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神殺しの解放者《リベレイター》  作者: 炎の人
一章・叛逆の物語《プレリュード》
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管理者との邂逅

「待っていたよ。特異点イレギュラー。女を貪り喰らう夢は楽しかったかい?」


 その影との邂逅はそんな言葉から始まった。黒い影は徐々に姿を変え、壮年の男になった。白い長ズボンに白いコートを来たその男は場にそぐわない程身綺麗な服装をしていた。そして服装に似合わず、コロシアムに似合った黒くて大きな鎌を手に持って嗤っているのが見えた。


「お前は……何言って……っ!?」


 俺はそこまで言われて頭痛を起こし、膝を付いてしまう。頭が割れるような痛みはやがて強さを増していく。そしてその度に徐々に自分の記憶が改竄されたものであることを理解した。あまりに自然すぎて偽の記憶が本物の記憶にすり替わっていたのだ。俺はマリアと性行為はしていないし、欲情もしていない。ただキスをしただけだ。それも一方的な物でマリアが涙を流しながらお願いしてきたものだ。その後直ぐにマリアは交通事故で亡くなっている。

 明らかな記憶の改竄に思い至った俺は不快感を露わにした。


「改竄したのか。俺の記憶を!」

「そうだよ。その方が面白そうだったから。君達が生み出した新たな人格を乗っ取ってまで僕は君を殺しに来たんだ。秋花桐生。君がいるだけでこの塔の守護が揺らいでしまうんだ。死んでくれないか」

「塔が揺らぐ、だと。意味が分からない」

「この塔ができてもう千年近くになるのかな? そろそろ耐久限界がきてたんだ。それでもまだ二百年くらいは持つはずだったんだけど、何故か君が塔に登れば登る程にこの塔の寿命が減っていくんだ。たったの一階層をクリアしただけで二十年も縮んだんだと感じた時は冷や汗ものだったよ」

「それはまたご愁傷様。ついでにくたばってくれてもいいんだぜ?」


 塔の寿命などと言われても俺には知ったことではない。例え、魔物を全世界に散らばらせ無いための道具であったとしてもそんなものは関係ないのだ。地上にいる人間共は傲慢すぎる。一度その罪を自らの愚かさで贖うべきだ。俺は俺の自由のために塔を攻略しているというのに目の前の奴もまた傲慢に過ぎる。

 俺の言葉に嘲笑を返した壮年の男は鎌の柄を撫でながら言う。


「僕は誰かに殺されない限り、死なないのさ。僕達は毎度生まれ直す。新たな人格を伴ってね。そうそう、君があのホムンクルスを助けた事も計画外なんだ。まだ新しい塔は建ってないんだからその前にこの塔を壊されたら困るんだよね」

「何故塔を作るんだよ。世界に魔物が散らばるとそんなに危険なのか?」

「そりゃあね。だって、考えても見て。目の前に突如魔物が現れたらびっくりするだろう? そんな無秩序に現れる魔物の存在を許さない為にこの塔は存在する。魔素を集め、魔法陣で管理し魔物の発生を局地的、つまりは塔内のみに発生させる装置。それがこの神贄の塔だよ」


 愉快そうに笑い、くるりと鎌を回転させて俺を見る。どこまでも小馬鹿にするその笑みがイラッとくるが今はまだ抑えておく。戦いは聞きたいことを聞いてからだ。その後でも充分に間に合う。


「じゃあ俺達は何なんだ? 定期的に召喚されるみたいだが」

「神贄の塔を運営をするための人柱さ。それ以外に深い意味はないよ。日本人が召喚される確率が高くなっているのは日本人の魂の方が拾いやすいからだ。ちゃんと死者の魂を見繕って召喚してあるから心配しないでいいよ。僕だって鬼畜じゃない。それにこの塔はプロトタイプだ。もうじき新しいタイプができあがる。今度のは誰もが入ることができ、そして誰も入らなければ魔物が溢れ出す素敵仕様になっているよ。もうそろそろ地上の民も強くなるべきだからね」

「ダンジョン型って訳か。俺達は文字通り生け贄な訳だ。そもそもお前は何なんだ?」


 俺の質問に壮年の男は笑みが固まる。それはまるで怒っているようでもあったし、悲しんでいるようでもあった。鎌をくるりと回してこちらへ一歩近付いてきた壮年の男は手を広げながら声を張り上げる。


「ふふふ、ははははは! 君はもしかして神を信じている派かい?

ならそれはまやかし、幻想だ。この世界に本物の神は龍神と名乗る者しかいない。僕達は塔を建設し、魔物を封じ込めたことで神として信仰されて神に至った現人神だ。僕の他にも三人いるけど、今頃どうしてるんだろうね。ああ、きっとどこかで王様ごっこでもやってるのかな? まぁそんな事よりも君は自分の心配をした方がいいんじゃないかな?」

「何……?」

「そう、君だよ。今から僕に殺されようというのに冷静に過ぎる。だから、君は異常だ。その冷静さこそが人間から外れた存在であるのを示している。だってそうだろう? 普通の人間なら殺されると知れば真っ先に足掻こうとするはずだ。なのに、君は足掻くどころか僕にふてぶてしくも僕に質問をしてきた。理解不能だ。秩序を司る神になった僕にさえ、ね」

「おあいにく様、俺は神にさえ予測できない男だ。諦めて理解するのをやめておけ」

「ふふ、君は本当に特異点イレギュラーだ。君なら何もかもうまいこと導いてくれそうだけどね。でも、それは君がここから生きて出れたらの話だ。僕は今ここで君を殺す。さっきも話したけど、君はいるだけで迷惑な存在なんだ。この塔の秩序を守るために死んでもらうよ!」


 壮年の男は構え、魔力を全身から吹き出し始めた。その圧倒的な魔力量に俺は動くことができない。津波のごとく押し寄せるその魔力が息苦しくさえある。壮年の男は嬉しそうに笑いながら、また嘲笑うかのように自身の名を告げた。


「さぁ踊ろうか桐生くん。僕の名は秩序の神スケールだ。秩序を守るために存分にこの場で血を出して息絶えてくれ!」

「ああ、くそ。いい迷惑だぜまったく。男にモテる趣味はなかったはずなんだがな」


 塔の管理者であり秩序の神であるスケールは高笑いを上げながらこちらへとゆっくりと歩き始める。隙が一切ないその歩き方に感心しつつ、冷や汗を流す。好きが見当たらないのが隙となっているのだがそれは明らかな誘いだ。恐ろしいほどの戦闘技術に戦慄する。


「やってやるぜ、クソファッキン! 兵装解放アーマメント・リベレイト!」


 俺の目の前の異空間に穴が開く。そこに両手を突っ込んで必要な物を引っ張り出す。右手には魔剣を、左手には銃だ。

 聖夜の魔剣ナイト・オブ、ホーリーと魔鋼拳銃ジャッジメントが同時に日の目を浴びるのは初めてだ。そして、両方とも使うのも初めてである。だが、使い方は知っている。固有スキルを得た時から俺の力として根付いていたのだ。分からないはずがない。


「それが君の武器かい? 君のレベルで僕が倒せるのか見物だな」

「御託はいい。さっさと始めようぜ。というか、俺の精神から出て行きやがれ、クソ野郎」


 黒い色の刀身の中心に白いラインが入った聖夜の魔剣ナイト・オブ・ホーリーと全体的に無骨な鋼色に染まっている魔鋼拳銃ジャッジメントを構えて俺は目の前の存在と対峙する。万に一つも勝ち目はないだろう。だが、それは諦める理由にはならない。何故なら、俺は桜とキスをしたいからだ。


「さぁ俺の欲望の第一犠牲者はお前だスケール。とことん味合わせてやる」


 もはや俺に怖いものはない。今ここではっきりと分かった。俺は桜のことがはっきりと好きだと言える。今の俺は魅了も掛かっていない本当の精神だからだ。だからこそ、ここで死ぬわけにはいかない。謝って、そして許して貰おう。それからどうにかしてねだってみよう。少しくらいなら桜も許してくれるはずだ。こんなくだらない固有スキルの効果など跳ね返してしまえ。それだけが唯一生き残る方法なのだから。


「行くぜ、スケール!」

「ああ、来たまえ特異点イレギュラー。精々僕を楽しませてくれ」


 こうして俺とスケールの激闘が密かに幕を上げた。



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