第二話
不定期更新です。
こんな拙い話を読んでくださった方が結構いらっしゃって嬉しいです! これからも精進していきます!!
カンカンと木剣の打ち合う音が響く。
男性と剣術の稽古をしているキースを見やり、ため息をつく。
キースの師匠である男性はこの孤児院の出身者で、平民ながら騎士になった人だ。
「どうしたの? イースくん」
俺の魔法の師匠をしてくれている女性、スィーさんが首を傾げた。
彼女もこの孤児院の出身で、フィーの年の離れた実姉でもある。
「やっぱり羨ましいな、と」
彼女の問いに答える。
キースと違い、俺には剣術の適性がなかったのだ。その他の武器の適性も皆無に近い。そのかわりなのか、魔法の適性はかなりあるらしい。
「うーん、そればかりはなんとも……」
スィーさんはフィーと似た困ったような笑みを浮かべる。
そんなことを言っても困らせるだけなのはわかっているし、ないものねだりなのもわかってる。だけど簡単に諦めきれないのも本当で。……口に出さない方が良かった、よな……。
「ですよね。でもまあ、キースに負けないように魔法頑張って強くなります」
「うむ! その意気や良しってね。でもでも、山賊くずれのならず者程度なら撃退できるくらいイースくんは強くなってるよ」
それほど実力はついてないと思うけど黙っておく。
魔法には、初級、中級、上級、超級があって、属性は火、水、風、土にその上級魔法である焔、氷、竜巻、岩。あとそれとは別に回復魔法や無属性魔法がある。他にも色んな性質の魔法があるらしいけど、今はまだ教えられていない。
今の俺が使える魔法は水魔法の中級、土魔法の初級、回復魔法の中級までだ。それも、中級魔法は一種類しか使えない。俺の使える魔法が基本の四属性のうち二つと回復魔法だったのもあって、他の魔法については教えてくれなかったのかもしれない。
「え〜、三属性持ちなんて結構少ないのに〜」
大半は二属性持ちだそうだ。
三属性持ちは結構少ないと言ってもある程度はいるだろう。
昔からスィーさんは大げさなのだ。
「"アクア・バーラ"」
俺の手の上に水の玉が出現する。
"アクア・バーラ"。
バーラは玉という意味である。魔法だが、初級の初級とも言える魔法で、攻撃威力はほとんどない。初心者がまず取り組む魔法である。
ちらりとキースの方に視線をやると、ちょうど勝敗が着いたところのようだった。
朝とは違い、後ろの高い位置で一つに結っている。服装は……変わっていない。いいのか? それで。
キースはこちらに振り向くと、大きく手を振った。そして俺に向かって爆走してきた。
そんな爆走する元気があるのか。お前剣の稽古終わったばかりだろ。
呆れながら、俺はデコピンをする要領で水の玉に向かって指を弾く。その指の先にはキースの顔。
水弾は、ばしゃりと顔に当たる。
顔から髪から水を滴らせ、間抜けな顔をしているキースに笑いがこみ上げる。
「兄さんひどいっ、稽古が終わって疲れてる弟に向かって水弾をぶつけるなんてっ」
「まったく疲れてるように見えなかったけどー。あとバーラは威力なんてない魔法だよ」
それを聞くとキースは頬をぷくっと膨らませた。
「僕は魔法なんてひとっつも使えないのにそうやってさー。そうですか、バーラは玉の魔法なんですねー、はい」
投げやりな言い方をするキース。
キースには、剣術、槍術、弓術の適性はある。剣術に関しては特に。しかし俺と対を為すかのように、魔法の適性が皆無なのだ。
「……"レクーベロ・スペンキーザ"」
これは回復魔法の一種で、疲労回復の効果がある。回復魔法は、呪の頭にレクーベロという単語が必ずつく。
他に例を挙げるとするならば、火系統はフォーコで、水系統はアクア、風系統はベンツォだし、土系統はテリーノである。
「……ありがと兄さん」
「ん」
疲れたのは本当だろうし、俺はこれくらいしかできない。
明日にはこの孤児院を出ていくのだ、キースの機嫌を損ねるのはなんか嫌だ。二人きりで行動して、身を守らなければいけないのに雰囲気が悪かったらやりにくいったらありゃしない。
「イース、キース。もう中に入ろう?」
少し離れた場所で火魔法を練習していたフィーとともに、俺たちはドアの向かって歩き出した。
読んでくださりありがとうございました。