第七話
《ナノハside》
私はギルベルトさんと向かい合いながら、事の始まりを思い出しました。
二人を初めて見たとき、故郷に咲く好きな花と同じ色の髪と宝石をはめ込んだような大きな翠眼に目を奪われました。
容姿はとても綺麗だと思いました。しかし、その見た目は繊細そうで、ちょっとしたことで壊れてしまいそうな印象を受けたのです。
ですから、大して闘志も湧かずに姉様とともに去ろうとしました。私は強い方には興味をそそられ、戦ってみたいと思いますが、弱い方には何も感じません。
ギルベルトさんが強くなりたいと姉様に稽古を付けて欲しいと頼まれたのを聞いて、私は胸が熱くなりました。彼女が強くなって私と手合わせをしてくれたらと思うと、堪りません。そう思い、ギルベルトさんに加勢しました。姉様は大層強いので、きっと強くなるに違いありません! ……彼女の姉様を見る目が妙に熱を帯びている気がしますが、それはひとまず置いておきます。強くなりたいというのは嘘ではないようですし。
アルベルトさんに関しては、正直理解不能です。ゴブリンと対峙していたというのに手ぶらでしたし、ギルベルトさんのように押しが強い訳でもないようでした。彼は男性らしいですが、まだ成長過程だからか中性的な雰囲気を持っています。剣も杖も持っていないので、実力を図れませんでした。
その後しばらく経ってから、本人たちの口から何を武器にしているのか耳にしたときは少なからず驚きました。アルベルトさんは魔法だけ、ギルベルトさんは剣、槍、弓だけに適正があるらしいのです。双子なだけに、二人で一人前という感じでしょうか。
ですから実力を計ろうと考えたのでしょう、姉様が手合わせするというので、今すぐ薙刀を振り回したくてうずうずしてしまいました。また姉様に呆れられましたけれど、戦いにわくわくするのは戦士の性でしょう?
私が相手をするのは、ギルベルトさんみたいです。彼女、細い腕で身の丈ほどの剣を軽々と振っています。少しは戦えるのを期待したいです。もし、期待外れならば私の手合わせは一瞬で終わってしまうことになります。そうならないように願うことしかできませんが。
ああ、血が騒ぎます! 口元が緩むのを止められません。
「さあギルベルトさん、せいぜい私を楽しませてくださいね?」
彼女は大剣を構えました。私も薙刀を構えます。
アルベルトさんと姉様の話も蹴りがついたようですので、始めさせて頂こうと思います。
視線が絡み合った一瞬後、ギルベルトさんが一気に間合いへ飛び込んできました。
ギリギリ柄で受け止めることができましたが、そのまま力押ししてきます。同じ女性だというのにどうしてこう力の差があるのでしょう!? あの細腕のどこにこんな力があるのか、不思議です。まあ、受け流しますけれど。
受け流し切り、薙ぎ払います。避けられますが、服が一部裂けているので完全に防がれた訳ではなさそうです。
受け流す、薙ぎ払う。切りつける、ばっくすてっぷ、振り下ろす。その繰り返しです。
大剣の猛攻と薙刀の嵐にお互い切り傷だらけになります。
「燃えて、きますね……!」
思ったよりも強敵です。動きは速いのに力もあるたいぷです。対する私は小柄な身体を活かしすぴーどで勝負しているのです。
こうなったら奥の手を出すことに決めました。このままだと、体力がなくなって無様に負けてしまいます。
「フォーコ・インドスサーレイ」
さて、ギルベルトさんはこれにどう対抗するのでしょうか?
読んで頂きありがとうございました。
ギルベルトは男です。ナノハが勘違いしてるだけです。