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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
4章 ACT1

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第2話 なに一人で異世界をのんびり堪能してんの

 闇の庭園(ダークガーデン)は暗殺ギルドである。

 もちろん公のものではない、非合法な組織だ。

 その名のとおり、活動内容は暗殺を請け負うことだが、金銭の授受を目的とはしていない。ギルドを設立し運営する男、宮永良介はすでに莫大な資産を持っているからだ。

 その名前からわかるように良介は日本からやってきた異世界人だ。賢者に召喚され、偉業を達成し、賢者の従者としての資格を得た後に、世界中を冒険して富を築いた。

 彼が従者となったのは、賢者となる実力がなかったからではない。賢者など面倒だと思ったからだ。なので、賢者になるのは他の者にゆずり、自分は好きなように動ける立場を得た。

 そんな彼が暗殺などをやりはじめたのは、正義の味方をし続けるのにも飽きてきたからだ。

 盗賊から村を守り、攫われた娘を取り戻し、日照りを起こす水妖を退治し、戦争に明け暮れる二国の調停を行う。

 世界各地で獅子奮迅の活躍を見せた良介だったが、次第に退屈になってきた。

 一度やった冒険(クエスト)と同じようなことをもう一度やる意味があるのかと考えるようになったのだ。そう考えはじめると、どんな冒険も構成は同じで、登場人物や背景が多少異なるだけとしか思えなくなってくる。

 何か刺激的なことを。もっと面白いことを。そう考えた末に、彼は犯罪に手を染めはじめた。

 どうせならこれまでやってこなかったことをやろうと思ったのだ。

 最初は盗みをやってみたがこれはすぐに飽きた。彼の能力なら、そんなことは簡単であり、盗んでまで欲しいものも特になかったからだ。

 女には困っていなかったので襲う必要もなく、結局、彼が選んだのは人を殺すことだった。

 殺人も彼にとって困難なことではなかったが、人が死ぬということにドラマを感じたのだ。

 人は生きていれば様々な関連を持っていて、それが死で断絶することによりドラマが発生する。

 なので、良介は暗殺を請け負うことにした。そのほうが面白いだろうと思ったのだ。

 暗殺を依頼するともなれば、そこには葛藤もあろうし、やむにやまれぬ事情もあるだろう。ただのお家騒動だろうと、端から見る分には興味深いものだ。

 そうして、暗殺稼業を始めた良介だったが、成り行きでギルドを運営することになってしまった。

 暗殺などをやっていると裏の世界と関わることも多い。

 似たようなことをする組織を諍いの末に壊滅させるなどしているうちに、あぶれたヤクザ者などの面倒をみることになって、いつのまにかこうなってしまったのだ。

 そんな良介だが、表向きは花屋の経営者ということになっていた。

 二階建ての建物の一階を店舗にして、二階を自宅として暮らしている。

 ある日、花屋の仕事を終えて自宅に帰ってくると、机の上に手紙が置いてあった。

 暗殺依頼だ。

 依頼主はわからない。この手紙がどこからあらわれたのかもわからなかった。

 良介は、とても面白いと思った。

 当然のことだが、彼は自分が暗殺ギルドの長だなどと、言いふらしているわけではない。

 そのことを知っているのはギルドメンバーの一部だけであり、依頼を受ける際には幾人も経由して、足がつかないようにしてあるのだ。

 なのに、この依頼主は自分のことを知っていて、直接依頼書を持ってきている。そして、その方法が皆目わからない。

 賢者のギフトを持つ、超常者とも言える自分を出し抜くだけの力を持つ者がいる。それはとても刺激的なことだった。

 依頼の内容は、ある賢者候補の少年を殺すことだ。

 異世界からやってきた少年では、この世界の人間との付き合いは薄いだろうし、死んだところでたいした影響はないだろう。

 それ自体はそう面白い依頼でもなかったのだが、その依頼が変わっていたのは殺害方法について事細かに指定されていたことだ。

 仕事のやり方についてあれこれと口を出されるのは癪に障るが、その依頼には、まず部下の誰かにやらせてみろ。そうすれば意図がわかる。とも書いてあり俄然興味を引かれた。

 良介は、まずは話にのってやろうと考えた。


  *****


「もうちょっとなんかしたら!?」


 夕刻。

 魔界から帰ってきた(とも)()()は、ベッドで寝そべってゲームをしている夜霧を見てそう言った。

 クラスメイトたちが強すぎるため、それほど苦労はしていないのだが、それでも暗かったり、狭かったり、迷路になっていたり、いきなり森になっていたり、極寒の砂漠があったり、灼熱の溶岩地帯があったり、魔物が大挙して押し寄せてきたりと、魔界はストレスフルなのだ。

 せめて、帰ってきた時に労うぐらいはしてほしい。そう思うのだが、夜霧はだらけきっていた。


「あー、これはジャパニーズ、ヒモってやつまっしぐらね」

「ヒモだったら、自分の生活を維持するために、たかってる女の人にすり寄るもんだと思うけどね!?」

「ふーん、すり寄ってもらいたいんだ?」

「別に私にしろって言ってんじゃなくて!」


 にやつくキャロルに、知千佳は慌てて言い返した。


「いえ、高遠くんはこれでいいんですよ。何もしてもらわなくていいんです」

「うん。ここに、ヒモを甘やかす人いたよね」


 諒子はとにかく夜霧に何もさせたくないと思っているので、今の状況は都合がいいのだろう。


「あー、お帰り」


 夜霧はゲームをスリープさせて、身体を起こした。


「あれ、そういや、ヒモ仲間は?」


 ここは役立たずを集めたグループ7の部屋だ。他に二人いたはずだが、今は夜霧一人しかいない。


「泉田と愛原なら、別のグループに移ったよ」

 泉田悠吾と愛原幸正も夜霧と同じく使えないとされていた。

 だが、悠吾の料理人(コック)クラスは、作る料理に能力向上効果があるとわかり、幸正の読書家(リーダー)クラスは、魔界で入手した有用な魔導書や巻物を使いこなせることがわかったのだ。

 そのため、彼らも魔界攻略に参加することになったということらしい。


「なんか思うところはないわけ?」

「まったく何もしてないって思われるのも心外なんだけど」


 夜霧でも穀潰し扱いは、あまりいい気はしないらしい。


「何かやってるの?」

「一応ね。今後のことを考えて剣術の練習はやってるけど。デイヴィッドに見てもらって」


 デイヴィッドは南門を守る衛兵隊の副隊長だ。いけ好かないタイプの男かと知千佳は思っていたのだが、案外付き合いはいいらしい。


「剣術かー。意味がないとまでは思わないんだけど……」


 知千佳は言葉を濁した。夜霧が付け焼き刃の武術を身に付けても使いどころがないと思ったのだ。

 夜霧には即死能力がある。こと戦闘においては無敵の存在であり、戦いが始まりすらしないだろう。つまり、わざわざ剣術を使う必要がない。


「剣術で戦おうとかは思ってないよ。なんてのかな、集中力をつけるためっていうか。見てて」


 そう言って、夜霧はテーブルの上に置いてある花瓶を指差した。

 挿してあるのは赤い薔薇だ。言われたように見ていると、花弁が一枚はらりと落ちた。


「これって?」

「前に手加減の実験をしただろ? あの時はたいして意味はないかと思ったんだけど、賢者から話を聞き出すにはやっぱり必要かと思って」


 そう言われて知千佳は思い出した。

 夜霧の能力は強力すぎて使いどころが限定される。そこで手加減ができないかと試したことがあるのだが、その結果は無惨なものだった。

 身体の一部であっても突然機能停止してしまえば、大体は死んでしまうのだ。

 死なない場所を停止させるにしても、もともとそんな細かな制御をしていたわけではないので、部位の特定が非常に難しい。

 結局、面倒なだけでたいしてメリットがなく、それ以後は部分殺しを使用していなかった。


「いや、その、あまり便利にしなくていいと思うのですけどね」


 そう言う諒子の顔は引きつっていた。

 彼女は、とにかく夜霧を恐れている。積極的に能力を使ってもらいたくないのだ。


「剣術でさ、動きながら、特定の部位を狙うって練習は効果があったと思う」

「じゃあそれ以外は部屋でゴロゴロしてたわけ?」

「なんだよ。妙にからんでくるな。そうだな、街に行ったりもしてたよ。食べ歩きしたり」

「なに一人で異世界をのんびり堪能してんの……」


 もう、夜霧の能力で魔界を全滅させろよ、と知千佳は言いたくなっていた。

 だが、夜霧は基本的に身を守るためにしか能力を使おうとはしない。それに、そのやり方で賢者が出てくるかはわからないのだ。賢者の意向に沿った形で事を進めるしかないのだろう。


「ああ、二人で異世界の街をデートしたいと?」

「キャロルはなんで、そういう風に話を持っていきたいかな……」


 してみたいと思わなくもないが、焚き付けられてするのも知千佳としてはなんとなくいやだった。


「あ、そういや街に出た時にさ、狙われてるみたいだった」

「え? どういうこと?」

「だから、殺意を感じたんだよ」

「みたいって、はっきりしないの?」

「うん。かなり遠くから狙ってたみたいだ」

「それは、どういうことなんだろ? 通り魔的なものなの?」


 だとしたら不運なことだ。最悪な相手を犠牲者に選び、自分が犠牲者になったことになる。


「いや、俺をつけ狙ってるみたいだったな。ここ何日か街に出る度に狙われてたから」

「ちょっ! それってヤバイんじゃないの?」

「まあ、ヤバイのはヤバイけど、実害はないし」

「どっかの悪人が死んでるんだけど!?」


 夜霧はのんきなものだが、さすがにそこまで死を軽く考えるのはどうかと知千佳は思ってしまう。


「悪人ならいいんじゃないの?」

「ええ、高遠くんに手を出してくる悪人は死ねばいいと思います」


 だが、キャロルと諒子は悪人の生死などどうでもいいようだった。


「まあ、悪人が死ぬのはともかく、続いてるなら首謀者みたいなのは死んでないってことかな?」


 基本的に殺そうとした相手に対して夜霧は反撃する。死ぬのは実行犯のみなので、依頼者のような者がいるのなら次々に刺客を送り込んできているということなのだろう。


「だからさ、ちょっと手伝って欲しいんだよ」


 そういうことなので、知千佳は翌日、夜霧と出かけることになった。

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