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神殺しの解放者《リベレイター》  作者: 炎の人
二章・解放の旋律《リベレイト・メロディー》
24/27

祝いの宴

 エルフ族による宴は料理の出来上がりと共に始まった。俺は今、エルフ達に祝われながら杯を手にとって酒を注がれていた。


「おう、兄ちゃん。ありがとう。おかげで俺達は救われたぜ」

「そうよ。私達じゃきっとこのままずるずるいってたもの」

「違いねぇ。エルフは軟弱者が多いからな」

「そりゃあ違いねぇがその代表はお前だろ?」

「いやいや、お前だって」

「こら、祝いの席だよ。喧嘩するなら今度にしな」

「「へーい」」


 エルフ達は酒を片手に料理を食べていく。その食べっぷりは凄いものがある。俺は酒を飲んだからか少しだけ酔いが回ってきたのでその席を少しだけ外れる。

 酒に溺れて既に寝ている者や料理を片っ端から食べてはおかわりをしている者、果てには料理を作った女性を口説いている者までいた。あまりのお気楽さに呆れ果てるもこれも俺が赤竜から解放した結果だと思えば竜を屠った甲斐があったというものだ。


(解放者とは言い得て妙なクラスだよな)


 そんな事を思いつつもエルフ達の楽しげな雰囲気に当てられて俺は笑みを浮かべる。これが見たかったのだ。辛気臭いより笑っている方が楽しく感じるものだ。どんな人、種族であれ、笑っている方が気持ちがいいのだからそうするべきだ。

 そう思って俺は手に持った杯を傾けた。そんな所へ桜とエルフィがやってきた。メイド服姿の桜と巫女装束姿のエルフィという異色の服装に俺はこの場にいる違和感を覚えながらも本人に似合っているのを感じておかしく思った。この二人はそれが似合うのだから面白い。特に桜は何を来ても似合いそうだから機会があれば色んな服を着せ替えさせてはやりたいところだ。


「桐生さん、楽しんでますか?」

「おう。これだけ騒いでいれば、楽しくなるってもんだ」


 俺がそう答えるのにエルフィも笑みを浮かべて隣に座る。桜が俺が持つ杯を見て訪ねる。


「桐生、酒飲んでいるの?」

「ああ、どうやら俺はほんの少ししか酔わないタイプみたいでな。心配するな」

「桐生が言うならそうするけど、あんまり飲んじゃ駄目だよ?」

「へいへい。そうだ、エルフィは酒は飲まないのか?」

「私も酒は飲みませんよ。基本的には飲まないようにしているんですよ。酔った勢いで間違いが起こっては事ですから。私はこれでも一応巫女ですからね」


 そう言われれば確かにと思わされる。巫女が処女である必要があるというのはその方が神性が保たれるからだろう。日本ではともかく、ここは異世界だ。神性が保たれる事は意外と大事なのかもしれない。

 そんな事情もあり、酒は飲まないエルフィをよそに俺は杯を傾ける。エールというのは苦味があるが中々にうまい。酒を飲む機会は日本では無かったがこの世界では存分に飲もうと思う。もう少しすっきりした喉越しが欲しいとは思うがここは技術大国日本ではないので我慢するしかない。


「それにしても桐生、よく倒せたね。倒せるかどうか分からないって言ってたのに」

「そうなんですか? 割と何でもないように倒していたように見えましたけど」

「まぁ実際その通りだぞ。あれなら桜なら一発じゃないか? 神の使徒も射貫いていたし、あれより赤竜は弱いからな」

「へぇ、あれ神の使徒なんて言う奴だったんだ」

「情報搾り取ったから後で桜にも話してやるよ。まぁ情報は何も出てこなかったけどな。今は宴の席だしな」

「そうだね」

「あ、お父様」


 エルフィがそう言った先にはラハールドの姿があった。


「桐生殿、楽しんでいますかな?」

「ああ、おかげさまでな。偶には派手に騒ぐのも面白いもんだな」

「それは良かった。エルフ族の歴史でもこれだけ騒いだ宴はそう多くないですからな」

「そうかい。それなら余計に楽しまないとな」


 エルフ族が真の意味で解放された今、大いに楽しみ、大いに喜ぶべきだ。そしてこれから先の事を考えて行動してほしい。俺ができるのはあくまで手助けにすぎない。その先まで面倒を見てやるほどお人好しではない。その場限りの契約であるからこそ、良い出会いとなることもあるのだ。契約をしてくれるならその限りではないがエルフ達が払える対価はもうここにはない。つまりはお別れだ。

 ラハールドはそうですかと答えて真剣な顔をして俺に訪ねてきた。


「それでですな、桐生殿。この度の報酬の件でお話が」

「ああ、その話か」

「はい。ご存知の通り、エルフ族は外界から閉ざされていて何もありません。ですから、渡せるものがないのです」

「それなら問題はない。ラハールド、俺はエルフィをこの旅に連れて行こうと思ってる。いや、違うなエルフィをもらおうと思ってる」

「それは……エルフィールを嫁に、ということですかな?」

「それは違う。いずれはそうなるかもしれない可能性はあるが今回のは生殺与奪の権利と言い換えてもいい」

「そう、ですか。命から何までエルフィール自身を、ということですな」

「そう言うことだ。エルフィの持つ力は俺達の力になるはずだ。その力をもらい受ける」


 ラハールドの反応を伺うのは少しだけ怖かったりする。普通、娘の命をもらうなんて言われて冷静でいられる人などいない。俺はそれを突きつけているのだ。我ながら酷い奴だとは思うがこれが俺のやり方だ。

 そう生きると決めてしまった以上は変える気はない。きっちりと報酬はもらい受ける。今回はそれだけの価値をエルフィに見出したからこそ、こうして報酬に提示したのだ。

 この件についてラハールドの承諾はいらない。俺とエルフィの間で契約を交わしたからだ。それでもなお、ラハールドに言ったのは義理を果たすため、だろうか。家族と離れるというのは割とキツいものがあると勝手に思ったからだ。


「なるほど。確かに高い値段が尽きましたな」

「お父様、この話はもう既に決着が付いているんです。私がいいと言ったんですから」

「エルフィール。それは、この里を出るということか?」

「はい。桐生さんに着いて行こうと思っています」

「そうか。お前が決めたのか。思えば、妻もまた外に出たいと行っていたのを覚えている。私の我が儘で外に出ることはついぞ、無かったが。……そうか。お前が決めたのならそうするといい」

「お父様……ありがとうございます」


 エルフィが頭を下げるのを見て俺は満足げに頷いた。そんな俺を呆れた顔をしながら見ていた桜はラハールドに言った。


「ラハールドさん、桐生はこんなですから私がちゃんと面倒を見ますよ。こんなダメダメ人間の側にいたらエルフィールちゃんが可哀想ですから」

「はっは、それは有り難いですな。宜しくお願いしてもよろしいですかな」

「もちろんです。任せてください!」

「これじゃあ俺の立場がないじゃないか。なぁエルフィ」

「そうかもしれませんね。ダメダメ人間の桐生さん?」

「ここに味方が言えねぇのか。肩が狭い生活になりそうだ」


 俺の冗談めかした言葉を言ってわざとらしく肩を竦めると三人は声を上げて笑う。

 そこからは適当に食べては、飲んでを繰り返し、そうして過ごした。赤竜の討伐をどのようにしたのか適当に脚色して話したり、俺がエルフィを愛称で呼んでる件について追求されたり、それはもう楽しい一時であった。


 そうして、宴は終わりを告げ、皆が皆、その場で寝転がり眠りについた頃、俺は桜とエルフィを伴って精霊の泉へとやってきていた。静かな場所で酔いを醒ましたいと思ったからだ。

 二人は何を言うでなしに俺に着いてきている。こうやって側に居てくれるだけで俺はとても暖かい気持ちになれる。その事が嬉しくて笑みを浮かべていた。それに気付いた桜が俺の手を取って言った。


「何だか嬉しそうだね、桐生」

「まぁな。幸せ、というものがどういうものなのか分かったからな」

「それはまた哲学的な話ですね」

「確かに。桐生が話せるような話題とは思えないかも」

「俺もそこまで馬鹿じゃねぇよ」


 そう言って俺は座り込む。ほんの少しひんやりとする地面に座ると二人も揃って隣に座ってくれる。俺はそんな二人を二つしかない腕を使って抱き寄せた。


「両手に花で満足? 桐生」

「そうかもしれん。正直、このままここで暮らしたいとも思ったな」

「でも、先に行くんでしょ?」

「もちろんだ。神なんて詰まらんもんに支配される世界なんてごめんだ。好き勝手に争って育ってくれる方が予測が付かなくて楽しいだろ?」


 それが元々あるべき世界なのだ。今の世界は神により管理された世界だ。人の意志で発展は望めず、神の許可が一々必要な世界に発展の余地などない。例え、それが危険物であったとしても発展は発展なのだ。それを神の意志一つで決めるなど傲慢だ。俺はその体制をぶっ壊す為にスケールの神殺しの計画に乗った。曖昧で不透明で道筋すら見えない大博打にそれだけの価値があると神のいない世界から来た俺がそう思ったからだ。

 あるいはそれは俺がこの世界の者ではないからこそ考え付いた傲慢な考えなのかもしれない。だが、人は間違っていれば正すことができる生き物だ。俺が間違っていたなら他の奴が正してくれるはずだ。他力本願のように思えるかもしれないがそれが人の世が廻る秘訣だと俺は思っているので問題はないはずだ。


「エルフィ」

「はい」

「神殺しは中々大変な道のりだ。そのためにエルフィにはこれから戦ってもらう必要があるわけだ。覚悟はできているな」

「もちろんです。桐生さんに着いて行くと決めてから覚悟は決めています」


 エルフィの覚悟も本物だ。これからは鍛えて戦力になるようにしていきたいと思っている。

 俺と桜、そしてエルフィ。これが神殺しの中核となるメンバーになるだろう。俺はそう予想している。数はいらない。少数精鋭で神殺しは成る。極端に言えば俺だけでも可能だ。だが、それをしないのは人の可能性を取り入れたいからだ。力を合わせた先にある結果をこそ、人がこの世界で神がいなくとも生きていける証明としたい。そんな風に思ったからだ。


「それにしても桐生」

「どうかしたか?」

「やっぱり何でもないよ。ね、エルフィールちゃん」

「はい、桜さん」

「なんだなんだ? 二人して」

「内緒だよ。女の子の秘密」

「秘密です」


 そう言って笑う二人に俺は疑問符を浮かべつつも釣られるように笑った。この二人の笑顔を守るためにも俺は戦わなければならないのだろう。もはや、戦いの狼煙はあげられた。神と戦いになる日もそう遠くはないはずだ。その時に後悔しない為にも俺は今以上に強くならなければならない。

 二つの体温を感じながら俺に肩を寄せながら話す二人を見てこんな幸せな日々を続けたいなと思うのであった。



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