記憶の段幕
とある嵐の夜に、忽然と僕の前に姿を現し
た客人は蒼い眼をした見知らぬ美しい少
女。
轟く稲妻と荒れ狂う暗雲が連れてきたの
は、彼女だけでは無く彼女と僕とを繋いだ
莫大なミステリーだった。
その日を境に、僕の人生は不可思議で奇妙なモノへと一変し、謎に包まれた事件が僕の周囲で多発する。
一つここで伝えておきたい事がある。
これは、彼女を救う話では無い。
僕とーーーーーーー彼女とをだ。
忘れられない記憶というものも存在する。
時にそれを記憶で辿れば後悔や刹那を呼び起こす
事もある。
でも、手にとって修復する事は不可能だ。
時を越えた今、私に出来る事は記憶の余韻に浸る
事だけ。
そんな中で、重力に無頓着なピエロが私の思想を
駆け巡る。
ホントウカナ?
ホントウニワスレタノカナ?
オトシテナイ?
ミオトシテナイ?
ワスレタンジャナイ、
ネェ、シッテル?
私の思考回路を邪魔するかのように駆け巡る
モトメテルノハナニ?
コワシタイノハナニ?
ソレデモコワセナイノハナゼデショウ?
鈍い頭痛とクラクラした目眩に包まれ
思考は 鈍麻する。
私の記憶そして過去、
それは、必ずしも全ての過去の真実を映し出すも
のではない。
いや、そのフィルターが拒むのだ。
真実を露骨に映し出すことを。
だから、美化という進化を遂げる。
でなければその記憶の破片が、生きる私の今に
ドッペルゲンガーと豹変して襲って来る可能性
だってある程おどろおどろしいものなのだ。
ナンドヘンカンシテモカワラナイモノ
ソレガシンジツ
ソレヲタグリヨセテソウニスル
ソコカラミエテキタモノハジツハウツクシイ
ミトメテミトメテ
コバマナイデ
ソレハカコノメッセージ
キミノホンネ
不気味で醜い記憶のガラクタ山の何処かに眠って
る小さなリング。
それはきっと、子供の頃に祖父母と駄菓子屋で
買った駄菓子に付いてきたオマケの指輪のような
他愛の無いもの。
それを私は、探る手や心までもボロボロにしてま
で拾おうとはしなかった。
ワスレナイデ
ホントウノナカニネムッテル、
其処でふとある人物の顔が脳裏に浮かび上がる
と、不覚にもぼんやりとした感覚の中で涙を流し
ていた。