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荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。  作者: しばたろう


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最終章2 別れあれば、また道あり

 翌日。

 朝靄の残る街道で、レグナスは俺たちに別れを告げ、

 〈ヴァルナ神殿〉へとひとり旅立った。


 レグナスには、本当に世話になった。

 旅の仲間であり、戦友であり、そして――師でもあった。


 あのような男に出会えたことを、俺は心から幸運だと思っている。


 出会いと別れ。

 それを繰り返しながら、人は少しずつ変わっていく。

 旅とは、きっとそういうものなのだろう。


 レグナスは振り返らなかった。

 〈ヴァルナ神殿〉へと続く道を、ただ一人、静かに歩いていく。


 ――ありがとう。また、いつか。

 そう心の中で告げ、俺は深く一礼した。


 そして、俺たちは進路を西へ取った。

 リオたちを追い、貿易都市〈アルバトロッサ〉へ。


 別れの余韻を胸に残したまま、

 目指すべき再会に向けた旅が、始まった。



 俺たちは、高原を進んでいる。

 日差しはやや強いが、吹き抜ける風がちょうど心地よい。


 先頭を歩くのは、オルフィナとエリオットだ。

 オルフィナは杖を振り回しながら、

 相変わらず中二めいた口上を謳っている。

 それにエリオットが妙にノリ良く同調し、

 二人ともご機嫌そのものだ。


「いざ往かん、栄光の都へ!」

「おお! 冒険者の未来は我らの前に!」


 ……聞いているだけで、少し恥ずかしい。


 その後ろを歩きながら、俺はふと、隣のアヤメに目を向けた。


 出会った頃より、少し背が伸びた気がする。

 成人したとはいえ、まだあどけなさは残っているが――

 最近、

 ときおり見せる落ち着いた横顔には、確かに“大人”の気配があった。


 正直、どきりとする瞬間もある。

 

 俺の視線に気づいたのか、

「どうかされました?」

 アヤメが怪訝な顔をするので、

 

「いや、なに、アヤメもきれいになったな、と思ってな」

 自然と、そんな言葉が口をついて出る。

 

 ……。

 ………。


(あれ? 俺、今、何て言った?)

 

 次の瞬間、アヤメの顔が、みるみるうちに赤く染まった。


「ア、アレクス様!

 からかわないでください!」


 そう言い残し、ぷいっとそっぽを向かれてしまう。


「いや、今のは、その……」


 前を歩いていたはずのオルフィナとエリオットが、

 いつの間にか振り返っている。


「なに、師弟でいちゃついているのだ?」

「ほんと、仲がいいよね?」


 二人は、にやりと笑う。


「ち、違う!

 ……いや、違わないのだが……」


 語るに落ちる、とはまさにこのことだろう。


 挙動不審の俺をよそに、

 旅路は何事もなかったかのように先へと続いていった。



 〈アルバトロッサ〉に近づくにつれ、

 街道の様子は目に見えて変わっていった。


 道は丁寧に整備され、

 行き交う旅人や行商人、馬車や騎馬の数も増えていく。


 道沿いには宿場町が点在し、

 即席の露店や簡易市が開かれているのも見える。

 香ばしい焼き物の匂い、異国の香辛料の刺激的な香り。

 人の声と、金属の触れ合う音が、途切れることなく流れていた。


 いやがおうにも、気分は高揚してくる。


「さすが、西方最大の貿易都市だな」

 俺がそう呟くと、エリオットが振り返って目を輝かせた。


「な! この雰囲気……もう、胸が躍ってくるよ」


 オルフィナも満足そうに腕を組む。

「ふむ。物資も情報も、人材も集まる。

 嫌いじゃないな、こういう街は」


 アヤメは、小さく息を呑みながら前方を見つめていた。


 そして――


 青々と輝く、広大な小麦畑。

 その向こうに、巨大な高い城壁が、ゆっくりと姿を現した。


 陽光を受けて白く輝く石の壁。

 遠目にも分かる、圧倒的なスケール。


「……あれが……」

 アヤメが、思わず声を漏らす。


 貿易都市〈アルバトロッサ〉。


 リオたちがいる街。


 俺は無意識のうちに、拳を握りしめていた。


(――いよいよ、だな)


 胸の奥に、期待と不安が入り混じった感情が渦を巻く。

 だが、立ち止まる理由はない。


「行こう」


 そう告げて、俺たちは城壁へと続く街道へと、歩を進めた。

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