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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
6章 ACT2

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第21話 やっぱ、自爆してくんないかな!

 封印解除状態の知千佳は、何の前触れもなく瞬時に戦闘に移行することができる。

 壇ノ浦は、その長い歴史の中で身体だけでなく、心まで戦闘のために作り替えていた。

 談笑していた相手を次の瞬間に一撃の下に倒す。それができるのが壇ノ浦の精神性だ。

 少しばかり戦える者は常在戦場などと豪語するが、真の意味でそれを為せる者などそうはいない。

 ただ話していただけの相手が、いきなり襲いかかってくるなど想定できるものではなく、たいていは為す術もなく倒れるだけだ。

 カットラスを持っていた海賊は、攻撃されたことに気づきすらしなかっただろう。

 顎を打ち抜かれて脳が揺れ、心臓を打たれて心臓震盪が起こる。それらの急所はただ強く打てばいいというものではなく、最適な力加減が存在するが、壇ノ浦はそれを導き出していた。

 それだけで人を昏倒させるには十分だが、知千佳は駄目押しで股間まで攻撃している。壇ノ浦は何者を相手にするつもりなのか、過剰なまでの殺傷力を技に求めていた。

 海賊風の男が倒れていく最中、知千佳は次の標的を定める。

 直近にいるのは、あと二人。眼鏡の初老の男と、革鎧を着た無骨な男だ。

 知千佳は倒れていく男を軽く押し、革鎧の男に押しつけた。

 海賊風の男がもたれかかり、革鎧の男はそれを両手で抱える。背後に回り込んだ知千佳は、その後頭部を掌で打った。

 二人の男はもつれあったまま倒れたが、知千佳は念のために、革鎧の男の顔面を踏みつける。

 初老の男は戦闘要員ではないのか、知千佳の突然の凶行にまるで反応できていなかった。

 悲鳴をあげようとしたので、手刀で喉をついた。初老の男も悶絶し、倒れた。

 一度戦いを始めたのなら、その最中に手加減など考えてはならない。たいていの武術ではそう教えるし、壇ノ浦流でもそれは同じだ。


「ふむ。こうなってはもう、強行突破するしかないな」

「もこもこさんは戦えないの!?」


 二人でなら戦いの幅は広がる。脱出もしやすくなるだろうと思い、知千佳は訊いた。


「うむ。我の場合、ラジコンを操縦しておるようなものでな。この身体ではうまく戦えぬ」

「やっぱ、自爆してくんないかな!」


 悲鳴を阻止したので本格的に気付かれるまでには多少の余裕がある。

 知千佳はラウンジの中ほどにいた。ここから見て出入り口は前方と後方の二カ所だ。

 知千佳は手近な椅子を前方へと投げつけ、すぐに振り向いて後方へと駆けた。

 今は全てのギフトが無効化されているらしいので、魔法の類が飛んでくることはない。

 ならば、椅子を投げつけることで、飛び道具の射線を一瞬は妨害できるだろう。

 後方の出口にいるのは二人。

 知千佳は走りながら、周りにあるものを投げつけた。

 コップや灰皿。椅子にテーブル。触れただけで瞬時に重心を把握し、飛び道具として扱うのは、壇ノ浦弓術の基本技能だ。

 転がるテーブルと共に出入り口に接近し、顔面を押さえてうずくまる男の手の上から膝蹴りを食らわせた。

 そのままの勢いで扉を開き、廊下へと出る。


「こっちだ!」


 声のしたほうを見ると、見覚えのある少年が立っていた。

 港で出会った少年、勇者ホーネットだ。

 助けようとしてくれているらしい。

 だが、知千佳はホーネットがいない側へと走りだした。

 親切にしてくれているだけかもしれないが、違和感を覚えたのだ。

 港で出会った時とは、どこか違う雰囲気をまとっている。

 夜霧から聞いた、何かに操られている人がいるという話も脳裏をよぎった。

 つまり、信用できない。近づくべきではないと判断したのだ。


「うむ。なんだかんだお主もモテムーブとはほど遠いの。ここはイケメンに助けを求めて飛び込むところではないのか?」


 ついてきているもこもこが言う。


「そうしたほうがよかったって、本当に思う?」

「思わんが!」

「なら言うな!」

『宿泊棟の一階までは下りてきた』

「そっちに向かうから!」


 知千佳は夜霧の声に応え、宿泊棟へと向かうことにした。


  *****


 少し時間は遡る。

 ホーネットたちの部屋で、イゼルダが母親の魔力を吸い尽くした直後のことだ。

 イゼルダは逃げた男の気配を探ったが、何も感じ取ることはできなかった。


「ふむ。それほど遠くへは行けないはずだが」


 だが、あれほど多彩な技を使いこなしているのだ。当然、隠形に関する技も併せ持っているのだろうとイゼルダは考える。

 しかし、だからといってみすみす見逃すわけにはいかなかった。

 この肉体での活動には限界がある。停止してしまう前になんらかの成果は欲しいところだ。

 イゼルダは蟲を使うことにした。

 先ほど、自らの左腕を変化させて作りだした、分身ともいえる存在だ。

 左腕は再生させたが、蟲はあたりに漂っている。これを周囲にばらまけばいい。

 これにより周囲を探索することもできるし、あたりにいる者に寄生させれば操れる者もいる。

 イゼルダの子孫は数多く、この船にも血を引く者がいることだろう。それはイゼルダの一部であり、蟲で活性化させればある程度はイゼルダとしての活動が可能になるのだ。

 イゼルダの分身は世界中にいる。それは、強者としての自分を生み出すための仕掛けであり、万が一のための安全対策だ。

 主たるイゼルダが滅びようと、いずれはどこかから別のイゼルダが現れて目的を遂行する。

 ある意味、イゼルダは不滅なのだ。

 だが、そうは言っても、今の自分がただ滅びるのを座して待っているわけにもいかない。

 イゼルダは、活性化した他のイゼルダに魔力集めをさせることにした。魔力があれば活動時間を延ばすことができるからだ。

 活性化し、イゼルダになったばかりでは複雑な思考はできないだろう。そこで無差別に人を襲い魔力を吸い取るようにと指示を出す。その程度なら何も考えずともできることだろう。

 ふと窓の外を見ると、触手が船に巻き付いていた。

 先ほど、謎の男と戦う前に船が揺れたが、これが原因のようだ。


「ほう。確か古代遺物にこんなものがあったはずだが」


 イゼルダ自身が太古の亡霊のような存在だが、イゼルダの本体が生きていたころから古代の遺物とされる物が存在していた。

 魔導の研究で関わった中で、似たようなものを見たことがあったのだ。

 その際は起動させることはできなかったが、古代遺物を目覚めさせた者がいるらしい。

 イゼルダは気配を探った。

 先ほどの男の存在はまったく感知できないが、それ以外特に問題はない。

 遺物の触手から階段が伸び、人が下りてきた。

 そして各所で制圧行動を開始する。

 船を護衛する者たちは何の役にも立っていなかった。

 システムによるギフトが機能していないのだ。ギフト頼りの者たちは、ただの武力の前に為す術もなかったらしい。


「なんと……なんと都合のいいことか」


 イゼルダは、俄然興味をひかれた。

 不思議なギフトを使いこなす男に、古代遺物に、ギフトの無効化。

 どれか一つでも興味深いというのに、それが立て続けにやってきたのだ。

 少々イゼルダにとって都合がよすぎるとも思えるが、イゼルダの長い人生の中では偶然に偶然が重なることも多々あった。この程度のことは怪しむほどのこともない。

 イゼルダは優先順位を変更した。

 姿を隠した男は蟲たちに探させはするが後回しだ。

 それよりも、確実に接触できる古代遺物とギフトの無効化能力者を優先する。

 海賊らしき者たちは乗客を何カ所かに集めて軟禁し、数人で見張りをしているようだ。

 何名かは操舵室へと向かっていて、その中に能力無効化能力者がいるとイゼルダは判断した。

 イゼルダは部屋の窓から外へと出た。

 イゼルダは、ギフトが世界に蔓延する前から大魔導士と呼ばれていた男だ。

 ギフトが封じられたからといって空を飛ぶ程度のことは造作もない。

 ギフト以外を封じる効果もあるようだったが、イゼルダなら無視できるほどの力だった。

 空を飛び、船体の中ほどにある操舵室へとイゼルダは侵入した。

 男装の女が、船長らしき男を抜き身の剣で脅迫しているところだった。

 カジノの用心棒のデグル。ホーネットの記憶にはそうあった。

 この女が以前から船に入り込んで内情を調査し、海賊の手引きをしたのだろう。


「思ったとおりだな。どことなく面影がある。お前、マニー王国の王族だろう?」


 マニー王国の王族には封印の力がある。

 それにより、王国の地下にある魔界から魔物が這い出てくることを抑えているのだ。

 その力の強弱はそれぞれなのだが、この女は一際強大な力を持っているらしい。

 それは、船全体を覆い尽くし、完全に封じ込めるほどのものだ。


「それほどの力を持っているのなら、望まずとも王位は転がり込んでくると思うのだが、はて。なぜこんな所で海賊などをやっている?」

「なん何だ、てめぇ?」


 デグルが凄み、イゼルダを睨み付ける。

 その力はさらに強力になり、イゼルダから漏れ出る魔力が霧散した。

 イゼルダ本来の力を封じ込めるほどではないが、それでもこれはたいしたものだろう。

 イゼルダがこれまでに見てきた封印系能力の中でも最高峰に位置すると思われた。


「これは凄いな。是非とも研究させてもらいたいものだ」


 マニー王国は大魔導士イグレイシアのテリトリーだったため手を出さなかった。

 だが、こんな所で海賊をやっているのなら、返り討ちにしようが、捕らえて研究しようが、子を産ませようが、問題にはならないだろう。


「王国がどう関係あるってんだ。てめぇ、クソ野郎の差し金か?」


 デグルは、船長に向けていた剣をイゼルダに向けた。


「ふむ。威勢はよろしいが、戦いにもならんよ」


 途端にデグルは崩れ落ちた。

 蟲を体内に侵入させ、麻痺させたのだ。


「ふむ。少しばかりやりすぎたか」


 デグルは気を失っていた。調整を誤ったらしい。だが死んではいないので、そのうちに目を覚ますことだろう。


「さて。マニー王族は入手できた。古代遺物については後でこやつに吐かせれば問題なかろう。あとはあの男か……いや、それよりもあの面白い身体の女を確保しておくか」


 海賊どもの所にあの少女を放置しておいては何をされるかわかったものではない。

 客観的に見てあの少女は男を惹きつける身体の持ち主だ。海賊どもの嗜虐心を煽り、い行きすぎた陵辱の果てに殺される恐れもあるだろう。

 少女には子を産ませる必要があり、ここで死なせるわけにはいかない。

 イゼルダは、乗客が軟禁されているラウンジへと向かうことにした。

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