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荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。  作者: しばたろう


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22一卓結縁(いったくけつえん)

 ギルドの食堂は、夕食時で賑わっていた。

 長い旅を終えた冒険者たちの笑い声、湯気の立つ料理の匂い――

 その中の一角に、ジルドたち三人が席を取って待っていた。


 賢者ジルド。

 女戦士バルド。

 女レンジャーのスズナ。


 そして、俺、オルフィナ、エリオット、アヤメ。

 久しぶりの顔ぶれが、同じ卓を囲むことになった。


「まずは、礼を言わせてくれ、ジルド。

 エリオットの件では、本当に世話になった」


 俺が頭を下げると、ジルドは穏やかに手を振った。


「いえいえ。こちらも若干、思惑がございましたから。

 お気になさらず」


 そう言いながら、ジルドはアヤメへとワイングラスを掲げた。

 アヤメは、ビクッとして、さっとオルフィナの背中に隠れる。


「アヤメ、久しぶりね」

 スズナが笑って声をかける。


「はい。また会えてうれしいです、スズナ先輩」


 ようやくアヤメも顔を出して、ぺこりと頭を下げた。



「時に、アレクス殿。あなた方は、なぜこの街に?」


 ジルドが静かに切り出す。


「ひとつは、ジルドにお礼を言うため。

 もうひとつは――リオの行方の手がかりを探すためだ」


「私と入れ替わりに、アレクス殿のパーティを去った方ですね」


 ジルドは少し思案し、グラスを置いた。


「よろしければ、その捜索……私もお手伝いいたしましょう。

 冒険者の情報網もありますゆえ。

 もちろん、今回はきっちり報酬はいただきますが」


「それはありがたい。ぜひお願いしたい」


「ただし――ひとつ、条件が」


 ジルドが指を一本立てる。

 またアヤメ絡みの要求か、と一瞬身構えたが、今回は違った。


「実は、今、クエストをひとつ抱えておりまして。

 洞窟に棲むサラマンダー――火トカゲの征伐です」


 サラマンダー。

 ボス級モンスターだ。


 俺たちでは太刀打ちできる相手ではないが、

 Sランクのジルドなら問題なさそうに思えるが――。


「実は、我々は本日、その洞窟の奥まで“下見”に行ってきまして。

 サラマンダーを実際に見てまいりました」


(危険を伴う偵察を、よくまあ散歩のついでみたいに言えるな……)


「サラマンダー自体は私ひとりで対処できます。

 問題は――手下の大トカゲが大量におりまして、非常にうっとおしい」


「トカゲ……っ」

 その言葉に、オルフィナが青ざめた。


「ああ、実際、気持ちの良いものではなかったな。」

 バルナは顔をしかめる。

 

 女冒険者に爬虫類系が苦手なのは珍しくない。


 一方、アヤメは、


「トカゲ? 基本は丸焼きですね。珍味です」


 食べる気だ。



「つまり、ジルドがサラマンダーを相手している間、

 大トカゲが邪魔しないよう抑えてほしい、ということだな」


「さすが察しが早い。まさにその通りです。

 我々だけでは手が足りなくて」


「わかった。俺たちに任せてくれ」


 俺は快諾した。


 アヤメは洞窟クエスト自体が初めてらしく、興味津々だ。


「アレクス様。洞窟攻略の注意点などございますでしょうか?」


 俺は、大学で習ったことを思い出しながら、順に説明していった。


「まず、洞窟は狭い。

 だから剣も矢も“短めのもの”を用意する。

 それから、接近戦が増えるから、防具も厚くな。」


「はいっ!」

アヤメが姿勢を正す。


「次に重要なのが火だ。松明は多めに持て。

 洞窟では“光そのものが武器”になる。トカゲは光に弱い個体が多い」


「へえ……光で弱るんですね」


「覚えとけよ。で、大トカゲは三拍子そろってる。

 “暗所に強い・素早い・噛む”。厄介だ。

 

 まず、

 狭い通路では敵の真正面に立つな。

 トカゲは横に跳べない。斜めに位置取りすると攻撃しづらくなる」


「なるほど、真正面はダメ……斜め……メモします!」


「次。松明を奴らの顔に向けろ。

 動きが止まった瞬間が“アヤメの矢の入りどころ”だ」


「光で動きを止めて、すぐ射る……ですね!」


「それから――天井を警戒しろ。

 大トカゲは天井に張りついて真上から落ちてくる」


アヤメがびくっとして見上げる。


「ひぃっ……そ、そんなに上から……」


「常に上を見る癖をつけろ。洞窟の基本だ」


「はい! ずっと上を見ておきます!」


「最後に、アヤメ、お前の矢は精度が高い。

 だからこそ、洞窟戦では“動きを止める”を優先しろ。

 足を一本射抜けば、トカゲは一気に鈍る。

 そこからは俺が前に出る」


 アヤメは目を輝かせて深く頷いた。


「はい!ご教示ありがとうございました。」



「意外と博学だな」

 バルナが感心したように腕を組む。


「アヤメ、短剣の経験は?」とスズナ。


「ありません。狩猟用のものしか……」


「じゃあ後で少し教えてあげるわ」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


 アヤメの瞳がきらきらと輝いた。



「では、明日は作戦会議と準備。

 明後日、クエスト実行とまいりましょう」


 ジルドの言葉に、俺たちは力強く頷いた。

 

 その夜、俺たちは久しぶりの再会を噛みしめながら、

 同じ卓を囲む温かさを胸に、静かに明日へ備えるのだった。

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