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第0話 約束
雪が少し積もった夕方、古びた小さな山小屋の扉が開く。
冬の寒い空気が中に入ってくる。
扉の外には仮面をつけ真っ黒の背広を着た大男が立っていた。
その男は静かに突き当たりまで進み、ゆっくりと後ろを振り返ると、小屋の中にいた五人の少年少女に囁くような声で尋ねた。
「君たちの夢は何だ」
空気が凍りつく。だれも返答する者はいない。
男が再び口を開ける。
「そうか、残念だ」
そう言って男が右手をズボンのポケットから出そうとしたその時、
「父上を助ける」
一人の少女が答えた。
一瞬の静寂の後、男はその少女の隣に立っている少年に顔を向けた。
「君はどうだ」
男から放たれる重圧が少年の口を無理やりに開かせる。
「お、俺は……」
皆の視線が集まる。少年は顔をうつむけ、一呼吸置いて男の顔を見上げて言った。
「俺は、この五人で世界をひっくり返すんだ」