意図された小包
その耳障りなベルの音に、世話しないノックの音
まで重なり始めると溜め息を漏らした。
勢いよくドアを開けると、悪夢の元凶その者が驚
いた様子で私を凝視する。
「何です?」
怪訝な声色から漏れる私の言葉を耳にすると、
その視点の先は我に返ったように表情を硬くして口
を開いた。
「小包が届いてます。其処に受け取り人の署名
を。」
手渡されたボールペンを片手に持つと、配達員が
抱える小さな茶色い小包に貼られたラベルの一角
にサインをした。
「何分、今朝方から新人がサボりましてね。届け
物が溜まってるんです。催促したつもりじゃ無
かったんですがね・・・今日中に片付けなきゃな
らん届け物が山程あるのですよ。」
年配の男は窶れた顔でそう吐き捨てると、早々と
小包を私に手渡し、軽い会釈を面倒臭そうにしな
がらそそくさと私の視界から消えていった。
まるで、一分一秒を争っているかの様子だった。
息を切らして次の配達先へ向かう男の理不尽な困
惑と疲労を背負う孤独な後ろ姿を目にすると同情
を覚えた。
玄関の扉を閉めて室内に戻ると、ダイニングテーブルの甲板に小包を置いた。
「小包ね・・・。」
差出人の住所を見ると、
私が育った孤児院の住所・・が記載されていた。
だが、この孤児院は五年前に閉鎖された筈。
何者かの思惑を包んでいる四辺の塊が
静かに私を見上げていた。