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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
6章 ACT1

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第8話 私は遊び人タイプなわけ

 酒場を生物化した直後、重人たちは即座に逃げ出していた。

 口内に何があるかなど、化物と化した酒場の与り知らぬことであるし、器用に味方だけを避けて攻撃することもできないからだ。

 花川を助けようなどという意識はまるでない。

 それは自分たちを裏切ったからではなく、最初からどうでもいい存在だからだ。


 ――慎重に立ち回れ、だと?


 預言書にはそう書かれていた。警告があったのだ。

 だが、こんな些細な記述をどう捉えろというのか。


「なあ、逃げる必要なくね? 賢者がどこにいるかわかんないって話だったろ? 見つけたならここで倒せばさ」


 彰伸は、預言をそれほど重視はしていなかった。

 彼は、重人や玲と違い、攻撃に利用できるスキルを持っている。

 その力で何ができるのかを把握しており、賢者が相手でも勝てると思っているのだ。


「賢者には、下位系統のギフトを無効化する力がある! だから、賢者とは関係のない武器を探してたんだよ!」


 だが、重人は彰伸の力を当てにはしていなかった。しょせんは賢者から与えられた力だ。

 ギフトに頼らず戦力を強化し、賢者を打倒する。

 それができるのは、重人の預言ぐらいのものだろう。

 対峙した状態であれば、預言書の召喚を無効化はできるかもしれないが、賢者がいない場所で読むぶんには何の問題もない。

 預言の内容はただの情報であり、それを無効にはできないからだ。

 重人は、賢者候補でありながら賢者を倒せるのは自分だけだろうと考えていた。

 そのために、賢者の系統ではないラグナを仲間にし、彼のための武器を手に入れようとしていたのだ。


「でも、俺の力は発動できたじゃん? 無効化できるなら、なんでやらないの?」

「それは……」


 それは余裕のあらわれなのか。

 それとも、油断だったのか。

 重人には判断できない。だが、ここで倒せるなどと思い上がってはいなかった。


「なんにしろ、何の準備もなしには無理だ! お前だって、仲間を用意するとか準備はいるだろ!」


 彰伸の力は強力だが、直接敵を攻撃できるものではない。

 創造の力で、攻撃に必要な仲間を作り出す必要がある。


「今やってるよ」

「なに?」


 駆けながら、重人は振り向いた。

 町並みは変貌を遂げていた。

 酒場だけではない。

 周囲の建物も巨大な獣と化していたのだ。


「こんな簡単にできたのか!?」

「イメージさえあれば、触れるのは一瞬でいいね。けど、すごいのを作ろうと思ったら時間がかかるのも確かだ」


 彰伸は逃げながら周囲のものに触れて力を発動していたのだろう。

 これなら賢者を倒せずとも、逃走の時間稼ぎにはなるかもしれない。

 だが、そんな期待はすぐに裏切られた。

 何かにつまずいたのか、彰伸が唐突に前のめりに倒れたのだ。


「おい!」

「馬鹿なの!?」


 玲が短く叫ぶ。

 重人は駆け続けることにした。

 ここで彰伸を気遣って立ち止まっている場合ではないだろう。

 まずは逃げ切るのが先決だ。

 だが、重人と玲は立ち止まることになってしまった。

 二人の前方に女が立っていた。

 目の下に濃い隈のある、露出度の高い不健康そうな女だ。

 重人は、その女を無視できなかったのだ。

 女は、その手に彰伸の頭部を持っていた。

 それを見た瞬間、重人の脳内に様々な思考が巡った。

 彰伸が死んだ。

 あいつは誰だ?

 追ってきた?

 どうやって前に回りこんだ?

 なぜ彰伸が最初に狙われた?

 なぜ一人だけ?

 三人を一度に殺すのも容易いのでは?

 では何か、俺たちを生かしておく理由が?

 それとも能力の使用になんらかの制限が――。


「えーと。何かややこしいこと考えてるかもしれないけど、私がまずこいつを殺したことにたいした意味はないよ?」


 重人は固まった。心を読まれたかと思ったのだ。


「違う違う。なんとなくそーかなっと思っただけ。ま、強いて言うなら、ほっとくとめんどくさいのを先に始末したとは言えるかもしれないけど」


 手下をこれ以上増やされるのも面倒ということだろう。

 だが、町は大混乱に陥っていた。

 巨大な獣どもは、彰伸が死のうと元に戻ったりはしないらしい。

 獣たちは自由になり、それぞれが好きなように暴れているのだ。


「お前は……」

「悪の帝国の幹部にもいろいろいるの。仕事人タイプなら命令を忠実に実行してさっさと帰るんだと思うけど、私は遊び人タイプなわけ」


 直接的ではないが、それが返答なのだろう。

 ヨシフミが皇帝なのだから、女はヨシフミの部下なのだ。


「俺を、彰伸と一緒にするなよ……」


 重人は、瞬時に武装した。

 重厚な鎧で身を固め、いくつものアミュレット、指輪類を重ねて装着する。武器は両手に持つ剣だけではなく、周囲にはいくつもの武器が漂っている。

 これらは、預言書の知識により、仲間にも内緒で手に入れたものだ。

 彰伸はスキルが強大だったため、本人を強化する方向での成長はしなかった。

 だが、重人は違う。

 効率のいい成長方法を実践し、いくつもの強力な武装をかき集めていた。

 この状態であれば、勇者にも匹敵するはずだと重人は思っていた。

 次の瞬間、女の蹴りが重人の腹部に突き刺さっていた。

 幾重にも重ねられた魔法防壁、希少金属を用いて作られた重装鎧を貫いて、女の足は重人の内臓を破壊したのだ。

 吹き飛び、建物に激突し、わけがわからなくなる。

 かろうじて生きていた。

 どの装備に何が付与されているのかまでは覚えていないが、自動回復系の機能が作用しているのだろう。


「さすがの頑丈さだけど、使い手がこれじゃ何の意味もないよね。システム上のレベルだけいくら上げたって、ベースがしょぼいとねぇ。ちゃんと素の状態で鍛えとかないとさ」


 重人は、蹴られる瞬間まで何も感じ取ることができなかった。

 もちろん、敵の動きを察知したり、危機に陥れば主観速度が増加する恩恵が付与されたりする装備を付けている。

 それにもかかわらず、だ。


「へぇ。びっくり。運命の(ファムファタル)って、私にも効くんだ。そーゆー趣味はないのに」


 殺される。

 そう重人が覚悟したところで、女が玲のほうへと向き直った。

 重人から見れば隙だらけだが、素人の感覚などまるであてにならない。何をする気にもなれなかった。


「けどまあ、私を好きなように支配するってところまではいかないね。うん。じゃあ、君は私が飼ってあげるよ」


 玲もレベルが上がることにより、身体能力は向上している。

 だが、戦闘に関する技能はまるで持っていなかった。

 そこらの素人が相手ならどうにでもできるだろうが、こんな化物じみた相手と戦えるような実力はまるでない。

 だが、異性を魅了するその力は、多少なりとも女にも通用し、殺す気をなくすことができるらしい。

 女が玲を連れていずこかへと立ち去っていく。玲は彼女に逆らうことはできないだろう。

 重人は、回復しきっていない苦痛に満ちた身で、二人を見送ることしかできなかった。

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