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致死率100%の事故物件に住んでみた【えっ! この部屋で一週間過ごすだけで〇〇万円!? 女子高生心霊バイト】  作者: 日原夏至


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第8話 2日目

 2日目。水曜日。


 乃亜はスマホのアラームで目を覚ました。ここはどこだろう? 寝ぼけながら手探りでスマホを探し、アラームを止める。

 そうだ、ここは家じゃないんだっけ。昨晩の記憶が蘇る。

 頭が重い。あまり熟睡できなかったようで、少し頭痛がする。夜中に物音がして、何度も目が覚めた。何の音かはわからないが、寝ている自分の周りを歩き回られたような、不快な気分がする。

 とは言え今日は平日で、もちろん学校へ行かねばならない。ここ新宿から通学すると、いつもの倍ぐらい時間がかかる。


 乃亜はベッドから起き上がった。ふと、クローゼットを見ると、扉が少し開いていた。寝る前は開いていなかったと思うのだが。

 クローゼットを開けると、中は空っぽで、ハンガーを引っ掛ける金属の棒にも何一つかかっていない。これだけ家具が残っているなら、クローゼットに服が残っているかと思ったが。

 よく見ると、金属製の棒は、少し曲がっているようだ。何か重い物でも引っかけたのだろうか? クローゼットの中を覗き込むと、隅の方に芳香剤と防虫剤が置かれていた。嫌な匂いがした。

 寝室を出ると、リビングと反対の廊下の突き当たりに外へ通じるドアがあり、朝日が廊下に差し込んで陽だまりを作っていた。昨日は暗くてよくわからなかったが、この部屋のベランダは書斎にあり、このドアも書斎から出られるベランダに繋がっているようだ。


 制服に着替えると、リビングでテレビを見ながら、昨日持ってきた食パンに苺ジャムを塗って食べる。スマホを見ると、怜司からメッセージが入っていた。

 『目覚めはどうだ? 昨日は何も無かった?』

 乃亜は、昨晩のドアに映った人影と、物音が頭をよぎったが、実際に何か見たわけでは無いので、少し迷った。

 『気のせいかもしれませんが、人影がドアに映った気がします。それと、カサカサ言う音が聞こえました。Gかもですが』と返信し、登校の準備を急いだ。



 朝の新宿駅は混雑していたが、電車を乗り換えて下り方面になると、思ったより空いていた。寝不足気味だと思っていたが、部屋を出ると頭痛もおさまり、学校に着く頃にはむしろ爽快なぐらいだった。結局、昨日は怖い事は何も起こっていない。あと6日過ごせば20万円貰えることを考えると、このぐらいは屁でも無い。乃亜は鼻歌を歌いながら学校に向かった。


「もうダイエットはやめたの?」

 小春は、生姜焼きとトンカツのスタミナ弁当を食べる乃亜を呆れた顔で見つめた。

「今日はチートデイだから良いの」

 乃亜は、弁当屋でとにかく腹に溜まるものを、と目に留まったスタミナ弁当を買ってきた。バイト代が出ると思うと気が大きくなって、最後の貯金を引き出したのだ。

「チート……? 何それ?」

 小春は怪訝そうな顔で見つめる。

「いつも栄養が足りない状態だと、身体が節約モードになって痩せにくくなるんだって。だから、たまにはたくさん食べる日を挟むと、身体は安心してまた痩せやすくなるらしいよ。それが今日ってこと」

「本当? それ、乃亜が適当に考えたんじゃ無いの?」

 小春は疑わしげな眼差しを向ける。昔から付き合いの小春は、何度も乃亜に騙されているのだ。

「ひど。有名だと思うけど。まあ、信じる信じないは、あなた次第ですけど」

 肉と脂で満たされた時の満足感は、他の食べ物をどれだけ食べても得られない。

「乃亜、全然太ってないじゃん。足なんて、私の半分ぐらいしか無いよ」

 杏奈は自分の太ももをさすった。

「いや、なんて言うか、杏奈はその方が良いよ。むちむちじゃん」

 乃亜は白い目を向ける。

「でしょ。絶対このぐらいの方が男受け良いって」

 そう言って杏奈は白い歯を見せた。

「ところで乃亜、バイトは見つかったの?」

「あー、まあね。とりあえず短期のバイトが見つかったから、一週間そこで働いてみるつもり」


「へー、どんなところ? お店なら言ってよ、友達も連れて見に行くからさ」

「いや、店じゃないんだけど……」

 さすがに、そのまま言うわけには行かないか。

「えーと……そう、清掃だよ! 部屋のクリーニングする仕事! 住んでる人が出かけている間に、部屋を掃除する会社で働いてるんだ!」

 乃亜は誤魔化すように笑った。

「ふーん。せっかく良いパパ知ってる友達がいるんだけどなあ」

「それはもう良いって」

 乃亜は悪戯っぽく笑う杏奈を、箸を持った手で制した。

「へー。でも、自分の部屋ぐらい自分で掃除すればいいのに」

 小春が不思議そうに言う。

「お金持ちなんだよ、うちのお客さんは。小春だって、例えば家のトイレ100円で掃除してくれるって言ったら、頼まない?」

「えー、どうだろ? 知らない人が入って来るのは嫌かも」

「きっと小春も、掃除するのが大変なぐらい広い家に住んだらわかるよ」

「そう?」


「ところでさ、乃亜」

 杏奈が割り込むように言った。

「何?」

「あんたさ、なんか匂わない?」

 杏奈はそう言うと乃亜の頭に顔を近付け、顔をしかめた。

「ちょっと杏奈、そんな風に言ったらさすがに乃亜も傷付くでしょ!」

 そう言いながら、小春も杏奈より遠慮なく鼻を近づけて乃亜の臭いをかいだ。

「……あれ? ホントだ、何かいつもと違う匂いがする」

「え……シャンプー変えたからかな?」

 昨晩は、マンションに置いてあったシャンプーを拝借した。女性ものでは無かったかもしれないが、癖が無いシトラス系の匂いで、臭いとは思わなかったが。

「んー、そう言うんじゃなくて。何だろう? ……おばあちゃん家みたいな匂いがする」 



 おばあちゃんの家ってどんな匂いだろう。

 乃亜は複雑な気持ちで604号室の鍵を開けながら、おばあちゃんの家に着いて想像をめぐらした。私のおばあちゃんの家なら、古い畳と猫の匂いが思い浮かぶが、そんなに嫌な匂いでは無かった、と思う。


 玄関に置いてあったスプレー式の消臭剤を念のため、全身に振りかけた。一応、臭いと言われたら傷付く程度の自意識はある。制服の肩口に鼻をつけて匂いを嗅ぐ。うん、匂わない。

 部屋の匂いがついたのか? 昨日はそんな事は無かったと思うが。


 そう思いながらリビングのドアを開ける。……あれ?この部屋はこんなに臭かっただろうか? リビング全体が、カビと、何か獣のような匂いがする。朝はこんなに匂わなかったはずだ。それに……微かに線香の匂いがする。小春達が言っていたのはこの匂いの事だろうか。

 リビングの南側の窓を開け、空気を入れ替える。初夏の風が、部屋の澱んだ空気を追い出していく。


 一体この匂いは何だろう? 部屋全体が匂うが、特に低い位置、床の方が匂うような気がする。

 乃亜はしゃがんで床を見た。心なしか、少し濡れているような気がする……。何の液体かわからないが、嫌悪感を覚えた。

 乃亜は寝室でジャージに着替えると、玄関脇の掃除道具が入った棚から、床拭き用のウェットペーパーを持ってきて力任せに擦った。拭いたペーパーを見ると、茶色と緑が混じった汚れが付いていた。なんだこれ……? いやいや、深く考えても良いことなんてない。どうせ今日もこの部屋に泊まらなきゃならないんだから。

 掃除を始めると他の部分も気になり、結局リビング全体を拭いて掃除機もかけ、キッチンまわりもカビ用洗剤を使ってぴかぴかにした。これじゃあ本当に掃除のアルバイトだよ、と心の中で独り言を呟く。


 それからキッチンにあったゴミ箱を開けた。昨日食べた焼きそばのカップ以外に生ゴミは無かったはずだが、下の方には紙ごみやら何かやらが溜まっている。念のため、ゴミ箱も空にしておこう。ゴミ箱の中の袋を引っ張り出してみると、40リットルの袋の半分ぐらいは溜まっている。そのほとんどは丸めた紙やティッシュのようだが、白い紙や、枯れた葉っぱのようなものも見える。他人のゴミを見るのはあまり気分のいいものではない。なるべく中は見ないように袋を縛り、玄関を出てゴミ捨て場に向かった。


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