第十五話
「えええええええええ!?」
叫んだ俺にエミリアちゃんがこてん、と首を傾げる。可愛い。
「じゃなくて!」
「……兄さん、気持ちはわかるよ。よく気絶しなかったね」
生暖かい目で見るんじゃない!! というか、分かってたのかよ!? どうしてそう落ち着いていられるの!? もうわけがわからないよ!!
「何を喚いているのです、騒々しい」
「おわぁ!? ユズリハ居たの!?」
「私と姉様は今こちらに来たのです」
ユズリハの声に飛び上がるほど驚き、いつから居たのかという問いにはナノハが曖昧な笑みを浮かべながら答えてくれた。
ユズリハとナノハの二人をエミリアちゃんはじーっと見ている。
「あらあら、私たちに何かご用ですか?」
「アルベルト、ギルベルト。この子どもはどうしたのです?」
ナノハはしゃがんでエミリアちゃんと視線を合わせて話しかける。一方、ユズリハは俺たち双子に問い詰める。
「……ココで吐きながら愚痴ってたら、急に話しかけてきた」
ギルがボソッと返事をした。噛み付いてしまったことを気にして、その前の態度に戻れていないのである。
「それで」
「エミリアちゃんっていうんだけど、その子……所謂ステータス閲覧能力があるみたいで」
「……そういうことですか」
彼女が無邪気に話す内容は、普通ならば知り得るはずのないものだ。ステータス閲覧能力というのは、見ただけでその人物の情報が分かってしまうものなのだと、カルナさんが話していたことがある。
それにしても……ぼそぼそ喋ってるけどそれでも返答を俺に譲らないあたり、なんというか、俺でも気付いてしまう。その……ユズリハへ向かう矢印に。
「えっと、おねえちゃん? おばあちゃん?」
「……? おねえちゃんでお願いします」
「うん、わかったよおねえちゃん! おねえちゃんたちは、ようこ? せんぞがえり? っていうんだね、かわったしゅぞくのおなまえだね!」
「……っ!?」
エミリアちゃんの言葉にナノハの雰囲気が少し変化したように感じた。多分、驚いたのだと思う。あまり表情が変わらないから、確信ではないけれど……ね。
少し考えて、ナノハはエミリアちゃんと目を合わせた。ゆっくりと、諭すように話し出す。
「エミリアちゃん」
「なぁに?」
「そういうことが分かる、ということを他の人に話してはいけませんよ?」
「どうして?」
「エミリアちゃんは、すごいです。話さなくてもいろんな人のことが分かります。ですから、内緒にしておきましょう? すごい人は力を隠しておくものなのです」
「……そうなんだ! じゃあ内緒にする」
「いい子ですね」
ナノハがエミリアちゃんの頭を撫でると、エミリアちゃんは嬉しそうに笑った。
「エミリアー!! どこにいるのー!?」
「あ! おかーさん!!」
彼女が駆け寄っていった先には同じ色彩を持った女性の姿があった。
「すみません、ご迷惑をおかけして……」
「いえ、全然大丈夫ですよ」
「ありがとうございます、ほらエミリア、ちゃんとありがとうして?」
「おにいちゃんたちありがとー!」
手を振ってくれたので、こちらも同じように振り返した。
ちゃんと親と合流できて良かった。……なんか驚きっぱなしだったなぁ……。うっ、吐き気が……。
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