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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
4章 ACT2

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第15話 突然天井が崩れてくる。高遠夜霧ら三人は押しつぶされて死んだ

 ガンスリンガー、竹倉季世子は即座にクラスメイトを殺す覚悟を決めた。

 中にはどうしたものかとまどっている者も、賢者の意向に従うことに反感を覚える者も、最初から殺し合いなどするつもりのない者もいることだろう。

 だが、この状況においてそのような惰弱な心持ちは死を意味する。

 誰が相手だろうと殺す。何よりもその覚悟が重要だ。

 最初のうちはおっかなびっくりの探り合いになるかもしれない。その時点で、躊躇なく殺す覚悟ができているというのは相当なアドバンテージだ。

 季世子は森の中を歩いていた。

 まずは、砦の範囲外に行かなければいけない。大工(カーペンター)である有本理の領域内で戦うことになれば相当に不利だろうからだ。

 季世子は両手に持つ拳銃の引き金に指をかけたが、ぴくりともしなかった。

 では別の銃を召喚しようとしたが、それも失敗に終わる。

 どうやら試練開始まではスキルが制限されているらしい。

 ただ、事前に準備していた物が消えてなくなったりはしないようだ。

 それは、大工(カーペンター)が作った砦がそのままであったことからもわかる。

 スキルに関してだと、アイドルの秋野蒼空による誓願も消えていた。

 これも開始時点での不公平をなくすための措置だろう。誓願にはクラスメイトを攻撃できない制約が課せられていたからだ。

 他になにかわからないかとシステムウインドウを確認すると、メニューが増えていた。


『賢者候補選抜戦』


 選択すると時刻が表示された。カウントダウンしていくので、開始までの残り時間のようだ。

 他には参加者のリストと、地図もある。

 参加者は全十六名で深井聖一の欄は灰色になっていた。これは死亡を示しているのだろう。


 ――人数が合ってない?


 現時点で行動を共にしていたクラスメイトは十八名のはずだ。

 リストを再確認すると、高遠夜霧と壇ノ浦知千佳が載っていなかった。


 ――まあ、出会ったなら殺せばいいよね。


 リストに載っていないから殺さないなどと、余計なことは考えない。

 地図はこの周囲をあらわすもののようで、自分の位置がマーキングされていた。

 赤い円が表示されているので、そこが戦闘が行われる範囲なのだろう。

 選抜戦の範囲は魔界中心部を囲む壁の中のみだが、これは結構な広さだ。

 穴は直径二十キロメートルほどで、壁と穴のあいだは百メートルほど。皆がばらばらに動いたなら戦うどころか、出会うことすら難しい。

 逃げ隠れするには都合がいいが、それではシオンに殺されることになるだろう。

 では、どこへ向かうべきか。

 季世子は、壁にある城門へ向かうことにした。


  *****


 知千佳は木の上、生い茂る葉の中に身を隠していた。

 アグレッサーから得た謎の物質で作ったバトルスーツを身に纏い、戦闘に備えている。

 位置は壁の近くだ。試練の範囲でいえば、かなり端のほうになる。


『しかし、あっさり一人で逃げ出すとはな。樹菜とろみ子とやらは、二人で逃げよったが』

「え? そうなの!?」


 気配を消して闇に紛れ、大工(カーペンター)の領域を逃れ、当たり前のように木に登った知千佳だった。

 一人で逃げたのも、殺し合いになるなら当然そうすべきだろうと思ったまでのことなのだが、言われてみるとずいぶんと薄情な人間にも思えてくる。


『責めているのではない。むしろ褒めておる』

「うう……でもさ、複数人で行動するって危険じゃない? 高遠くんとなら別だけどさ」


 その夜霧もシオンがあらわれた時点ですでにいなかった。

 夜霧がいれば、こうはならなかったかもしれないが、いないものは仕方がない。


『その小僧だが、連絡が取れてな。なんでも、七層に落っこちたらしい』

「へ? 落ちたってどういうこと? それ大丈夫なの?」


 夜霧は、とんでもない能力の持ち主ではあるが、身体は普通の人間であり高所から落ちればただではすまないはずだった。


『元気そうだったから、なんともなかったのだろうな。戻ってくるとは言っておるが、現段階では戻り方がわからんらしい。なので、小僧が戻ってくるまでどうにかやりすごす必要がある』

「やりすごすって言ってもさぁ。あ! 私はシステムとかインストールされてないからさ、殺し合いの数に入ってないってことないかな?」

『あの場におってお主だけ見逃されておるというのはさすがに考えが甘くないか? 数に入っておると想定しておくのが妥当であろう』

「まあ、私から積極的に殺しにいく気もないから、とにかく逃げ回るってことなんだけど……みんなあんまり逃げてないのかな?」

『うむ。逃げすぎると、殺せないからな。そのあたりはジレンマであろう』


 知千佳は周囲の気配を探った。すると、バラバラに逃げたはずではあるが、大工(カーペンター)の作った砦と、城壁の間に何人かがいることに気付いた。

 ランドマークとなるものが、それぐらいしかないからだろう。自然と皆はそのあたりにやってくるのだ。


「このままここに隠れてたら大丈夫?」

『どうであろうな。お主の隠行を見破れる者がそうおるとも思えんが、索敵系のスキルがあるのなら見つかってしまうかもしれぬ。その場合は動き回っておったほうがよいかもしれぬし……』

「高遠くんはここがわかるかな?」

『現在地は伝えておいたし、我とは電話ができるからなんとでもなろう』

「じゃあ、待ちで。逃げ回るって言ってもそれはそれで危険な気もするし」


 合流を目指すなら、動かないほうが効率がいいはずだと知千佳は考えた。


『まあ、我もおるしな。二人の目をもってすれば、そう易々と急襲をうけはせんだろう』


 知千佳たちが覚悟を決めたところで、唐突に銃声が響き渡った。

 連射しているらしく、繋がって聞こえるほどの銃声はいつまで経っても鳴り止まない。


『始まったな。銃を使うのはガンスリンガーだったか』


 銃を使うのは竹倉希世子だけのはずだった。

 彼女の能力は銃の召喚。

 それだけなら魔法も使える世界でたいして有利でもないのだが、銃はリロードなしでいくらでも撃ち続けることができるし、弾にも様々な能力を付加できる無茶苦茶な性能になっている。


「ま、勝ち目はないよね」


 静観していていいのかとは少し思う。だが、知千佳に戦いを止める手立てはない。

 今はただ待つことしかできなかった。


  *****


 僕が壁の中に逃げ込んだのは、森の中よりは少しでもましかと思ったからだ。

 ここなら遮蔽物はたくさんあるし、明かりも点いている。

 暗い森の中で、どこからやってくるかわからない敵に怯えているよりは遥かにまし。

 けれど、皆も考えることは似たようなもので、何人かが壁に逃げ込んだようだ。

 逃げ込んだというよりは、ここを主戦場にしようとしたってことかな。

 壁の中も広いけど、皆はそれほど奥へは行こうとしていない。それはそうだろう。クラスメイトの誰かを殺さないと、賢者に殺されてしまう。つまり、逃げすぎるのは都合がわるいのだ。

 今、僕は天井裏にいる。そこから、下を見下ろしているのだ。

 とりあえずはここで様子見ということになる。

 さてこれからどうするか。

 ちょっと困ってしまうのが、僕に直接の戦闘能力はないってことだった。

 なので必然的に搦め手を使うしかないんだけど、敵を罠にはめるなどした場合、それは殺したとカウントされるのだろうか?

 もしされないのなら、相当にまずい。敵と正面から戦って勝つのはほぼ無理だろうからだ。

 まあ、そこはなるようにしかならないのだろう。

 賢者はこの戦いを見ているはずだから、僕の戦果だとわかってくれることを期待する他ない。

 では、どんな仕掛けをすればいいのか。そんなことを考えていると、何者かがやってきた。

 僕が見ている部屋に、三つ編みをして眼鏡をかけている少女が入ってきたのだ。

 竹倉希世子だ。

 クラスはガンスリンガー。その名のとおり彼女は銃で戦う。

 まいったな。誰と戦っても勝ち目なんてないけど、特に勝ち目がないように思える。

 息を潜め、どこかへ行ってくれと願う。

 けれど、そんな願いもむなしく、彼女は銃口を天井へ、僕のほうへと向けた。

 適当に振り回したわけじゃない。確実に僕を捉えている。


「なんでだよ!」


 彼女はそれに答えることなく、引き金を引く。

 あっというまに僕は蜂の巣になった。


  *****


 もう少しすれば自分は竹倉希世子に撃たれてしまうらしいと、愛原幸正は知った。

 彼が手にする文庫本には少し先までの未来が書かれている。

 そして、ここに書かれたことは、自分がそうなると知っていても変えることができない。

 そうならないように行動することができず、小説に書かれたままの言動を取ってしまうのだ。


「とりあえず、消せるところまでは消してと」


 だが、幸正は小説の内容を書き換えることができる。これで自分の行動や周辺事象をコントロールすることができるのだ。

 指でなぞると文字が消えていく。

 消せたのは、天井裏に上がってから後の部分までだった。なにせ幸正は天井裏に上ってきたばかりだ。さすがに既に起こってしまったことまでなかったことにはできない。

 幸正は次の展開を考えた。文庫本に文章を書き入れることで未来を変えることができるのだ。

 しかし、なんでも書けるわけではない。ありえそうなことしか書くことはできないし、これまでの展開と矛盾する内容を書くこともできない。

 さてどうするか。

 どうやら季世子は幸正がここにいることを知っているらしい。

 つまり幸正を殺しにきたわけで、このような確固たる考えでの行動を書き換えるのは難しいのだ。

 試しに季世子が来ない展開を書いてみたが、すぐに文字は消えてしまった。

 季世子が来るのは確定らしい。なので季世子についての書き換え以外で対応する必要がある。

 幸正はページをめくった。これまでの内容で利用できそうな文章を探す。

 幸正が思いついたのは、他のクラスメイトを季世子にぶつけることだった。

 幸いこの城壁内には、他にも何人かがいると書いてある。


『季世子が部屋に入ってきた。同時に、もう一人が反対側の扉から入ってくる』


 そう書き入れてしばらく待つ。文字は消えなかった。承認されたのだ。

 やってくるのが何者かはわからない。この続きがどうなるのか。もどかしくはあるが、この文庫に文章がいつ浮き出るのかはわからないのだ。

 今のところ小説が更新される様子はない。目の前でことが起こるのを待つしかなかった。

 しばらくして季世子が部屋に入ってきた。そして、もう一人が反対側の扉から入ってくる。

 篠崎綾香だった。


「こいつは……」


 それは、クラスメイトを何人も殺した復讐鬼。

 運命を書き換えた結果、災厄を呼び込んだだけに終わったのかもしれない。

 だが、季世子の注意は綾香へと向いた。この二人が戦うなら、その隙に逃げられるだろう。

 季世子が躊躇いなく引き金を引く。

 幸正はこの機を逃さず、慌てて階下への階段を駆け下りた。


  *****


 派手な銃声と破壊音。背後から聞こえてくるそれは二人の戦いの激しさを物語っており、こちらにまで注意を払う余裕がないことを示しているはずだ。

 そう信じて、走り続け、部屋をいくつも抜けていく。

 かなり離れたはずの場所までやってきて、僕はようやく息を吐き、心を落ち着かせた。

 大丈夫。とりあえずこの場は凌げた。けれど、これはあくまで一時凌ぎにすぎない。

 どうにかして、他の奴らを出し抜いて、生き残る必要がある。

 僕は文庫本を確認した。

 なぜ僕がここにいることを季世子が知ることができたのか。それを知っておかないと逃げ切ることができないからだ。

 季世子のサイドストーリーが文庫本に追加されている。それによれば、季世子の銃はスマートガンと呼ばれる、様々なセンサーが内蔵されている武器だった。それで、僕を発見したのだ。

 ならば、十分に距離を取れば季世子の索敵から逃れられるはずだ。

 僕はあたりを見回した。あまり使われていない部屋なのか、老朽化がひどい。あまり長居するべきじゃなさそうだけど、一つ気になる物があった。

 金属製の扉だ。潜水艦の扉なんかに付いているような、大きなハンドルが付いている。

 触ってみたけど、びくともしない。

 この先に何があるのか気になった僕は、システムウインドウから地図を参照してみた。試練の範囲内に限っては詳細な地図が表示されるようになっているのだ。

 扉の先にあるのは、人が数人も入れば満員になりそうな小部屋だけだった。

 ならば結局この部屋は行き止まりということだ。ますます、ここにいるわけにはいかない。

 部屋を出ようとしたところで、いきなり扉のハンドルが回りはじめた。

 僕は慌てて部屋を飛び出して、外から中を窺う。

 出てきたのは二人。どちらにも見覚えがあった。

 クラスメイトの高遠夜霧と、花川大門。さらによく見てみれば、花川はデイヴィッドという男を背負っていた。


  *****


 行き止まりの部屋で文庫本を確認すると、そんな文章が書かれていた。

 どういうわけかはわからないが、この部屋の扉から、いつのまにかいなくなった花川大門と高遠夜霧とデイヴィッドが出てくるらしい。

 これはチャンスだと幸正は判断した。

 夜霧は害虫駆除の能力なので、対人戦闘力は皆無。

 花川はヒーラーだったはずなのでこちらもさほど戦闘力はない。中途半端に攻撃しても回復されるかもしれないが、防御力もさほどないだろうから即死させればいい。

 デイヴィッドはギフトのランクを下げる封印の力を持っているが、気絶しているようだから無視していいだろう。

 もちろん、三人まとめて殺すのが簡単だとは言わない。だが、人外の能力を持つバケモノどもを相手どるよりは遥かにましなはずだ。

 とりあえずはこいつらを殺して一時間後の判定をクリアする。こんな奴らでも殺せば能力値の上昇があるかもしれないから、殺せそうな奴は殺していくべきなのだ。

 ではどうするか。幸正は部屋を見回した。使えそうな場所はいくつかある。


『突然天井が崩れてくる。高遠夜霧ら三人は押しつぶされて死んだ』


 そう書き入れる。こんな小説を読まされた日には文句の一つも言いたくなりそうな雑な展開だが、別に面白い話にする必要はない。


『突然天井が崩れ――』


 だが、この文言は受け入れられなかったのか、書き込んだ文字が途中まで消えてしまった。

 となると、天井の崩壊で夜霧たちを殺すことはできないのだろう。

 しかし、まだ利用できそうな物はいくらでもある。

 別の展開を書こうとしたところで、小説の続きが浮かび上がった。


『僕は死んだ』


 幸正はぞっとした。これまで自分の死が明確に書かれたことはなかったからだ。

 蜂の巣になる。崩落に巻き込まれる。モンスターに引き裂かれる。

 具体的にどうなるかが書かれたことはあっても、死そのものは書かれなかった。


「なんだよこれ。一人称小説としておかしいよ」


 軽口で己を鼓舞する。僕が書き手なら、死んだなどと書けるはずがないのだ。

 だが、人称問題はどうあれ、死んだと書かれているならそれは消せばいい。

 幸正は文字をなぞって消した。とにかく自分が死なない展開にするしかない。

 だが、何かを書き入れる前に再び文字があらわれる。


『僕は死んだ』


 消す。


『僕は消えた。僕は消失した。僕は無になった。僕の生命機能は停止した。僕は終わった』

「なんでだよ! 未来を知り、変えることのできる最強の能力のはずだ!」


 もちろんなんでも思いどおりになる力ではない。だが、使い方次第でどんな局面も打開できる能力のはずだったのだ。

 なのに。

 文庫本はもう、幸正の死以外の展開を許そうとはしなかった。

 いくら消そうと、書き直そうと、あらわれるのは死を意味する文字だけになっているのだ。


「くそっ! どうしたらいいんだよ!」

『死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ』


 それはもう、文章として意味をなさなくなりつつあった。同じ言葉の繰り返しであり、幸正がどれだけ文字を消そうともまるで追いつかない。

 それでも、幸正にはこの文庫本をどうにかする以外の道がなかった。


「そうだ! ページを破れば!」


 ページを引き裂き、細切れになるまで破り千切った。

 そうやってバラバラにしてしまえば、小説としての意味をなさなくなる。

 全てのページを破り、文庫本の体をなさなくなった細切れの紙を幸正はばらまいた。

 これで能力を失ってしまうかもしれない。だが幸正は、目前に迫る死のほうが怖かったのだ。


「と、とにかく逃げないと」


 まったく意味はわからないが、夜霧たちがくれば、幸正はこの場で死ぬ。

 幸正は、金属製の扉に背を向け逃げ出そうとした。

 そして、嫌な予感を覚えて足を止めた。

 このまま逃げ出せばいい。なのに、どうしても背後にあるものが気になる。見なくてもいいものを、見ようとしてしまう己がいる。

 振り向いてはいけないと本能は訴えていた。だが、恐怖の源を確認せずにはいられないのもまた本能によるものだ。

 幸正は、結局振り向いた。特に変わりはない。そこには先ほどまでと同じく、ばらばらになった文庫本が散らばっているだけだ。

 なんでもなかった。気のせいだったのだ。そう胸をなでおろそうとしたところで。

 ぞわりと文字があふれ出た。

 死を意味する文言が、破り捨てた文庫本から這い出てきて、石床の上に張り付いていくのだ。


「ひっ……」


 文字は瞬く間に床を埋めつくし、壁を這い、天井にまで達する。

 お前は死から逃れることはできない。偏執的なまでの文字の羅列は、そう訴えているかのようだ。

 ガタン。

 そんな音がして、金属扉の向こうに何かが到着し、扉のハンドルが回っていく。

 扉が開き、夜霧たちがあらわれた。

 天井にヒビが入る音が聞こえ、パラパラと漆喰が剥がれ落ちてくる。

 そして、幸正と夜霧の目が合った。


「死ね」


 無慈悲なその一言が、幸正が最後に聞いた言葉となった。


  *****


「ちょっ! 出合い頭にそれですか、あんた! クラスメイトでござろうが!」


 花川が悲鳴じみた声を上げた。


「殺気を感じたから殺しただけだよ」


 天井から危険を感じて、その源が目の前の愛原幸正だとわかった。

 だから、殺される前に殺した。

 夜霧からすれば、それだけのことだった。


「いやいやいや、この人ら賢者に強制されて殺し合いしてんでしょうが。いわば被害者でござるよ!?」


 六層で行われていることについては花川に一通り説明しておいた。

 そうでないと、いざ殺し合いに遭遇した際に混乱するだろうと思ったのだ。


「だからなんだよ。強制されたからって人を殺していいのか? 経緯はどうあれそれは自分で選んだことだろ。人のせいにしてどうするんだ」

「なんか、もう能力がどうこうより、この精神性が怖いんでござるが!?」


 怯えている花川は放っておいて、夜霧はスマートフォンを取り出した。もこもこに現在地を聞こうと思ったのだ。


「出ないな。なんかトラブってるのかも。急ごう」

「なんで、当たり前にスマホ使ってるんでござるか!? って、なんかシステムメッセージが出てきたんでござるが!」

「どんなの?」


 賢者によりギフトをインストールされた者は、視界にシステムメニューが映し出されている。夜霧にはインストールされていないので、どんなものかは想像してみるしかなかった。


「ちょっ! 賢者候補選抜戦への参加を承認しました。とか出てるんでござるが!」

「参加者になったのか。ちょうどいいな。ということは花川がエリア外に出ようとしたら、シオンが殺しにやってくるわけだ」

「ぶほぉ! さすがにそれはひどすぎやしないでござるか!」


 夜霧や知千佳が勝ち残っても、エリア外に出ようとしても、参加者として認められていない場合はシオンがやってこない可能性がある。

 夜霧は、花川はいろいろと便利だと考えていた。

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