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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
6章 ACT1

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第9話 そんな少女漫画みたいなこと言われましても

 ヨシフミと取り巻きの女二人が悠々と冒険者ギルド兼酒場を出ていく。

 花川もその後をそっとついてでた。

 残っていたのは花川たちで最後だ。蠢いたり石になったりする場所に客が居続けるわけもなく、早々に逃げ出していた。

 当然、外は騒ぎになっていた。

 振り向けば、巨大な獣の彫像が地面から飛び出しているように見えた。酒場の成れの果てだ。

 そして、騒ぎは酒場だけではなく、周囲でも発生していた。

 虎、狼、熊、猪、鶏。

 巨大な獣たちが、町中で暴れているのだ。

 それらに、明確な意志は感じられない。手当たり次第に建物を破壊し、人を喰らっている。

 なんらかの制御がなされているようには見えなかった。


「おいおい、ひっでぇことになってんなぁ」


 ヨシフミが町の惨状を見て、楽しげに言う。

 ここは、ヨシフミが治める帝国の帝都だというのに、たいして気にしてはいないようだった。


 ――注目されていない今の内に、さりげなくフェードアウト! これでござるよ! そして、ようやく自由になった拙者はやっと異世界ハーレムを構築できるという寸法でござる!


 だが、それにはこの場から離れるだけでなく、帝国から逃げ出す必要もあるだろう。

 できるだけ賢者の息のかかっていない、花川が程良く活躍できる程度の場所を探す必要があるのだ。

 花川は少しずつ後ずさりはじめた。

 あわてて逃げだすような素振りは見せず、何気なく距離をとる。


「レナは何やってんだよ。やられっぱなしじゃねーか」

「レナには『先回り』があるから、追いついてるはずだけどぉ」


 取り巻きの一人、小柄な女が言った。


「この状況をどうすんの?」


 長身の女が尋ねた。


「俺よぉ。こーゆーぐっちゃぐちゃしたの見るの、大きれぇなんだよなー。我慢ならねーんだわ」

「んー、被害は、三層の南西ブロックに限定されてるねぇ。外には出てないみたぃ」


 帝都は巨大であり、いくつもの地区に分割されている。

 ここは帝都外縁部の南西側にある地区で、各地区はそれぞれ城壁により隔てられていた。


「じゃあここだけ片付けろ」

「はーい」


 小柄な女が軽い返事を返す。

 花川は、嫌な予感がした。

 この女が何かをする。

 それは、彰伸が作り出した獣たちに対する攻撃であろうし、先ほどの会話からすると無差別なものではないか。

 距離を取ろうとしていた花川は、再びヨシフミたちに近づいた。

 安全な場所があるとするなら、彼らの側だと判断したのだ。


 ――とりあえず、え? 仲間ですけど何か? みたいな感じでいくでござる!


 花川はさりげなく、ヨシフミたちの側に立つことにした。

 近すぎて鬱陶しいと思われるのも困るので、なんとなく仲間面していられるようなギリギリの距離を保つ。

 先ほどの、怯えて縮こまる雑魚は大好きだ、という言葉を最大限好意的に解釈すれば、仲間としてここにいてもいいのではと花川は考えたのだ。

 花川の行動は、正しかった。

 確かに、ヨシフミたちの周囲数メートルの範囲には何事も起こらなかったのだ。


「はい?」


 一瞬の出来事だった。

 何もかもがなくなっていた。

 あるのは、この地区を囲む壁だけであり、他には何もないのだ。

 暴れていた獣たちも、町を行く人々も、立ち並ぶ建物群も。

 全てが音もなく消え去り、花川たちの周囲は広大な空き地になっていた。


 ――やばいやばいやばい! 何なんでござるかこれ! おかしいでござるよ!


 ただ、消えている。

 綺麗さっぱりなくなっていた。

 この地区だけでも数千人はいたことだろう。

 それが消えたとはどういうことなのか。花川はそこから先を考えるのをやめた。

 考えても、ろくな結論にはならないだろうと思ったのだ。


「ちょっと! いきなり『リセット』かまさないでもらえる!?」


 背後から怒りを含んだ声が聞こえ、花川は振り向いた。

 重人たちを追って出ていったレナと、九嶋玲がそこに立っていた。

 つい先ほどまでこの二人はいなかったはずなのに、当たり前のようにそこにいるのだ。


「レナちゃんの中ボスっぽい能力で、先回りするとか、背後に現れるとかあるから大丈夫かなぁって!」


 ――それはメリーさんみたいなやつでござるかね? あなたの後ろにいるの、みたいな?


 花川は有名な都市伝説のことを思い出していた。


「メリーさんって誰?」


 唐突にレナが尋ねてきて、花川はあっけにとられた。

 まさか、いきなり話しかけられるとは思っていなかったのだ。

 そして、花川は注目の的になっていた。


「そーいや、こいつ何なの?」

「いつのまにかいるねぇ。これ消さなくてもよかったんだっけ?」

「い、命ばかりはお助けをおぉ!」


 花川は再び土下座を敢行した。

 彼らに積極的に花川を殺すべき理由はないはずだ。

 ならばとにかく下手に出て、彼らが興味をなくすのを待つ。

 彼らもこんな何もないところにいつまでも突っ立ってはいないだろう。

 そのうち、どこかに行くはずだと花川は期待した。


「……こいつ、この場でうんちしたら、嫌がってどっか行かないかな、とか考えてる気がする」

「なぜに!」


 レナがまるで心を読んだかのように言った。

 花川は、以前の成功体験にすがろうとしたのだ。


「なんとなくそー思っただけ」

「いやいやいや、そんなピンポイントで思うわけないでござろう! 心読んでますよね?」

「まずいなぁ。心を読まれるなら下手なこと考えられない。おっぱい。って考えてる気がする」

「ちくしょう! もっと美少女に言わせてみたいあれこれを考えてみたのに、それはスルーされたでござるよ! いったいどうすれば!」

「じゃあ、うんちしてみたら?」


 小柄な女が無邪気に言う。


「したら助けてもらえるのでござるかね? でしたらいくらでもするのでござるが?」

「ううん。うんちごと消すけどぉ」

「ですよねぇ!」


 ――ああ、心を読まれるというならどうしろというのでござるか!? いっそのこと聞くに堪えないようなことを考えまくるとかどうですかね? ってそれ、鬱陶しいから殺されるだけな気がするのでござる! といいますか、今こんな風に考えてるってだけで、もう殺したほうがいいと思われるような!


 無だ。

 もう無になるしかない。

 石のようになり、無反応を貫けば興味をなくして立ち去るかもしれない。

 そう思いながら、花川は顔を伏せ、地面に額をこすりつける。

 彼らは、重人たちの能力を看破していた。

 鑑定系のスキルを使えるのだろう。

 ならば、花川にたいした力がないこともわかっているはずだ。

 つまり、花川に脅威はなく、ここで見逃しても問題ないとわかっているはずだった。


「面白いな、お前」

「いや、そんな少女漫画みたいなこと言われましても……ひいぃいいい! すみませんでござるぅ!」


 つい反応してしまったが、それはヨシフミの言葉だった。


「見たことねぇタイプだなぁ。道化として飼ってやるぜぇ。ついてこいよぉ」

「その、拙者のようなうんこ製造機など賢者様に飼っていただく価値もないといいますか、飼育困難なほうですので、できれば自然に帰したほうが、皆が幸せになるかと思うのですが……いえ、行きます! 行かせていただきます!」


 ヨシフミはにやついているだけだったが、周囲の反応は違った。

 手下どもの視線に、花川は背筋の凍るような恐怖を感じたのだ。

 ヨシフミの命に逆らうことは許さない。そう言わんばかりの圧力に花川は屈した。

 花川には、ヨシフミに従う道しか残されていなかったのだ。

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