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荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。  作者: しばたろう


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23/38

23喧騒一方、寡黙一方(けんそういっぽう、かもくいっぽう)

 翌日。

 俺たちは明日の洞窟攻略に向けて装備を整えるため、

 街の武具店を訪れていた。


 昨日、飲みすぎたせいか――少し頭が重い。

 どうやらエリオットもジルドも同じらしい。


 アヤメとスズナは眠そうにあくびを噛み殺していた。

 どうやら短剣のレッスンを夜更けまでやっていたらしい。


 一方――

 バルナとオルフィナはというと、ケロッとしてる。

 昨晩は“しつこい男の撃退法”なんかでふたり盛り上がりながら、

 エールをグビグビ飲んでいたのだが。

 よくあれだけ飲んで平気だな……と心の底から感心する。



 今日はクエストがないので、全員が普段着だ。


 ジルドは、賢者らしい落ち着いた装い。

 落ち着いた雰囲気の、上品で整った服装がよく似合っている。


 バルナは戦士らしく、動きやすいかっこいい冬服。

 男勝りでありながら、意外とスタイルが良いので妙に似合う。


 スズナは清楚。

 森に溶けそうな落ち着いた緑系のコートを身にまとい、

 静かなオーラを放っている。


 エリオットはいつもの司祭らしい服装。

 厚手の外套を羽織っても、上品さが消えないのはさすがだ。


 オルフィナは……“おしゃれ”。

 冬の流行をしっかり押さえた服に、ふわふわのストール。

 どこにいても視線を集める。


 アヤメは――シンプルなのに可愛い。

 いや、むしろシンプルだからこそ可愛い。

 毛糸の帽子からのぞく耳が赤くて、なんだか守りたくなる。


 ちなみに俺は、本当に“鎧を脱いだだけ”の普段着だ。



 武具店の大きな扉をくぐると、鉄と皮の匂いがした。


 鍛冶場の熱がほんのり漂い、壁いっぱいに並ぶ短剣、盾、胸当て――

 どれも丁寧に手入れされ、光を放っている。


「明日は洞窟攻略だからな。装備の準備を怠るわけにはいかない」


 俺は皆を振り返り、そう告げた。


 全員の表情が引き締まる。


 明日には――

 サラマンダー、そして大量の大トカゲとの戦いが待っている。


 今日中に、完璧に整えておかねばならない。

 


 広めの更衣室では、女子たちがすでに大盛り上がりしていた。


「まかせて! 明日の洞窟クエスト用の服、私たちが選んであげるわ!」

 バルナとスズナが鼻息荒く宣言する。


「まずは、オルフィナからね!」

 スズナの号令で、試着タイムが幕を開けた。



 最初に着せられたのは、

 紫がかったパーカーに森色のトレッキングスカート、

 軽い魔導ブーツを合わせた“山ガール仕様”の装備。


「おしゃれです。」

 アヤメが目を輝かせる。


「しかし、私の魔道のイメージとは、ちょっと違う気がするぞ。」

 オルフィナが真顔でつぶやく。


「とても似合ってはいるのだがな。」

 バルナが腕を組む。


「ええ。おもしろみにかけるわね。」

 スズナが残念そうに言う。


「却下だ!」


「採用基準がよくわからないのだが。」


「気を取り直して、次よ!」

 スズナがぴしっと仕切り直す。



 次に着せられたのは、黒のケイビングスーツ。

 ハーネスを装着し、頭には防衝撃ヘルム、腰にはロープと工具が揺れる。


「かわいくないです!」

 アヤメが悲鳴を上げる。


「私の魔道のイメージからどんどん離れていっている気がするぞ。」

 オルフィナが真顔でつぶやく。


「実用的ではあるが。魔法使いというより、もはや、特殊部隊だな。」

 バルナが腕を組む。


「ええ。これは、さすがに気の毒になるわね。」

 スズナが申し訳なさそうに言う。



「じゃあ、最後に――この 『春風の誘惑ピクニックコーデ』 で!」

 スズナが満面の笑みで差し出す。


 桜色のショートブラウスは肩を大胆に見せるオフショルで、

 胸元のリボンがほどけそうな危うい揺れを生む。


 白のフレアミニは光を受けてふわりと舞い、

 脚線を艶やかに強調する。


 淡いピンクのシアーニーソは太ももに妖しい境目をつくり、

 視線を奪う“甘い罠”そのもの。


 花飾りの麦わら帽子が影を落とし、

 可憐さと誘惑が混ざり合う――

 小悪魔じみた春風のピクニック姫が、そこに立っていた。


「……すごいです、オルフィナ様。

 同性の私から見ても……ちょっと、どきっとします……」


「ふむ……これは、なかなか悪くないのでは?」

 オルフィナはポーズをとってみる。


「これは、けしからんな」

「ええ、ジルドの目の色が変わるわね」

「却下だ!!」


 結局、オルフィナには

「服の下に着る鎖帷子(くさりかたびら)

 が選ばれた。



「じゃあ次はアヤメね!」

 スズナが振り返った瞬間、アヤメは思わず一歩後ずさった。

 おねえさまがた三人の気迫に押されている。


「まずは、森の妖精がモチーフの緑のレンジャー衣装!

 ふわっと揺れるミニスカートがチャームポイントよ!」


 着替えたアヤメを見た瞬間――


「天使だな」

「これは、ジルドのアヤメ愛が再燃してしまうわね」

「却下だ!!」



 次の衣装は、深いボルドーのジャケットに、

 黒の細身パンツとショートブーツを合わせていた。


 洞窟探索とは思えないほどシックで、

 落ち着いた大人の雰囲気をまとっている。


「うん。かわいい。」

「これもだめ! 却下!!」

「却下だ!!」


「アヤメの服は難しいわね?」


「では、最後に……『春風の誘惑ピクニックコーデ』 で!」

 スズナがにやりと笑う。


「それは、ご勘弁ください!!!」

 アヤメは全力で拒絶した。


 こちらも結局、

「服の下に着る鎖帷子(くさりかたびら)

 でまとまったのだった。



 更衣室からは、女子たちの大はしゃぎする声が聞こえる。

 

「……よくも、防具選びだけで、あんなにも盛り上がれるものだな」

 俺は呆れ半分でつぶやいた。


「まったくです」

 ジルドが静かにうなずく。

 「エリオット殿は、この鎖帷子(くさりかたびら)になさるとよいでしょう。」

 

 「では、俺は、あちらで、短めの剣を見てこよう」

 

 男三人の武具選びは――実に静かだった。

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