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第十一話

少し長めです。


吸血族(ヴァンピーロ)

長命種の一つで、くすんだ金髪に(あか)の瞳を持つ種族である。その名の通り、血を飲むことが特徴で、五千年ほどの寿命があるらしい。番を持つと暴走は抑えられるが、番以外の血は飲めなくなる。怪力であり、さらに魔法にも優れているため最強の種族とも云われるが、純血の吸血族(ヴァンピーロ)は現在レーア王国の霧の森ヴァイッド・フォン・レーヴルに住む一体だけしか生存は確認されていない。

〜~〜~〜~〜~〜~[全世界生物図鑑]より



ここまで読んで、俺はため息をついた。バタンと辞典を閉じて空を仰ぐ。


「確実に、吸血族(ヴァンピーロ)の血を引いてるよね……」

「確か……人族とのハーフはダンピールと呼ばれます。人族の血を強く引き継ぐのでほとんど吸血族(ヴァンピーロ)の性質は現れないと聞いたことがあります。寿命はおよそ二千五百年……」

「ダンピールじゃあないね。『発作』があるから」

吸血族(ヴァンピーロ)とダンピール以外の血を飲む種族なんて他にありませんよ」

「例外ってこと? 俺も長命種ってやつなのかな?」

「そう考えるしかないでしょうね……。身長、伸びていますか?」

「……十四歳の時測ったあとほんの少しも伸びてません……」

「「確定ですね」」

「そんなぁ〜……」

「…マジか……」


四人で図鑑を囲みながらため息。

ここは、グリンダヴィーク王国のバイアブランカ王国へ向かう船が出ている港町、アクラネースの宿屋の一室である。図鑑はこの町で買った。


ちなみに、ギルの両手首と両足首は縄で縛った上で手錠をかけている。一昨日俺の『発作』が終わったばかりでギルのそれも一、二日程度で来るだろうと考えた結果、こうなった。ギルの場合、俺のときより力が強くなるから拘束も念入りにしておくことにしている。


三日後にエンゲス帝国経由のバイアブランカ王国行きの船が出航するため、待機中である。タイミング的にもちょうどよかったのだ。


「俺との手合わせはどうするの?」


そういえばしていなかったなと思い、二人に尋ねると、細い眉がピクリと動いた。


「…忘れて、ました」

「……。じきにする予定でした。忘れていた訳ではありません」


ナノハは申し訳なさそうに眉を下げ、ユズリハは悔しそうな雰囲気を(かも)し出しながら、忘れていないことを主張した。……これは忘れていたな。バタバタしていたのだから忘れていても仕方ないし、別に責めも怒りもしないのに。


「ギルドの試験場で試しましょう。冒険者登録はギルベルトさんができないので、バイアブランカに着いてからになりますけれど……」

「ギルドの試験場なら、わざわざ私たちが相手をしなくてもいいですし、そうしましょう」


グリンダヴィークにも冒険者ギルドは存在しているようだ。冒険者のランクを決めるためにも試験場というものはどこのギルドにもあるとのこと。


ランクは低い順から、F、E、D、C、B、A、S、SSとなっていて、Cランクからは(プラス)-の(マイナス)表示が追加される。冒険者にはランクを示すバッジを見えるところに付けておく義務があるそうだ。Sや、SSランクの冒険者はほとんどいないらしい……。


ユズリハとナノハは双方ともB+(ビープラス)ランクの冒険者だという。ダントツ上から数えた方がはやいし、二人とも凄腕の冒険者だ。


「さあ、行きますよ」

「えっ、今? ってちょっ!?」


ユズリハに引きずられていく。……何で女性で小さい身体なのに、こんなに力があるんだろう……。男としての自信無くなる……。


そんなこんなでギルドの前に着いた。中に入るとまだ午前中なのにも関わらず、人が多くて騒がしい。たくさんの依頼の紙が貼られているボードや、薄い板で仕切られた様々な受け付けなど、初めて見るものばかりでなんだかそわそわする。


「どきなさい、邪魔です」

「おい、嬢ちゃん、おめえ確かよぉく似た妹とパーティ組んでたよなあ? その妹どうしたんだ? 知らねえ坊ちゃんまで連れてよお」

「あなた方には関係ありません」

「ったくよお、つれねえなあ、嬢ちゃん。でもよ、おめえやおめえの妹がそこのか弱そうな坊ちゃん守って冒険者やってけるとは思えねえぜ? 大人しく俺らのパーティに入りなって。悪い思いはさせねぇぜぇ?」


斜め前に立っているユズリハがガラの悪そうな男たち三人に絡まれている。しかし、ユズリハはまったくひるんでいない。


「あなた方の目は節穴ですか。私がDランクパーティなどに入るわけないでしょう。このバッジすら見えないなんて、まだ若そうなのに憐れなことです」

「あ? 生意気な口きいてんじゃねえぞ小娘、こっちが優しくしてたら調子乗りやがって東洋人の癖によぉ! どうせその無駄に色っぽい身体使ってどっかのパーティに入れて貰ってランクを上げたんだろ? じゃなかったら、おめえみたいな東洋人の生意気な小娘がBランクのわけがねえ!」


その言い草にものすごく腹が立った。何なんだコイツら、好き勝手にユズリハとナノハのことろくに知らずにそんなこと……!


「言い過ぎだ! 東洋人だろうと小娘であろうとランクには関係ないし、パーティの加入を強いる権利なんてお前たちにはないだろ!?」

「アルベルト、このような輩は放っておけば良いのです。他人(ひと)を見下すことでしか自己の安定を図ることができない人種なのですから」

「グダグダ言ってんじゃねえよ、おめえこそ他人を見下してんじゃねえか、東のイエローモンキーが」

「いい加減にしな!! まったく……ユズリハやそこの坊主の言う通りだよ! さあさ、こんなこと続けるんだったら出ていきな!!」


割って入ってきた声の方向を見やると、長い赤髪を下ろしている二十代後半くらいの女性が仁王立ちしていた。

読んでくださりありがとうございます。

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