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神殺しの解放者《リベレイター》  作者: 炎の人
一章・叛逆の物語《プレリュード》
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素材部屋解放に向けて

 一階層へと足を踏み入れた俺はいざ行こうとした所で桜に呼び止められることになった。


「ちょっと待って桐生」

「どうしたんだ? もしかして矢がありませんとか言わないよな?」

「それは大丈夫だけど、今日は二階層まで行きたいと思ってね」


 桜はふふんとない胸を逸らしてふんぞり返る。小さくて可愛い桜がやってもあまり意味がない気がしたが無粋な真似はしたくなかったのでそのまま無視して話を進めることにする。


「それは賛成だけど、何かあるのか?」

「うん。二階層に入ったら素材部屋と温泉が解放されるようになってるの。素材部屋が無いと矢を作るのに時間が掛かっちゃうから解放したいんだよね」

「素材部屋ってまた直球な名前だな。またアーティファクトの類か?」

「そうそう。魔石を使ったら素材が生成できるんだよ。矢を作るには便利なんだよねこれがまた」


 素材部屋には他にも金属や薬草なども生成できるらしく、魔石の質次第で品質も上げれるらしい。それを使用して大量に矢の素材を作り、錬金術で一気に作るのが魔力の節約になるとかで早めに解放したいと言う。

 どちらにせよ二階層へは今日向かうつもりであったし、桜がしばらくは主力であるので矢を切らされるのは困る。一石二鳥とはこのことだ。攻略を進めるためにも今日は一気に一階層を踏破して行きたい。


「分かった。じゃあ少し急いでみるか?」

「うん。行こう桐生」

「了解。兵装解放アーマメント・リベレイト!」


 俺はその場で固有スキルを呼び覚ます。目の前の空間に穴が開き、異空間と接続される。その中に手を突っ込み、新たな武器を手に取ると俺はそれを一気に引っ張り出した。

 異空間から出てきたのは漆黒の剣だった。漆黒の剣の中央には白いラインが通っており、とても綺麗も美しく見える。試しに魔力を流して見ると漆黒の剣が純白の剣に代わり、代わりに中央に黒いラインが入った。どうやら機能が変わるようにできているようで効果が変わったのが頭の中で伝わってきた。

 それを両手で一振りしてから俺は右手で持つとじっくりと眺めた。


「綺麗……」

「俺の魂でできてるから当たりだろ」

「冗談はやめてよね。絶対真っ黒だよ。桐生の魂なんて」

「じゃあ黒い桐生はか弱い桜ちゃんに意地悪しちゃおうかな」


 そう言って桜の耳に息を吹きかける。するとずずっと竦み上がった桜はすぐに俺をぱんと叩いて押し退けると自分の体を抱き寄せて涙目になった。好きな子を虐めたくなる心理が何となく分かった気がした。


「ねぇ桐生ってドSだったの?」

「いや、だってなぁ。桜の反応が一々可愛いから悪いんだぞ?」

「私が悪いみたいに言うのはなし。もう一緒に攻略してあげないよ? それでもいいの?」

「悪かったよ。もうしないから」

「約束だからね!」


 ぷんすか怒る桜に頷いた俺はやれやれと肩を竦めた。少しばかり感情の制御を失敗したせいでこんな行動に出てしまったのだがやはり固有スキルは伊達ではないということなのだろう。抗うだけでもかなりの精神力を消耗している。固有スキルを持っているからといって安心できるほど楽観的ではいられない。心なしか昨日よりも異性魅了の威力というか効果が増している気がするのだ。油断すれば飲み込まれてしまいそうになる。

 早めにどうにか解決する手だてを考えないと桜に迷惑が掛かる可能性も出てくる。いや、既に迷惑を掛けてしまっている。いざとなれば俺が死ねばいいだけなのでしばらくはどうにかできないか模索してみることにしたい。死ねるかどうかは別にしても桜に迷惑を掛けてまで一緒にいる理由はない。その時は離れて暮らすことになるだろう。問題は離れただけで解決するかどうかだな。

 そんな新たな問題を抱えながらも俺は先へ進むしかない。ゴブリンくらいなら余裕で倒せるようなステータスにはなったのでサクサクと進めて行こうと思う。

 真っ直ぐ歩いているとゴブリンがポップするのが見えた。毎度不思議に思っていたがどういった理屈で魔物達は現れるのだろうか。そのメカニズムさえ分かれば出現させなくすることもできるかもしれない。できないからこの塔が建てられたという可能性もあるので期待はしない方がよさそうだ。

 そんな風に思いながら剣を握り直した。


「あ、出てきた。じゃあやってみる?」

「ああ」


 桜の言葉に一歩前に出て、下段に構える。ゴブリンはこちらを捕捉すると棍棒を振り上げながら威嚇を始めた。

 俺の持つ新たな兵装は聖夜の魔剣ナイト・オブ・ホーリーというのが正式な名称だ。いかにも中二病っぽい名前なのがネックだが叫ばなくてもいい点だけは感謝している。アニメやラノベの場合、大抵武器の名前を叫んで技を使うので恥ずかしいったらない。

 それはともかく、これの特徴は剣身の色が変わることにある。ただ変わるだけならいくらでもありそうだがこの魔剣は二つの効果にそれぞれ変わるのだ。だが、今回はその効果のお披露目をする事はなさそうである。

 ゴブリンがギィと声を上げてこちらに走り出そうとするのと同時にステップを踏む。かなり上がったステータスを使って一瞬でゴブリンの前まで一歩で踏み込むと剣を逆袈裟に放つ。ゴブリンは反応して棍棒を盾にするも構うことなく、そのまま棍棒ごとゴブリンを斬り伏せた。ずぶりという確かな手応えと共にゴブリンから血飛沫が舞う。確かな感覚と共にゴブリンが魔石へと変わるのを確認すると緊張を解いた俺は息を吐いて後ろを向いた。それを見届けていた桜から拍手が飛ぶ。


「お見事。桐生って武道か何かやってたの?」

「ないな。喧嘩はしてたけどな」


 一方的にやられる、な。そんなことを言い掛けて慌てて口を噤む。今は言わなくても言葉だ。あまり思い出したことでもないことでもある。というか、ほとんどその記憶もない。幸い気付かれた様子は無いのでそのまま話を続ける。


「それだけ動けるなら才能があるのかな? 戦士のクラス取ったら化けそうだよね」

「それならセカンドクラスは戦士を取った方がいいか?」

「ダメだよ。そんなに簡単に決めちゃ。セカンドクラスからは色々と自分に適性のあるクラスが選べるようになるんだから見てから決めた方がいいんだよ?」

「なら、当分先の話か」


 これもセカンドクラスの事まで考えられるくらいには強くなった証だろう。まだまだ強くなっていつか地上へと出る。目標として届かない訳ではない事が分かり、つい笑みを浮かべてしまう。


「急に笑ってどうしたの?」

「いや、強くなれるんだなと思ってな。さぁ次に行こう。桜の実力を見たいからな」

「驚いて尻餅つかないでよね。私は結構すごいんだから」

「そこまで驚くほど強いのか?」

「さぁて、ね。見てからのお楽しみだよ」


 無邪気に笑う桜に釣られて俺も笑う。これから危険な場所へと行くような雰囲気でないのは確かだ。だが、これくらい気楽の方が何かやるにしても緊張しなくていい。美しい桜を見て俺はやる気をだし、モチベーションを上げる。男とは本当に現金なものだなと我ながら思った。

 そうして俺達の一階層の本格的な攻略が始まった。



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