へいわな王国
気分を悪くする描写が続きますので、元気な時にお読み下さい。
あるところに、一人のお姫様と女王様がいました。
お姫様は、みんなの反対を押し切って、他の国の王子と結婚しました。
生まれたのは、自分に似てくりくりとした目を持ち、旦那に似て肌の色が白い、可愛い女の子でした。
その後、色黒で筋肉質な男の子も生まれ、家族は平和でした。
しかし、女の子は、全然思い通りに育ちません。
まず女の子は、服や女の子らしい興味を持ちません。
お姫様は、一緒に買い物をするという夢を叶えるため、女の子と一緒に買い物に行き続けました。
しかも女の子は、お姫様の言葉が嘘じゃないかと疑ってきます。この間だって、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」はチェルノブイリ原発の事件からと言ったら、「違うよ」と冷たくあしらわれました。
お姫様が間違ってる訳ないし、間違ってても大したことではなく、女の子にならそれを言ってもいいかと思っていたので、この答えには怒りました。
お姫様は女の子の部屋の汚さを指摘すると、女の子はいつもの素直で素敵な子に戻りました。
また女の子が話しかけてきました。
お姫様は興味がないので、女の子には別の話題を振ります。
だから、お姫様は女王様と一緒に、女の子が間違っていることを教えてあげます。
毎日六時のお夕飯の時、お姫様は女の子に言います。
「今日の報告をしなさい」
最初はお喋りが難しかった女の子も、この訓練のおかげで、今ではちゃんとお話できるようになりました。
ただ、まだ『普通』ではありません。
「『普通』はそんなことは言わない」
女の子の話の途中に、女王様が言いました。
「私の生きてきた『普通』では、こういう風に言うの。あなたはまだ小さいから分からない。だからこうやって、教えてあげているの! これは私からの親切なんだから、素直に受け取るのが礼儀ってものよ」
女王様は、お姫様にも言います。
「あなたがそうやって育てるから、この子はこんな風になるのよ」
「それで、次の話は?」
お姫様は、女王様の話を聞いても仕方がないので、女の子に次の話を求めます。
「どうしてそんなこと言ったの? それは一番いい言い方じゃないよね。この時、私だったらこう言うよ」
お姫様も、女の子にちゃんと話をしてあげます。
だって女の子は、お姫様の子どもで、女王様の孫だから。
女の子がちゃんとしていないと、お姫様も困るし、女王様も困る。
だから、女の子自身の言葉は、何もいりません。
女の子は、いつも話を聞かずに泣いてしまいます。
泣けば済むと思っているのでしょう。
いつものことに、みんな呆れています。
また、女の子は、男の子とよくケンカをしていました。
「お母さん、弟が暴力振ってきた!」
「姉弟ゲンカは、姉弟でなんとかしなさい」
お姫様には、兄弟がいません。
だから、そうしてケンカができる兄弟がいることは、とても幸せなことだと思います。
「あなたはお姉ちゃんなんだから、弟が何を言っても我慢しなくてはならないし、弟に手をあげてはダメだよ。たった一人の弟なんだから、大事にしてあげるのよ」
今日も、女の子が階段から落とされる音と泣く声が聞こえます。
いつもの、平和な日々です。
王子様は、いつも仕事でいません。
あなたとの子どもなのに、とお姫様は思いますが、お仕事は大事で、仕事に打ち込む王子様はとってもかっこいいからそれでいいのです。
男の子はどんどん大人になっていくのに、女の子はずっと中身が子どものまま。
毎日泣き喚いては、家族を困らせます。
女の子は、空っぽでした。
女の子のものだったものは、全部お姫様と女王様のために捨てました。
部屋には、女の子のためにと、お姫様が買ってきたものばかり。
女の子の部屋では、ありませんでした。
女の子には、好き嫌いがありません。
好き嫌いをするのは損なので、お姫様が教えてあげたのです。
だから、女の子は嫌いな食べ物がなく、元気にすくすくと育ちました。
女の子は、ずっとずっと、孤独でした。
大きくなった女の子に、女王様が言いました。
「私は、本当は男の子があなたに暴力を振るっていたのは良くないことだと思っていたの。でもね、お婆ちゃんの私が口を出して良いことなんてないの。そんな中でも、あなたがちゃんと育ってくれて、私は嬉しいわ」
女王様はにっこりと笑い、女の子も教わった通りに「よかったね」と言いました。
女の子は、トイレで吐きました。
とある王国のお家には、仲がいい家族が暮らしていました。
いつも正しい女王様と、ちゃんと評価のお仕事を忘れないお姫様、何も知らない王子様に、できそこないだった女の子と、立派な男の子です。
そうしてみんな仲良く、平和に暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。




