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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
6章 ACT1

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第5話 ここまでの私らの旅は何だったの!?

 もこもこを救出し、知千佳たちは再び目的地へと向かいはじめた。

 馬には、槐、夜霧、知千佳の順に乗っていて、手綱を握っているのは一番後ろにいる知千佳だ。

 もこもこは槐の制御はやめて、霊体でついてきている。

 槐の制御にかかりっきりになり、後手に回ってしまったことを悔いているのかもしれない。


「てか、この人たち邪魔だな!」


 馬は、裸で倒れている人間の合間を縫って駆けていた。

 あまりにも数が多すぎて、肌色の平原になっている始末だった。

 だが、ふと知千佳は気付いた。

 倒れている人間をただの障害物程度にしか思っていなかったことを。

 あまりに簡単に人が死にすぎて、そのことに慣れてしまっている自分に気付いたのだ。


「……うわ……最低だ、私……」

『うむ? まあ、これが自由意志を持った人の類であったかは疑問ではあるが』

「これは俺がやったことだよ。壇ノ浦さんが気に病む必要はないと思う」

「いや、その、こんなこと言うのもあれなんだけどさ。高遠くんがぽんぽん殺すことを当たり前に思っちゃってるのは駄目なんじゃないかって」

「命を狙われたから、身を守ってるってだけじゃ、駄目なの?」


 駄目なわけはない。

 夜霧がいなければ、知千佳はとうの昔に死んでいただろう。

 それは十分にわかっているし、覚悟は決まっている。

 だが、そう簡単に割り切ってしまっていいものかと、今さらながらに思うのだ。


「そうなんだけど……。でもさ、この機会だからあえて言うんだけど、殺しすぎな気もしない?」

「一応殺す基準はあるんだけどな」

「そのあたり、微妙にわかってないんだけど。殺さないこともあるよね?」

「そうだな。前にも言ったような気はするけど……まず、殺さないと殺されるって場合は即座に対応してる」


 それは知千佳でも同じだろうと思う。

 これでも古流武術家の端くれであり、危機には反射的に、機械的に反応するように修業を積んでいる。

 迷いは、そのまま死につながるからだ。


「殺すつもりまではないとしたら?」

「それでも暴力や盗難で、俺たちを脅かそうとするなら殺すよ。普通はそんなことはしないものなんだ。そんな手段を当たり前にとるような奴を放置しておいたら、のちのちめんどうだ。見逃したって逆恨みするだけだよ」

「うーん、じゃあ、花川くんは? 敵対してたけど、見逃したよね?」

「そうだな。長く話をしすぎたからかもね」

「一気に説明が適当になったね!」


 だが、情が湧いたということかもしれない。

 確かにいきなり襲ってくるような相手なら殺すことにさほど抵抗は覚えないだろう。そんなものは獣と同じようなものだからだ。

 しかし、話をしてしまえば、相手を人間だと意識することになる。

 殺しにくくなることはあるのかもしれない。


「じゃあ、ミレイユは……」


 異世界に来て最初の町で出会った猫獣人の娘。ミレイユのことを知千佳は思い出した。

 ミレイユは町の案内をしてくれたのだが、最後には犯罪者集団の下に案内し、知千佳たちをさらおうとしたのだ。

 当然、夜霧が返り討ちにしたのだが、その際にミレイユに対しては時間差での能力発動を行っていたのだ。


『実験だなどと言っておったが、さして意味のあるものではない。あれはお主への配慮だな。あれが目の前で死ねば、お主は相当なショックを受けておったはずだ』


 もこもこが小さな声で言う。

 言われてみればそうだろう。

 知千佳たちは、あまりにもミレイユと親しくなりすぎていたのだ。

 襲ってきたから返り討ちにしましたと、単純に割り切れたかは疑問だった。


「見えてきたね」


 夜霧が言う。

 いつのまにか高原はなだらかな傾斜になっていた。

 下方に、城壁に囲まれた港町と海が見えはじめたのだ。


「やっとかぁ。ここまで結構かかったよね」

「このまま行っていいのかな? これまでの経験からすると、初めての町では何かしら起こることが多かったけど」

「うーん。どうだろ。とりあえず、もこもこさんを偵察に……行かせるとまた捕まるかもしれないしなー」

『ほんと、信用ないな、我。ご先祖様をなんと心得るのだ』

「まあ、行ってみないことには何も始まらないか」


 知千佳たちは、港町へと到着した。


  *****


 町に入る際に検問があったが、あっさりと中に入ることができた。

 あからさまに怪しい人物でもない限りは問題とはされないらしい。

 港町なだけあってか、活気にあふれ、人通りも多かった。


「で、来たはいいけど、どうするの?」

「船の手配が必要だけど、とりあえず宿を探そうか。そこで訊けば何かわかるだろ」


 コンシェルジュに絶大な信頼を寄せている夜霧だった。

 町の人に訊きつつ、一番高級そうなホテルを目指して歩いていく。

 すると、いきなり何者かが目の前に立ち塞がった。


「とうとう! とうとう見つけたぞ! 貴様ら! 手間をかけさせおって!」


 武装した女兵士と、従者らしき男だった。

 一瞬、自分たちに言われたのだと思わなかった知千佳だが、女兵士は真っ直ぐに夜霧たちを見つめている。


「どこかで見たような……」

「あぁっ! 最初の町で、私たちを犯人扱いした人!」


 衛兵隊長のエーデルガルトと、その副官のジョルジュ。ミレイユたちを返り討ちにした際、現場にやってきた衛兵だった。


「でも、どうやって先回りしたんだ?」


 夜霧たちは行く先々でトラブルに巻き込まれてきた。

 その度に、立ち寄った場所は様々な被害を受けていて、交通機関も壊滅的な被害に見舞われている。

 夜霧たちを追ってきたのだとすれば、先にこの町へつけるとは思えないのだ。


「あの、エーデルガルト様。彼らの前に姿を現す必要はなかったのでは……。レイン様の命令は、彼らの足取りを追い、居場所がわかれば連絡を、とのことだったはずですが」

「何だと! だったらどうすればいいというのだ!」

「ですので、レイン様に連絡をすれば……」

「そうしているうちに、こいつらが逃げるかもしれんではないか!」

「……わざわざ姿を現さなければ、逃げることもないんではないですかね……」

「そういうことだ! 逃げることは許さんぞ!」


 エーデルガルトは、夜霧をびしりと指差した。


「また、めんどくさそうなのがやってきたよ!」

「別に逃げないけどさ。あんたらはどうやってここに来たんだ?」

「ふっ! そんなもの、空を飛んできたに決まっておろうが!」

「って、空飛ぶ手段があるなら、ここまでの私らの旅は何だったの!?」


 知千佳が吠えた。

 だが、言われてみれば、この世界にも空を飛ぶ手段はあるのだ。

 花川たちが飛んできたように飛行に関連する魔法もあるらしいし、ドラゴンのような空を飛ぶ大型生物もいるし、賢者が乗っていたと思われる飛空艇もある。


「ああ、そんなに気落ちしなくてもいい。空は賢者たちが支配する世界だ。普通は空を飛んで移動なんてできないんだよ」


 エーデルガルトたちの背後から、少年が現れた。

 親しげに話しかけてくるが、夜霧には心当たりがなかった。知千佳も同様のようだ。


「あんたは?」

「降龍。って言えばわかってくれるかな?」

「いや、そんな、皆さんご存じの! みたいな顔されても知らないんだけど!」

「降龍……ね。どっかで聞いたような気もするけど」


 だが記憶は朧気で、それが何のことか夜霧にはさっぱりわからなかった。


「そうか。じゃあ、どこにでもいそうな、意味深な感じで出てくる謎の少年ってことでいいよ」

「そんな奴にこれまでお目にかかったことないんだけど! なんでその説明でいいと思ってんだよ!」


 わけがわからない状況だが、知千佳は元気そうだった。

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