第4話 学科判定
——正門前
正門をくぐって三十メートルほど前方に見える第一校舎と名前の付いたクリーム色の立派な建物の前に二人の美少女が立っていた。
一人は、綺麗な黒髪で背中まで伸びた艶やかなゆるふわウェーブ。
もう一人は、透き通った銀髪で軽く内側に巻かれたサラサラなハーフアップ。
どちらも近くを通っていく男子を振り向かせるほど可愛い。ほんとに可愛い。
「ギフトカードって真っ白なのな」
鬼灯凌汰が裏表もない掌サイズのカードを持って真生と雪乃のところへ戻って来た。
「よしっ、みんな貰ってきたね、たっくんまだ帰ってこないけどあたしからシンクロしてみるよ」
真生が目を閉じ、全ての意識をカードを持った右手に集中させる。
すると真生が立っているあたりの空気の波長が変わった。
数秒後、透明だったギフトカードが青色に輝き始めた。
「まぁこのくらいでいいかな。二人もやってみてよ」
凌汰と雪乃も同じように右手に意識を集中させた。
「うおっ、黄色っ」
凌汰のギフトカードが一瞬で黄色に輝いた。
「黄色かー、うん、なんか黄色っぽいぽい」
真生が意味不明な感想を述べる。
「雪乃はどうだ?」
凌汰が尋ねたその時、
——パァァン
雪乃のギフトカードが粉々に砕け散った。
「どんだけ強く握ってんだよ、天然野郎」
すかさず凌汰が突っ込むと、
「違う……!私そんなに握ってないよっ」
必死で雪乃が弁解する。
「いや、お前なぁ、」
「待って凌」
「なんだクソビッチ、お前も割っちゃったか」
「そうじゃなくて、このカード、どれだけ力入れて握っても割れないの」
凌汰は一瞬戸惑ったが、その言葉をうそだと思ったのか、自分のギフトカードを真下に叩きつけた。
「……ほんとじゃん」
凌汰の投げつけたカードは砕けず、元の形のまま地面に残った。
「わりぃ雪乃、それ、破片だけ拾って試験官に聞いてみようぜ」
「……う、うん、不合格になったりしないかなぁ」
すると突然、不安げな雪乃の背中を真生が勢い良く叩いた。
「大丈夫だって! 雪乃よりもすごいギフトの使い手なんていないからっ!」
「そ、そんなことないよ、でも、ありがと」
雪乃は照れながらも嬉しそうにしていた。
「そんじゃ、試験官のとこもっかい行ってみますか」
「アイアイサー!」
「うん!」
三人は入試運営役員からギフトカードを貰った建物に向かって歩き始めた。
「ほぅ、ギフトカードを砕きましたか。名前と受験番号を教えてください」
試験官は少し驚いたように尋ねる。
「ろ、六百三十三番、白詰雪乃です」
「はい、では白詰さんはこの聖学科第一校舎のグラウンドで整列し、待機してください。」
「わ、わかりました、ありがとうございます」
「どーだった?」
真生が校舎の外に出てきた雪乃に聞いた。
「……聖学科になった」
「やっぱり!あぁー、雪乃と離れちゃうなあぁー」
「あ……真生はやっぱり武学科?」
「俺も真生も武学科だ」
なぜか凌汰が答える。
「雪乃、一人でも強く生きていくんだよ、離れてても繋がってるから大丈夫だよ」
「ぁ、ありがとう真生、私、頑張る」
「朝ドラ展開乙」
涙ぐむ2人の美少女に凌汰の冷淡な一言。
「行くぞ真生、北エリアの第二校舎まで歩かなきゃならない。」
「あ、あんたって絶対友達少ないよね!雪乃、もう行くね、終わったらさっきの正門で待ち合わせね!」
「うん、わかった!」
春の陽気な暖かさの中、雪乃は遠ざかっていく凌汰と真生を笑顔で見送った。