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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
2章 ACT1

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第2話 殺虫剤のCMにでも使えそうな光景

 ガルラ峡谷。

 蛇行し、枝分かれするガルラ川を中心に、入り組んだ崖と谷で構成されている地形だ。

 そこら中で赤茶けた岩肌が剥き出しになっており、そこには無数に重なった地層を見ることができる。

 その過酷な環境故にか、この地を訪れる者はほとんどいない。王都とハナブサを繋ぐ路線が開通するまでは、注目されることもなかった土地だ。今でもその一部分を汽車が通過するだけであり、その全貌は知られていない。

 過去にはこの地域を根城とした民族がいたらしく、その名残なのか道らしきものはある。

 鉄道の敷設時に最低限の整備はされており、ハナブサの領主であるリョウタは峡谷を通って王都に向かうことは可能であると夜霧たちに伝えていた。


「また行き止まりだね……」


 もう何度目なのか、装甲車の運転席で知千佳が溜め息をついた。

 崖際の道は途切れていた。橋の残骸があるので道は正しかったようだが、だからといってなんの慰めにもならない。


「ねえ。俺たちなんで王都に行かなきゃならないんだろう?」


 ぼやくように言うのは助手席に座っている少年、高遠夜霧だった。

夜霧は相変わらず制服姿だが、これは着替えるたびに服を選ぶのが面倒だと思っているからだ。車の中には男物の服も多数用意されているのだが、夜霧は下着とシャツを替えるぐらいしかしていなかった。


「今さら!? その疑問が本気だったとしても、出発前に言ってくれないかな!」


 この状況に飽きてきた夜霧がぼやくように言うと、知千佳がキレ気味に返した。


「一度状況を整理しなおした方がいいかもね。ここを通ることが目的じゃないだろ?」

「そりゃそうだけどさ。リョウタさんも問題なさそうに言ってたじゃん!」

「鉄道ができてから道は使ってないだろうし、現状はよく知らなかったんだろ」


 この地域に鉄道が敷設されたのはかなり前のことだ。当時使えた道が今は使えなくなっていても不思議ではない。


「俺たちの目標は日本に帰ることで、そのためには賢者と接触する必要がある。それにはクラスメイトとともに行動するのがてっとり早そうだってことだったんだけど、賢者の方から俺らのとこにやってきてないか?」

「え? だったら街でのほほんとしてればよかったってこと?」

「それも一案かな、と思ったんだけど、あいつら何考えてんのかわかんないからなぁ。いきなりやってきて襲いかかってくるんじゃろくに話もできないし」


 そして、反撃すると相手は必ず死んでしまうのだ。襲われるのを待つのは得策ではないだろう。


「それにあいつら、街の人間のことなんとも思ってないだろ? 俺はいいけど、壇ノ浦さんは嫌なんじゃないの?」

「だよね……」


 街の惨状を思い出したのだろう。知千佳は浮かない顔になった。


「ま、その点ではシオンって賢者なら話はできるのかなとは思うけどね。俺たちはそいつに喚ばれた賢者候補なわけだし」


 夜霧たちをこの世界に喚んだのはシオンという女で、彼女は夜霧たちに賢者になるようにと言ったのだ。

 賢者になるには彼女の課したミッションをクリアしていく必要があるので、その過程でいずれは会えるだろう。その際に元の世界に戻るための情報を入手できるかもしれない。夜霧たちの計画はその程度でしかなかった。

 もちろん、夜霧たちもこの計画に全てをかけてはいない。他の賢者よりは話ができる可能性が高いと思っているだけだ。シオンに話を聞けないなら、また別の方策を考える必要があるだろう。


『少し先を見てきたが、この先に行けたとしても、行き止まりだな』


 そう言うのは知千佳の守護霊、壇ノ浦もこもこだった。

 霊体であるため、地形に左右されずに移動することができる。偵察に出かけていたのだが、結果は芳しいものではなかったようだ。


「このままじゃ辿り着ける気がしない……あ! ねえ! 確実に王都まで行ける方法があるじゃない!」

「それって、もしかして、レールの上を走るってこと? 汽車がきたら詰むね」


 凄いことを思い付いたと言わんばかりの知千佳が見ているのは、鉄橋だった。


「うっ……でも、今のところ走ってる気配なんかないじゃない! 街があんなことになってたら汽車はまだこないと思うけど」

「なるほど。で、万が一やってきたら、俺は身を守るために汽車を殺すと。どんな結果になるかはわかんないけど、あまり愉快なことにはならないだろうな」

「わかりましたよ! とりあえず引き返して別の道を探せばいいんでしょ!」


 知千佳が装甲車をゆっくりと後退させる。

 だが、すぐにゴツンという音がして装甲車は動かなくなった。何かにぶつかったのだ。


「え? 何もないと思うんだけど」


 サイドミラーには何も映っていないし、そもそも障害物があるのならここまでやってくることはできない。

 知千佳は、ドアを開けて背後をのぞき込んだ。そして、すぐに車内に身体を引っ込め、慌ててドアを閉めた。


「な、なんかいた! にょろっとしたのが! 尻尾みたいなのが!」

「なんだろ?」


 夜霧もドアを開けて背後を見る。

 巨大な顔がこちらに向けられていた。爬虫類と鳥類の中間のような顔つきをした生き物で、その瞳は真っ直ぐに夜霧を見つめている。


「ドラゴンだな。バスを襲ってきたのと同じような奴。やっぱり車が好きなのかな?」

「特殊性癖のネタはもういいから! とりあえず()っちゃって!」

「いや、それはどうだろう。ここがドラゴンの巣だとしたら、ずかずかと踏み込んできた俺たちの方が悪いだろ? それを一方的に殺すってのは――」


 途端に装甲車が大きく揺れた。ドラゴンが体当たりをしてきたのだ。

 装甲車なら防御力はあるだろうが、ここは崖沿いの道だ。こんなことを繰り返されては簡単に崖底に落とされてしまうだろう。


「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」

「まあ仕方がないか」


 夜霧はドラゴンを殺した。

 だが、死体はその場に残るため、この場から動けないことには変わりない。

 どうしたものかと夜霧が考えていると、咆哮が峡谷に響き渡った。

 それは合図だったのか、すぐに何かが飛んでやってくる。赤茶けた、岩のような肌をしたそれは、先ほど殺したドラゴンと同種のようだった。


「って、なんかいっぱいきたんだけど!」


 見る間にドラゴンは増え続け、崖側の空にひしめき合うほどになっていった。

 その口は大きく開かれ、口腔内は炎で満たされている。そこから炎の息を吐き出すのだろう。ドラゴンどもは臨戦態勢に入っていた。


「完全にアウェイな感じだな……まあ、話し合いができる相手でもないし」


 夜霧が力を放つ。

 ドラゴンたちは炎を吹き出すこともなく、ぼとぼとと谷底に落ちていった。


「あー、なんか殺虫剤のCMにでも使えそうな光景……」


 全長二十メートルはあろうかという巨大生物が、いっせいに力を失くして墜落していく。それは壮絶な光景だった。

 そして、峡谷は何事もなかったかのような静寂を取り戻した。


「谷底がどうなってるのか考えたくないよね……」

「そんなことより、ここから動けなくなってることが問題だね?」

「後ろのドラゴンをどうにかしなきゃだけど……」

『なに。それならお主の武器を使えばよい。細切れにして捨てるもよし、梃子(てこ)の要領で谷底に落とすもよしだ!』


 知千佳は侵略者(アグレッサー)からもらった武器を服の一部に偽装している。

 その武器は変形自在なので、鋭い刃にすることも、強固な構造材として用いることも可能だった。

 知千佳と夜霧は車を降りた。

 ドラゴンの死体を確認する。崖と死体の間で武器を膨張させれば、吹き飛ばせそうだった。


「あれ? これで橋を作ったりとかもできるんじゃないの?」

『この先はかなりの長さに渡って崩れておる。さすがにそれを補強できるほどのサイズはないな』

「まあ、この武器を使えば行けそうなところもあるかもしれないし……ってまたなんか来たんだけど!」


 空から何かがやってくるのが夜霧にもわかった。

 またもやワイバーン型のドラゴンだ。

 だがそれは、これまで見たドラゴンとは一線を画していた。


「ゴールデンサンダードラゴンみたいなの来たー!」


 そのドラゴンは黄金に輝いていたのだ。

 稲光をまとったその姿は、神々しさすら醸し出していた。

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