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神殺しの解放者《リベレイター》  作者: 炎の人
二章・解放の旋律《リベレイト・メロディー》
25/27

ステータス魔法

 宴が終わりを告げ、これからのことに備えて動き始めたエルフ族をよそに俺達は赤竜の死体のある場所へと向かっていた。

 というのも、竜の死体というのは総じて宝の山なのだと主張する桜の言に従い、こうして死体を手中に納める為だ。

 桜とエルフィを連れて歩く俺は痛む頭を抑えながらの歩行だ。酔いが弱いから不思議に思っていたが二日酔いに思いっきり出るタイプだったとは思わなかったのだ。慣れないことはするものではないという証なのかもしれない。


「あ~頭痛い」

「考えなしにお酒なんか飲むからだよ」

「ふふ、桐生さんでも失敗する事なんてあるんですね」

「そりゃあな。あ~頭痛い。桜、抱っこしてくれ」

「嫌ですぅ。何でも言うこと聞くと思ったら大間違いなんだから」


 ツンとそっぽ向く桜に振られた俺はエルフィに視線を向けるが微笑ましそうに笑うだけで何もしてもらえなかった。こういう時に限って俺は甘えさせてもらえないのだ。逆になれば過保護なほどに手厚くもてなすというのに酷い話だ。

 仕方なく自分で歩くことにした俺は赤竜の死体のある場所までのろりのろりと歩くしか無かったのであった。

 それも程なく終わりが来たようで、森林を抜けて世界樹の近くまで来た俺達は赤竜の死体を発見する。赤く大きなその巨体を横たえる様は生きているのではと錯覚させる程の存在感を発している。死してなおこれなのだから生きているときはさぞ凄かったのかと言われればそうでもなかったと言える。俺がそれなりに強い故にそう感じないだけであるかもしれない。

 その体のほとんどを喪失してしまっているが桜を見てみると何も言わないので半ば予想はしていたのだろう。驚いた様子はない。


「下半身しか残ってないけどいいのか?」

「仕方ないよ。桐生が派手にやるのは予想してた事だしね。胸から下だけ残ってるだけましだよ。鱗と爪が取れたらいい方かなと思ってたし、この調子なら血も取れるかもね」

「鱗や爪は分かるけど、血は何に使うんだ?」

「精製してエリクサーの材料だね。アイテムボックスに一つだけ残ってるんだけど、欠損すら直してくれるから作っておきたいんだ」

「なるほどね。桜、じゃあ回収よろしく」

「はいはい。すぐに終わるけどね」


 赤竜に手を触れた桜の目の前で死体は消え去る。アイテムボックスは非常に便利だから助かる。俺もいずれは欲しいスキルの候補に入れている。これで回収は終了だ。桜がこちらへと帰ってくる。


「それなりに容量くうんだよね。結構持っていかれちゃったよ」

「そうなのか。まだ空きはあるのか? 米も持って行きたいんだけどな」

「大丈夫、大丈夫。まだまだ行けるよ。私の魔力量の半分も使ってないし」

「そっか。エルフィは何かあるか? 世界樹なんて来ることはあんまりないんだろ?」

「私は世界樹の葉を取って行きたいと思っていたのですがいいですか? ポーションの材料になりますから」

「そうなんだ。エルフィールちゃんってポーション作れるの?」

「いえ、残念ながら。外に持って行けば売れるかもしれませんし」

「ああ、それじゃあ桜に渡せばいいだろ。桜なら作れるし、売るのはやめといた方がいいな。世界樹の葉が出回ったらここも危ないだろうし」

「うん、そうだね。それに世界樹の葉があったら質の高いエリクサーも作れるからね」

「終盤まで取っとく派だったなぁ俺。それで結局使わないんだよな」


 あれは本当になんだろうと思わずにはいられないアイテムだ。せめてどこかの店で買えたなら遠慮なく使うのだがそれもないし、作ろうとしても材料がもの凄いとかそう言うパターンが多いアイテムだから扱いに困る。今は現実世界なのであったら遠慮なく使うけれども、できれば使う状況になりたくないものである。回復魔法や治療魔法の類も失伝しているそうなのでポーションの扱いには注意して行きたいところだ。


「じゃあ取ってきますから待っててくださいね」

「ああ、待ってるよ」


 エルフィはそう言って世界樹の元へと向かっていった。二人きりになった俺は桜を後ろから抱きしめるようにして座る。こうしていると落ち着くのだ。軽く頭を撫でてやると嬉しそうな雰囲気を醸し出す。本当に可愛い奴だ。


「ねぇそう言えばいつの間に愛称で呼ぶ仲になったのかな?」

「昨日だよ。まぁあれだな。成り行きだ」

「へぇ。まぁいいけど。ちゃんと責任取らないと駄目だよ?」

「分かってるよ。けじめは付ける。俺もどうなるか分からないけどな」

「分かってると思うけど、私はずっと側にいるからね?」

「ああ、分かってるよ。だからこそ、こうしていられるんだ。勝手に居なくなったら困る」


 ぎゅっと抱きしめて桜を近くに感じる。塔にいた時はそれ程までに恋しいと思うことはなかった。けれど、今はとても桜無しでは生きていけそうにない。そんな気までするのだから桜に依存しているのかもしれない。

 自分でも相当な寂しがり屋だと思っている。しかし、それも仕方のないことだとも思う。腕の中にある温もりは小さくて、優しくて、暖かい。そんな触れれば忘れられない温もりに触れてしまったのだから。

 エルフィが帰ってくるまで俺はじっとその小さな温もりを感じるために抱きしめているのであった。


 エルフィが帰ってくる頃にはすっかりと太陽が登っており、昼頃になっていた。桜を抱えて寝転がっていた俺はそのままの状態でエルフィを迎えた。


「おう、お帰りエルフィ」

「ただいまです。結構な量が取れましたよ」

「そんなに取って大丈夫なのか?」


 エルフィの手には山ほど積まれた世界樹の葉があった。紅葉のような形をしたそれは瑞々しい緑色をしており、どこか生き生きしているように見える。魔力も込められているようで世界樹はいわゆる霊樹とかそう言った類のまさに生ける大樹なのだろう。他の木が死んでいるという訳ではないが世界樹は特別なのかもしれない。

 そんな世界樹の葉を大量に取っては世界樹にも悪影響はあるのではないか?

 そんな俺の疑問は詮無いことであるとエルフィによって知ることになった。


「ああ、それは大丈夫ですよ。世界樹はこの大陸のどこかにある神贄の塔と同じ役割をしているそうで魔素を吸収して大きくなっているんです。ですから、これくらいであれば問題はないんです」

「直ぐに生えてくるという訳か」

「そういう訳ではないですけど、生きる分には大丈夫と言うことですね。よければ桜さんのアイテムボックスに入れてもらえると助かるのですが」

「いいよ。後は魔力結晶と翡翠の粉だけだね」

「翡翠の粉、ですか。天使の涙ではないんですね」

「それでも作れるけど、翡翠の粉の方が手に入れやすいんだよ。翡翠鉱石はジャーダタートルから取れるからね」


 推測するに前者は文字通り、魔力の結晶であり、後者は魔物から取れるものであるようだ。錬金術師アルケミストのメインクラスを持っているだけあって桜は知識が豊富だ。その昔、まだ封印される前は研究でもしていたのかもしれない。その時の話を聞くことは無いだろうが役に立つなら有り難いというものだ。

 エルフィが持ってきた世界樹の葉をアイテムボックスへとしまうと桜は俺から離れて立ち上がった。それに合わせて俺も立ち上がる。ふと、何やら気配を感じたので桜を見てみると魔力の流れを感じる。それは心臓から流れて脳内に至り、目に作用しているようであった。


「桜、今何したんだ?」

「今のはステータスを見てたんだけど、何かあったの?」

「魔力の流れが見えたんだよ」

「んー私はそんな事はできないんだけど。私のステータスを見る力はホムンクルス自体が持つ力だからね。もしかしたら桐生にも元々そういう力が備わってたか、あるいは才能があったんだろうね」

「ふーん。まぁ今ので何となくステータスを見る方法が分かったかも」

「できるの?」

「やってみる」


 心臓から脳へと至り目に魔力が流れた。この結果から何らかの情報体が心臓にあり、脳で見やすいように処理して目で表示しているというのが正しそうだ。

 ホムンクルスがどんな素材で出来上がっているのかは分からないがほとんど人と同じ要素でできているとすると俺の心臓にも何らかの情報体があるのかもしれない。

 この情報体を魂と仮定すると魂から自身の情報を読み取って脳で処理して人が見える形にし、目に情報を送ることで可視化していると思われる。

 俺自身の情報を見るためには魂から情報を汲み出さないといけない訳だ。それを魔力を操って行うのが桜のステータスを見る力だろう。魔力制御はそれなりにできる、というか人並み以上にできる。魔力による身体強化や視力の強化、聴覚の強化なども成功しているのでできるはずだ。

 心臓に意識を伸ばしてそこにあるはずの物を感じる。しばらくすると何らかの塊のような物を見つけた。それに魔力を操って触れ、それらしいものを引っ張り出す。感覚なので正しいかどうかはやってみないと分からない。それから、それを脳内へと送り、魔力によって高速処理をしてから目に送り可視化してみる。すると、俺のステータスが浮かび上がった。


名前:秋花桐生

メインクラス:解放者リベレイター

レベル:536


生命力:268,000/268,000

魔力量:537,000/537,000

筋力:16,110

耐久力:16,110

器用:16,110

素早さ:16,110

魔力制御:26,850


 固有スキル

兵装解放アーマメント・リベレイト

 消費魔力量1000

 魔力を使い、自身が所持する兵装を解放して使うことができるようになる。兵装を使う際に掛かる様々なコストは魔力を消費する事で賄われる。レベルの上昇によって兵装が解放される。

 解放兵装一覧

 魔鋼拳銃ジャッジメント 消費魔力量5

 聖夜の魔剣ナイト・オブ・ホーリー 消費魔力量0

 月光の聖服コート・オブ・ルナ 消費魔力量0


仮初めの器トランシエント・キャパシティ

 消費魔力量0 1,074,000/1,074,000

 MPが最大時にのみ効果が発動する。最大魔力量の二倍の魔力をため込むことができ、自身の使いたい時に使うことが可能。貯まり方は自然回復量に比例する。


 スキル

限界の解放(リミット・リベレイト)

 消費魔力量500

 自身に掛かるリミッターを解放し、ステータスを二倍にする。なお、重ね掛けはできない。


異常からの解放アブノーマル・リベレイト

 消費魔力量1000

 自身に掛かるあらゆる状態異常を取り除くことができる。なお、即死は常に無効化される。


湧命の解放制約ライフ・オブ・コンスト・リベレイション

 消費魔力量2000

 自らスキルをどれか一つの使えなくなる制約を付けることによって生命力の自然回復量のリミッターを解放し、常時回復量を増加させる。


運命の解放者ディステニー・リベレイター

 消費魔力量5000

 魔力を全て消費し、自らが負う運命を破却し、無かったことにする。このスキルを使うと固有スキルかスキルが一つ使えなくなる。使えなくなるスキルは選ぶことが可能。


限界突破リミット・ブレイク

 消費魔力量0

 このスキルを所持しているとレベルの上限がなくなり、ステータスの上限も解放される。


「お、成功した」

「本当? それじゃあ確かに見るだけならできそうだけど、クラスチェンジはできる?」

「無理だな。何か他にも必要なものがいるんだろうな。あの水晶には何か使ってたのか?」

「うーん。ちょっと覚えてないかも。体から魂が抜けた時に記憶もほんの少しだけど、抜けちゃってるからね」

「あーそうなのか。まぁ別に今すぐクラスチェンジできなくても問題はないから大丈夫だろ」

「そうだね。まぁそのうち方法は見つけたいよ」

「何だかよく分かりませんがお二人は凄いのですね。私にもできるでしょうか?」

「あー多分それは無理だな。零から魂の感知は難しいと思うぞ。俺と桜の場合は一度魂だけの存在になってるからこそ、簡単にいったわけだからな」

「なるほど。それは残念です」


 エルフィは肩を下げて落ち込んだ。別に同じ事ができないからといって仲間外れになるわけではないのだがエルフィにとってはそう感じないのだろう。

 俺としてはエルフィにしかできないことを期待しているのだがそこの所はちゃんと言葉にしておいた方がいいのかもしれない。そう思って俺はエルフィに言った。


「エルフィ、俺はお前さんにしかできないことで期待してるからそう落ち込むなよ」

「そうそう。元々そのつもりでエルフィールちゃんを仲間に加えようって話だったからね」

「そう、ですか。そうですよね。私、頑張りますね」

「おう。頑張ってくれ」


 エルフィはガッツポーズを取って気合いを入れる。その様が面白くて俺と桜は笑みを浮かべるのであった。


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