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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
7章 ACT2

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第16話 新たな四天王として採用したのがこいつってわけだ

 深夜、三田寺重人は九嶋玲がいる屋敷への侵入に成功した。

 花川のおかげだった。

 花川が帝国幹部の屋敷に入り浸るようになり部分的に警戒は厳重になったのだが、玲が監禁されている建物の警備は手薄になったのだ。

 警備兵たちは、幹部の部屋を重点的に守っていた。

 玲の屋敷などどうでもよくなっていたのだ。


「いや……ここまで計画どおりにいくとはすごいな」

『いくつかあるプランのうちの一つですけどね』


 こっそりと侵入しているのだから、ナビーもわざわざ人型になって顕現する必要はない。

 冊子状になって重人の懐に入っていた。

 ナビーの情報があれば、侵入経路も問題ないし、警備の巡回ルートもわかる。ここまではさほどの苦労もなかった。


『次の警備兵が通り過ぎたら、反対側の階段を上って二階へ』

「OK」


 物陰に隠れていた重人は、ナビーの指示に従い二階へと上りきった。

 玲は二階の奥の部屋にいるはずだった。

 そこに閉じ込められているらしい。


『部屋は施錠されていますので、まずは鍵を入手しましょう』


 鍵はメイドの控え室に置いてあった。

 食事などを運び入れるのに必要なのだろう。


「……鍵がかかってるぐらい、玲ならどうにでもなるんじゃないのか?」


 玲の能力、運命の(ファムファタル)は男を籠絡するものだが、レベルアップしたのか女であるレナにもある程度は通用した。

 その力を使えば、メイドなどを支配下に置き簡単に脱出できるのではと重人は思ったのだ。


『基本的には異性に対する能力ですからね。現状の能力の規模、詳細がわからないためなんともいえません』

「動けない状態にされてるってことは?」

『その可能性はあります。その場合は抱えて移動することになりますが、その際のルートも検討済みです』


 重人は、奥の部屋へと辿り着いた。

 巡回の隙をついているので警備兵はいない。それに、それほど本気で警備しているわけでもないのだろう。

 鍵を差しこみ解錠しようとする。だが、鍵はかかっていなかった。


「ここにはいないのか?」


 どこかへ連れ出されているのなら、鍵をかけておく必要はないだろう。

 だが、扉の隙間からは明かりが漏れていた。

 中に誰かがいる可能性は高い。


「玲じゃない奴がいる可能性は?」

『確かなのは、ここに玲さんがいたことがあるということだけです。オラクルマスターはリアルタイムで全てを知る能力ではありませんので』


 オラクルマスターは目的に対して、完全な回答を返す能力ではない。

 使用した時点での未来の可能性を予見し、ありえる可能性とその対処方法を提示するにすぎなかった。


「でも、想定される可能性は検討したわけなんだよな?」

『はい。ここにいなければ、別の部屋ですが、その場合は一度撤退しましょう。今から別ルートでの探索は難易度が高いです』

「ま、なんにしろ開けてみなけりゃ始まらないわけだ」


 ここまで来て怖じ気づくわけにもいかない。

 重人は扉を開けた。


「こんな時間に誰?」


 玲は、ベッドに腰掛けて本を読んでいた。

 そうひどい扱いを受けているわけではなさそうで、重人は安心した。


「俺だ。助けにきた!」

「ああ、そういえば軽い支配は継続したままだったかしら?」


 重人は違和感を覚えた。

 助けにきたというのに、久々の再会だというのにあまりにも手応えが薄い。

 まるで重人などどうでもいいと言わんばかりの態度なのだ。


「脱出経路も考えてある。お前はついてくればいい」

「私は、別に捕まってるってわけでもないんだけど」

「何を言って――」


 途端に心臓が早鐘を打つようになり、呼吸も荒くなる。眩暈がし、重人はしゃがみ込んだ。

 わけがわからないまま玲を見上げる。

 玲が、輝いて見えた。普段から美しいと思っていたが、ますます愛おしいと思えるようになっていた。


「そんな……こんな未来はどこにもなかったはずです!」


 ナビーが実体化していた。

 重人の身体を掴み、部屋の外へと引きずり出そうとしている。


「可愛らしいお友達ができたんだ。重人も覚醒したってこと?」

「ということはあなたも……」

「したみたいだね。覚醒」


 それにより玲の能力がどのように変化したのかはわからない。だが、ナビーは玲の覚醒を予見できてはおらず、この展開に狼狽しているようだった。


「ちょっと待て……俺はお前を助けにきたんだぞ……なぜ俺を……」

「連れ出されるのは困るの。けど説得するのも面倒だから」

「……なんでだよ……賢者の手下に付いていったのは、俺を……」


 助けてくれたのだと重人は思っていた。

 だからこそ、今度は自分が助ける番だと思っていたのだ。


「え? あのままだと私が殺されそうだったからなんとかしようと思っただけだけど。ずいぶんと都合のいいように考えるんだね。けど、私を好きになるとそうなっちゃうのかな?」


 重人の思考は混濁し、玲のこと以外は何も考えられなくなっていった。


  *****


 花川は白い空間の中にいた。


「またもや夢でござるか。ということは、またもや美少女化しているのでござるかね?」


 美少女化は一時的なものだった。

 少しばかり残念ではあったが、普段からあの格好では花川だと認識してもらえない。

 当然、道化としての地位も失ってしまうわけで、発見され次第殺されてしまうだろう。


「夢なら鏡ぐらい出てくれても……お、出たでござる」


 前回と同様の美少女化だった。


「で、拙者は……うむ。この喋り方でいいのでござろうか……それはともかくとして、マルナリルナ様のおっしゃっていたことが本当なら、何者やらへのアドバイスのために呼ばれたということでござるが……」


 あたりを見まわす。

 どこまでも白い空間が続いているが、遠くに黒い点が見えた。そこに何かがいるらしい。


「夢なら飛んだりも……お、できるのですな」


 身体がふわりと浮き、何かがいるほうへと飛んでいく。

 学ラン姿の少年が立っていた。

 年齢は花川とそう変わらないだろう。


「ふむ。いかにも陰キャという感じでござるな。現実逃避して異世界転生ラノベとか好き好んで読んでいるような奴に見えるでござるよ」

「お! 女神か! あんた女神だな! 異世界転生か! そうだろ!」

「まったく……この手の輩はクラスメイトにはおどおどしておるくせに、初対面の奴には偉そうにできるのでござるよね……」

「何か言った?」

「いえ、何も? えーと拙者……じゃなくて、妾は神の使いでござ……なのですわ! おほほほほ!」

「おお! で、転移前にこーゆーワンクッションあるってことは、なんか特典くれるって流れなんだろ!」

「そ、そうですわね!」


 ――うーむ。キャラがさだまらんでござるが……今後会うこともないでしょうし、適当でいいでござるか。さて、能力のアドバイスなどをしろということでしたが……。


『説明とかは全部任せるね!』


 何をすればいいのかと考えていると、マルナリルナの声が聞こえた。

 同時に能力付与についても詳細が伝わってくる。


「ええ! 転生特典として能力を与えますけれど、いろいろと条件があるんですの! あなたはタカトーヨギリという極悪人を退治するために転移するのですわ! 当然、タカトーヨギリと戦わなければ力を失うのです!」

「魔王を倒すために呼ばれたってとこか。定番だな!」

「能力は、あなたに選んでもらえますが、タカトーヨギリは敵を即死させる力を持ってますので、そのあたりを考慮して選んでいただく必要がありますのよ!」

「ほう。どんな能力があるんだ?」

「えーと、それは――」


 能力を選択できるといっても、どこまでの能力を選べるのか。

 たとえば、マルナリルナを超える力を与えることは不可能だろう。当然制限はあるはずだ。


『あ、そのあたり説明してなかったね。いくら私たちがすっごい神様だって言っても、どの程度の力を与えられるかは、相手次第なんだよね』

『だいたいは、運命値に比例するって考えたらOK!』

『運命値ですか……そういや、賢者のアオイ殿もそんなことを言ってましたな。で、この人の運命値やいかに?』

『しょぼい』

『なんの変哲もない』

『けど、変な死に方してるから、ちょっとボーナスが付くね!』

『ははぁ……転生モノで変な死に方をする奴らが多いのにも理由があるのですな……』

「――というわけで、スキルポイント千以下で選んでいただけるのですのよ! こちらがスキルリストですわ!」


 花川は、お前がしょぼいのでたいした能力は得られないとは言わず、ざっくりと説明した。


「ですので、タカトーヨギリに勝てそうなのを考えてくださいましね! タカトーヨギリは殺意を感知できて、任意の対象を即死させることができるのでそのあたりをよく考えて……」

「決めたよ。全ステータス一万倍だ! あれこれややこしいのより、こーゆー単純なやつのほうが使い勝手がいいに決まってる。もちろん、一万倍なんて使いこなせない、みたいなオチはないよな?」


 訊かれるとスキルの詳細が脳裏に浮かんできた。

 急に一万倍の速度で動けるようになったとすれば普通は制御できるものではないが、そのあたりは思考速度や反射速度なども一万倍になっていてうまくやれるようになっているらしい。


「それは大丈夫ですわ。ですけど妾の話を聞いてました? タカトーヨギリはそんな程度では……」

「一万倍の速度で動いて、一万倍のパンチでも喰らわせればいいんだろ?」

「……ですわね!」


 こいつは人の話を聞かない。そう思った花川は、話を切り上げることにした。

 どうせ他人事であり、この少年がどうなろうと花川には何の影響もない。


「で、俺は赤ん坊からやりなおすのか?」

「えーと……それだとタカトーヨギリと戦うのがずいぶん先になってしまいますので……どこかから現れた謎の人物として、異世界に出現することになりますけどそれでよろしいかしら?」


 マルナリルナからの説明をそのまま花川は伝えた。転生とはいいながらも、ほぼ転移のようなものらしい。転移と違うのは、元の世界では死んでしまっているので異世界用に新たに身体が用意されることだろう。


「赤ん坊からとかめんどくさいし、それでいいや」


 少年の了承は得られたので、神の使徒に関するルールを一通り説明して異世界へと送り出した。


「こんな感じでござるかね? ですが、本人に選ばせてもあれではどうしようもないかと思うのでござるが。マルナリルナ様が考えたほうがましだったのでは?」

『今のはお試しね!』

『次からはもっとすごい人くると思うから、能力の選択肢も増えると思うよ!』

「これ、話聞いてくれる人が来るんでござるかね……」


 アドバイスをする意味などあるのだろうかと、花川は考えた。


  *****


『全ステータス一万倍の能力が、タカトーヨギリに敗れました』


  *****


「つーわけで、新たな四天王として採用したのがこいつってわけだ」


 花川は、冷や汗をかいていた。

 皇帝の謁見室。そこに、三田寺重人と九嶋玲がいたからだ。

 皇帝であるヨシフミが玉座に座り、その隣に花川がいる。

 一段下がった床には、レナ、ルナ、アビー。そして新たに四天王になった玲とその手下として重人が跪いていた。


 ――えーっと、拙者裏切り者扱いされたりとか……。


 重人とこっそり出会い、一応は協力態勢にあったのだ。その点を指摘されれば立場は危うかった。


「ヨシフミが決めたことだからさ。異論はないけど、役に立つの、こいつ?」


 ルナが訝しげに訊いた。十分に異論はありそうだった。


「とりあえずは数合わせだな。ま、最低限の力は持ってやがるしいいだろ。でだ、レイの手下のシゲトだが、こいつの能力が預言書(オラクルマスター)でよ。なんで俺様がいるとわかってる島にわざわざやってきたのか訊いてみたら面白いことがわかった」


 ――この流れは……特に拙者がどうのこうのという話ではないでござるよね?


「賢者を倒す方法があるんだとよ」

「うそ……!」


 レナ、ルナ、アビーがあからさまに驚いていた。


「賢者も無敵じゃねぇからな。たまに侵略者(アグレッサー)にやられたりはするんだが。こいつの話によると、そーゆー不確定な話でもねぇらしい。それさえありゃほぼ確実に賢者に勝てるって方法だ」

「それはいったい……」

「アビー。お前の仕事にもちょっと関わりがある。王族の奴らだ。あいつら、エルフの森に向かってるんだってな」

「ええ。冒険者を差し向けてるけど……まさかそこに?」

「東側に来るにしても、わざわざエルフの森を通る必要はねぇはずだ。だがあえてエルフの森に行くのは、あいつらもそれが目的だってことだ」

「ははぁ。それが世界剣オメガブレイドということでござるか?」

「ん? 知ってやがったのか?」

「以前に三田寺殿に聞いたことがありまして」

「ああ、お前、元々レイたちと一緒にいたんだったな。まあそれで、だ。その剣があれば賢者を倒せるらしーんだわ。無敵の俺様をどうにかできるってなると半信半疑ではあるんだが、放っておくのもまずいと思ってな。俺様自ら出向くことにしたぜ」

「それぐらいのことでヨシフミが出張らなくても、レナとかに行かせればいいんじゃないの?」


 ルナが言う。

 ルナには都市の制御の、アビーには冒険者システムに関しての仕事がある。

 比較的自由に動けるのがレナだからとのことらしい。


「賢者を倒せるかもしれねぇ剣とかおもしれぇじゃねぇか」


 ヨシフミが帝国を作ったのは退屈しのぎのためとのことだった。

 王家の者たちを見逃したのも何かしてくれないかと思ってのことらしいし、冒険者システムを作ったのも西エントを冷遇するのも、全て暇潰しとのことだった。

 なので、賢者を倒せる剣などがもしあるのであれば、よい刺激になるとでも思っているのだろう。


「行ってみりゃたいしたことはなかった、ってオチになりそうな気もするけどな。レナとレイとシゲトとハナカワはついてこい」

「拙者もでござるか!? 役に立てるとは思えんのですが!」

「お前も俺の暇潰しの一つだ。せいぜい俺を楽しませろ」

「ううう……いや、でもエルフの森ですからな! それはもう麗しきエルフがよりどりみどりだったりですね。拙者も皇帝の臣下の一人なわけですから、エルフの一人や二人を傅かせることができるやも……」


 花川は、様々な嫌な予感を心の奥に押し込めて、前向きに考えることにした。

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