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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
6章 ACT1

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第1話 もこもこさん。前からあれだとは思ってたけど、突然魔王みたいなこと言いだして

 知千佳たちは馬車に乗り、旅を続けていた。

 とりあえずの目的地はブレア王国にある港だ。

 ブレア王国は、(とう)(じん)都市(とし)のあるリンディ王国の隣国であり、街道を真っ直ぐに進んでいけば数日で辿りつけるはずだった。

 今のところは順調だ。

 そう思っていた矢先に、唐突に馬車が停まり、知千佳は何かあったのかと訝しんだ。

 昼食休憩を取ったばかりだし、しばらく停まる予定はなかったのだ。


『少々困ったことになった』


 もこもこが壁を抜けてあらわれた。

 もこもこは御者の槐型ロボットを制御していたのだ。


「というと?」

『外を見てみるがいい』


 知千佳は素直に窓から顔を出し前方を見た。

 巨大な棘があった。

 先端の尖った石柱が道路の真ん中に突き刺さっていたのだ。

 上空から降ってきたのだろう。それが突き刺さった衝撃で、石畳で舗装された道路は半壊状態だった。


「おおう。確かにこれは……。迂回できないの?」

『基本的に馬車は舗装された道しか走れぬからな』


 周囲を見てみれば、石柱はそこら中に何本も突き刺さっていた。

 どうにか先に進んだとしても、その先でさらに道路は分断されてしまっているのだ。


「装甲車は便利だったな。惜しいことをした」


 ()(ぎり)が今さらなことを言いだした。

 ここは高原で、舗装路以外は草地か岩場だった。

 以前乗っていた装甲車なら道を外れても踏破できるだろうが、馬車ではすぐに立ち往生することだろう。


「たとえばさ、このでっかい棘を高遠(たかとお)くんが壊すってどうかな?」

「それで障害物はなくなるかもしれないけど、道が壊れてるのは直せないよ」

『それに、なにやらうじゃうじゃとおるようだが』


 少し離れた所では武装した者たちが逃げ惑っていた。

 巨大な棘にまず目がいってしまって、すぐにそちらには気付かなかったのだ。


「うわぁあああ!」


 棘が落ちてくる。

 それは兵士を押しつぶし、高原に深く突き刺さり、土砂を周囲へと撒き散らした。

 よく見てみれば、他の棘の根元あたりにも赤黒い何かがへばりついている。

 棘は上空から、兵士達を目がけて降ってきているようだった。


「これ、逃げたほうがいいんじゃないの!?」

「しばらくは大丈夫そうだよ。けど、確かにこのままってわけにもいかないな」


 夜霧には死の危険を感じ取る能力がある。

 それによれば今はまだ安全なようだが、それがいつまで続くのかはわかったものではなかった。


『我も魔王を名乗る者だ。逃げ隠れはせぬが、実に無駄なことよな。そもそも何故我の命を狙うのだ?』


 すると、突然女の声が聞こえた。


「もこもこさん。前からあれだとは思ってたけど、突然魔王みたいなこと言いだして……」

『違うわ! なぜ唐突に魔王ごっこなどせねばならんのだ!』

「これから聞こえてくるね」


 夜霧が制服のポケットから、小さな宝石を取り出した。

 コンシェルジュのセレスティーナが用意してくれた、言語翻訳用の魔道具だ。

 本来は首飾りだったが、首にかけるのが面倒だった夜霧は、先端を取り外して使用していたのだ。


『ふむ。それはパブリックチャネルの通信も拾って翻訳して出力するようだな』

「どういうこと?」

『あれだ。力が欲しいか、ならばくれてやろう。的な声がどこからともなく聞こえてくるやつだな!』

「まわりくどいな!? 要はテレパシーみたいなもんのことでしょ?」

『まあ、それだ』


 どうやらギフト保持者間の通信手段があるようだが、この魔道具はそれも翻訳するとのことだった。


『黙れ魔王! 貴様が罪なき人々を苦しめているが故だ! おとなしく滅ぼされるがいい!』

『ふむ。しかし、お前らが我らの活動範囲にいるから悪いのであろうが』

『何だと!』

『我々は狩りを楽しんでいるだけだ。活動範囲にいる手ごろな獲物を狩る。それはお前らもやっていることだろう?』

『ふざけるな! 人間は動物とは違う!』

『お前らには動物とは違い知恵があるのだ。狩られるとわかっているのなら、活動拠点を移せばよい。なぜそれができない? なぜ我らに無謀な勝負を挑もうとする? ふむ。やはり動物とそう違うようには思えぬな』


 勇者らしき者の声も、翻訳機から聞こえてきた。

 この近くにはいないようだが、舌戦を繰り広げながら戦っているらしい。


「最終決戦なら、魔王城とかでやってくんないかな!?」


 知千佳は、はた迷惑だとばかりに叫んだ。


  *****


 魔王と勇者の最終決戦の現場にたまたま通りすがる。

 そうありえることではないはずだが、それが屋外で行われているのなら可能性はあるのだろう。

 知千佳と夜霧は、まさにそんな場面に遭遇してしまっていた。

 もちろんそれは偶然の出来事だ。

 勇者と魔王の戦いを見たいわけではないし、首を突っ込みたいわけでもない。

 この世界における魔王とは特に世界を脅かす存在ではなく、その危険は局所的なものだ。

 魔族の国の頭首が魔王であり、魔王と勇者の戦いといっても、それはただ国と国が争っているにすぎなかった。

 その戦いの趨勢は世界に影響を及ぼさない。たとえ魔王側が勝とうと、それはこの世界の勢力図の一部が書き換わるだけのことであって、知千佳たちには関係のない出来事のはずだった。


「とりあえず、状況を整理しようか」

『うむ。今のところこちらに被害はないが、あまりのんびりともしておれんしな』

「もうちょっとリアクションしようよ! 勇者と魔王だよ? これまでにない異世界ファンタジーな展開じゃない!」

「て、言われてもな。勇者って花川(はなかわ)とかもそうだったんだろ? さして珍しいもんでもないんじゃ?」

「花川くんは前回の転移のときは勇者パーティーにいて、魔王を倒したんだっけ?」


 魔族の国はいくつかあるらしく、だいたいは人間と対立しているとのことだった。

 近隣の国からすると魔族は脅威であり、対抗手段として異世界の者を呼び出すことがあるのだ。


「そーいえば、なんでわざわざ召喚なんてしてるんだ?」

「今さら!?」

『異世界人は強力なギフトが発現しやすい、などの理由があるようだな。なので、花川とやらもそれなりではあったはずだが』

「花川はどうでもいいとして、これからどうするかだな」

「引き返そうよ。道は直せそうにないし」

「でも、他に道ってあったっけ?」

『うむ。ここまではほぼ一本道だったな。引き返したところで、他に道はないやもしれぬ』

「だったらやっぱり、進むしかないんじゃないか? 馬車は置いといて、馬に乗ってとかさ」

『無敵軍団が置いていった無敵馬だからな。多少の悪路であろうと進めるであろうが、小僧は馬に乗れぬのではなかったか?』

「馬って二人乗りできる?」

「できないことはないけど、慣れてないと辛くないかな?」

「歩くよりはましだと思う。港まで行ければいいんだし」


 荷物は夜霧の持つリュックサックに入っているので、それだけを持っていけばいい。

 これは見た目よりも物の入る魔道具だ。

 野営に必要な装備も食料も収納されているので、馬車でなくとも問題はないはずだった。


『何だ!? いきなり魔王が……』

『やりましたね、ヨシマサくん!』


 馬で移動する準備をしていると、そんな声が聞こえてきた。


「え? これって……」


 嫌な予感がして、知千佳は訊いた。


「ああ。俺らのいる場所が、魔王? の範囲攻撃のエリアに入ってたから」

「そんなことだと思ったよ!」


 勇者と魔王の決戦に首を突っ込むつもりはなかったが、夜霧が自動的に魔王を倒していた。

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