。そして母は魔術的要素をもつ装飾をいくつかしていたが、半分ほどは不活性魔力がこもっており、魔術の発動ができないものを身に着けていた。この時代はどんな発展をとげたのだろうか?俺は興味を抱いたが、いかんせんこの体では満足に調べ物ができないため、成長を待ちながら月日がたつのを待った。
3年たちわかったことは、どうやらこの時代は魔術が衰退していたということだ。そして、魔術は魔法と呼ばれており、魔術に関する知識はほぼ失われてしまっていた。かつて誰もが扱えるように魔術を考案し、魔力の少ないものでも扱えていたほどの時代は廃れ、今では王族や貴族、一部の家系が魔法を扱えるものとして権力を持ち、その魔法を扱うためには魔力の素養と高価な魔法具(前世では魔術の行使を補助するもの)を必要とするということだった。
俺は人知れず決心した。
この世界を再び魔術で埋め尽くす!誰もが魔術を扱える時代をもう一度、そのために俺は転生したのだと。