第15話 これからは我、壇ノ浦もこもこがヒロインを務めようではないか!
高遠夜霧と、壇ノ浦もこもこは闘神都市へとやってきた。
それなりの規模の街であり、城壁で囲まれている。
外部からでも大きな塔がいくつも建っているのが見えた。それらがこの都市の名物であるタワーなのだろう。
「ふはははは! ヒロイン交代のお知らせ! これからは我、壇ノ浦もこもこがヒロインを務めようではないか!」
もこもこは誰にでも聞こえる声を発していた。
いつものように人の目には見えない霊体ではないのだ。
夜霧の隣に立っているのは、赤いドレスと手袋を身に着けた、夜霧よりも少し年下の少女だった。
もこもこは槐タイプロボットの身体を使用しているのだ。
「唐突に何言ってるんだよ」
「機械の身体で戦闘力があり、しかもその身体を活かすにたる武術の達人で、謎の金属で様々なお役立ちグッズを生成できて、そしてこの愛らしい見た目だ! ヒロインを名乗るに十分であろうが!」
「なるほど。ということは、普段の見た目は愛らしくないと自覚してるってことだな」
「ち、ちがう! あれはあれで、見ようによっては愛らしいはずだ!」
「なんにしろ、胸がないから却下だ」
「お主、すがすがしいほどに、正直じゃな……しかし、あれの胸ぐらい、いくらでも揉み放題かと思うのだが? お主の頼みを無下にはできんだろ」
「この状況で迫るのは駄目だろ」
「そうかの。あれはあれで満更でもないかと思うのだが」
「そういや、もこロボさんのこれは憑依ってやつなの?」
「もこロボとは……その、もう少しどうにかならんのか……」
槐の姿をしているのにもこもこと呼ぶのは違和感がある。そこで夜霧は呼び方を変えたのだ。
「むう。まあ、呼び方はなんでもよい。これは遠隔操縦のようなものだな」
演算装置をクラッキングし、電波で操作しているとのことだった。
「さて。これから街に入るのだが、殺してしまってはいかんということは忘れんようにな」
「わかってるよ」
夜霧は城門へと向かった。
検問などはやっておらず、夜霧たちはすんなりと街の中へ入ることができた。
「普通の街だね」
傍若無人な男が支配者だと聞いていたが、見たところ人々は普通に暮らしていた。
この街ではライザへの挑戦者を選抜しているとのことだったが、全ての人々が戦いを強いられているわけでもないらしい。
「この世界においては平均的な街というところか?」
石造りの建物が多くあり、道路は舗装されていて、馬車が走っている。これまでに訪れた街でもよく見かけた光景だ。
ただこの光景が、この世界において普通なのかは判断がつかなかった。
世界には概念的な上下関係があり、この世界は最下層に位置しているらしい。
なので、上位の世界から落ちてくる物や人が多く存在しており、そのためこの世界独自の技術や文化はどこか曖昧なものとなっていた。
「まあ、普通じゃないところも多々あるけどね」
百階建ての巨大な塔が街の中にいくつか立っていた。他にはドーム状の建築物も各所に存在している。この街での戦闘行為はその内部に集約されているのだろう。
「もっと殺伐とした所かと思ってたよ。閉じ込めて戦わせてるんだろ。こういうの、なんかで聞いたような」
「小僧の言いたいのは蠱毒か。確かにそれっぽくはあるがの」
街は平和だった。
オリエたちがこの光景を見ればどう思うのか。
夜霧は眉を顰めた。同じ国内で、この違いは理不尽と言う他ない。
「さて、誰でも賢者に会えるってことだから来てみたんだけど、どうしたらいいかな」
「そこらの者をつかまえて訊いてみるしかないな」
賢者たちは気まぐれで、そう簡単に衆目の前に姿をあらわすことはない。
だが、この街にいる賢者ライザは例外だった。彼は、この街で挑戦者を待ちかまえているのだ。
「ああ。だったら受付に行けばいい」
通りがかりの人が教えてくれたので、夜霧は受付と呼ばれる建物へと向かった。
「ねぇ。賢者に会いたいんだけど」
「はい。タワーへの挑戦ということでよろしいですか?」
中にはカウンターがあり受付嬢がいた。
暇そうなので、次々に挑戦者があらわれるというほどでもないようだ。
「会えるならそれで。挑戦って何をすれば?」
「はい。タワーは全百フロアからなっていまして、挑戦者の方には一階から挑戦していただきます。そのフロアにいるフロアマスターを倒して鍵を入手すれば、次のフロアに進むことができるのです」
「……それ、やっぱり最上階を目指せってやつだよね?」
夜霧はうんざりとしてきた。百階はいくらなんでも多すぎだ。
「はい。屋上まで到達できれば、ライザ様への挑戦権を得ることができます」
「ちょっと気になったんで訊いていいかな。ルームで待ってる人たちって暇なんじゃないの?」
いつやってくるかもわからない挑戦者を待ち続けているのなら呑気なものだった。
「暇だなんてとんでもない。みなさんタワーから脱出するために必死でトレーニングに励んでおられますよ」
受付嬢は実に気軽にそう言った。
「脱出? フロアマスターって監禁されてるのか?」
「はい。フロアマスターはフロアマスター同士で戦い、順位に応じてフロアを移動しております。最上階での防衛戦に十連続勝利しますとライザ様に挑戦できるようになっております」
塔の外部からの挑戦とはまた別のルールになっているようだが、とにかく全て倒して最上階に行けばいいのだろう。
「タワーへの挑戦かって聞いたよね。他にもあるの?」
「ポットという施設があります。こちらは百名を超える人数でのバトルロイヤルでして、すぐに決着がつくのですが、毎回ほぼ全滅しますし、生き残っても虫の息ということが多いですので、外部からの挑戦者にはおすすめしませんね」
「じゃあタワーで」
ポットの場合、無理矢理参加させられた者も殺さなくてはならないが、タワーなら鍵を奪えばそれで済む。
夜霧はとりあえずタワーAに挑戦することにした。
*****
「ふふっ! フロアマスターが一人と決まっているとでも思っていたの? 私たちは双炎の――」
「死ね」
二人組のうち、一人を夜霧は殺した。
「な!」
生き残った少女は驚愕し、固まった。
「な、何をしたの!?」
「実力差がありすぎるとパンチが見えなかったりするだろ。そーいうやつだよ」
「むちゃくちゃ雑な説明だな……」
槐の姿をしたもこもこが呆れたように言う。もこもこはタワーにエントリーしていないが、見学扱いで夜霧と一緒に行動していた。
「鍵をよこせよ。よこさないなら殺して奪い取るだけだ」
最後の部屋のマスターは素直に鍵を差し出した。
受け取った夜霧は、最後の扉を開く。
そこには階段があり、登ると屋上へと出た。
「思ったとおりめんどくさかったな」
「さくさく進んでおったがな。ほぼ皆殺しだったが」
「殺すつもりでかかってくるんだ。仕方がないだろ」
夜霧は、殺意を向けてくる相手に手加減をする気などない。人を殺そうとするなら、殺される覚悟があって然るべきだと思っている。
『おめでとうございます。ライザ様がそちらに参りますので、しばらくお待ちください』
そんな声がどこからともなく聞こえてきた。
「ここで会うのか」
屋上は平坦で、殺風景な場所だった。謁見というからにはもう少し格式ばった場所が用意されるのかと夜霧は思っていたが、ライザという男は形式にはこだわらないようだ。
「即、戦うということかもしれんな」
「それなら話が早くて助かる」
すると、空から何かが落ちてきて、塔を盛大に揺らした。
あらわれたのは筋骨隆々の大男だ。
噂では好戦的なバトルジャンキーとのことだったが、実際にその姿を目にするとその印象は覆された。
確かに、鍛え上げた肉体は戦いのためだけにあるかのようだが、実に冷めた目をしているのだ。
その表情にあるのは諦観のようで、ライザは思っていたほどには粗野な印象のない男だった。
「……なあ。確かにタワーを勝ち抜いた奴と戦うってルールだけどよ。お前強くないよな?」
ライザは、くまなく夜霧を見ていた。どこかに見落としはないか、少しでも未知の要素はないかと、期待をこめて観察しているのだ。
「そんなこと言われてもね」
「もしかして、そっちの女か?」
「クリアしたのは俺だよ。戦う気がないなら俺の不戦勝ってことでいい?」
「ほう? おかしなことを言うな。この戦いに報酬なんざねえ。俺に挑む奴の目的は俺を倒すことのみのはずだが?」
「でも、俺はあんたの持ってる物が欲しくてここまで来たんだけどな」
「言ってみろ。俺を楽しませることができるってんなら報酬なんざいくらでもくれてやる」
「一つは賢者の石。持ってるよな?」
「ああ。で? 他にもあるのか?」
「あんたはこの街を作りあげて、完全に支配してるって聞いた。だったらこの街はあんたの物って認識でいいか?」
「そうだな。この街にある物は石ころ一つに至るまで全て俺のもので、全てが俺と戦える者を生み出すために存在している」
「じゃあ、街もくれよ」
街については、半魔の拠点として使えるのではないかと思ったのだ。
「いいだろう。全てくれてやる。俺を倒せるんならな」
ふっかけすぎかと夜霧は思ったが、ライザは即答した。
「さあ、始めようか」
ライザが構えをとった。落ち着きのある重厚な構えだ。
格闘技については素人の夜霧だが、それでもこの構えを崩すのは並大抵の技術では無理だろうとわかる。
「じゃあ右足」
だが、夜霧の並大抵ではない力は、あっさりとライザを崩すことに成功していた。
*****
ライザは落胆していた。
タワーAの攻略者が出たというからやってきたら、そこにいたのはごく普通の少年でしかなかったからだ。
ライザの鼻息一つで死にかねない脆弱さであり、話しかけるにも気を使う程度の存在だ。
もしかして何かの力を隠し持っているのかと慎重に観察もしてみたが、付け焼き刃で武術を少し練習してみたぐらいの実力しかなさそうだとライザにはわかってしまった。
これまで強者を求め続けたライザの観察眼だ。ほぼ間違いはない。
だが、そうなると少しばかりおかしなことになる。この程度の実力でタワーをクリアできるわけがないからだ。
この少年に比べれば、隣にいる少女のほうが遥かに強いだろう。機械のようだが、立ち居振る舞いに達人の風格がある。
けれど、訊いてみてもタワーをクリアしたのはやはり少年のほうらしい。
訝しんでいると、勝ったら報酬をよこせと言いだした。
ライザはこの少年に興味を持った。少年は勝つ気でいるのだ。負けを覚悟の破れかぶれの特攻などをされては拍子抜けなので、その点では好意的に思える。
――まあ、いい。なんでもいいから、俺を驚かせてくれよ。
ライザはこれまで何度も期待しては裏切られてきた。
なのでもう期待はしていない。だが、それでもこうして強者を求め続けている以上、少しでも目新しい何かがあればと思うだけだ。
ライザは我流の構えを取った。たいして意味のない、形だけの代物だ。
「じゃあ右足」
少年が言う。
途端にライザの体勢は崩れた。
右足に力が入らなくなり、立っていられなくなったのだ。
ライザは、呆気に取られた。
まるで意味がわからなかったのだ。
何をされたのか、何が起こったのかがさっぱりわからない。
「貴様……何をしやがった!」
「超高速攻撃みたいなもんだよ。あんたには知覚できない早さの攻撃ってことで」
少年は実にめんどくさそうに言った。
「ふざけんな! 俺は光速だって捉えることができる! お前は! 今何もしていなかった!」
少年は一言つぶやいただけだ。それ以外に何もしていない。
そして、ライザは自分が激昂していることに気が付いた。
もう何をされても何も感じないと思い込んでいたライザにとって、それは久々の感覚だった。
「光速って……すごくうさんくさいな」
「小僧の力のほうがよっぽどうさんくさいがな」
少年が少女と顔を見合わせる。
「しかし、皆を連れてこんで正解だったな。こやつの声だけでただの人間なら死んでおるわ」
少女の言葉で、ライザはなんの配慮もなく大声を出していたことに気付いた。
そこかしこの床に亀裂が走っている。戦闘の舞台になることを考慮して作られている塔ではあるが、ライザの大声に耐えきれなかったのだろう。
「どうする? 降参して報酬をよこすなら、これぐらいにしとくけど」
「するかよ! これからだろうが!」
「左腕」
少年がまたもやつぶやくと、ライザの左腕は力をなくし、だらりと落ちた。
「おもしれぇ!」
ライザは右腕を振り下ろし、床に叩き付けた。
その一撃は、一瞬で塔を粉砕する。
当然屋上にいた者たちは落下するしかない。
ライザは落ちるに任せた。大地を蹴って瞬時に移動するようなことはできても、宙に浮かぶような能力は持っていないからだ。
落ちながらライザは少年を見た。
「お主、自分で落下制御ができると聞いたことがあるのだが?」
「こっちのほうが楽だから」
少年は少女の足を傘でもさすかのように掴んでいて、少女は背に生えた黒い翼で大気を捉えていた。
「おらぁ!」
ライザは右拳をくり出した。普通なら当たる距離ではないが、ライザにとっては関係ない。ただの突きから発生する衝撃波だけでも、人を引き裂き、破壊するには十分なのだ。
だが。
少年は無傷だった。
衝撃波は、少年に到達することなく霧散したのだ。
「このままでは瓦礫に埋もれることになるな」
「じゃあ少し移動しよう」
少女が羽ばたき、近くの広場を目指す。
ライザもそれを追った。空中浮遊能力は持っていないが、衝撃波を後方に放てば反動で飛ぶことはできる。
「左足」
両足が動かなくなり、ライザは着地に失敗した。
体勢を崩し、広場の中央にあった噴水に激突したのだ。
もちろんこんな程度でダメージはなく、あったとしてもすぐに回復する。だが、左腕と両足に復活の兆しはまるでなかった。
「今回は大ざっぱだな。前は足首だとか、指だとか細かくやっておったろう?」
「あれ結構めんどくさいんだよ。今回は話を聞く必要はないから、とりあえず身動きを封じればいいかなって」
少女が翼で落下制御を行ったのだろう。挑戦者の二人はふわりと広場に着地していた。
「まだやるの? 今ならまだ取り返しがつくとは思うけど」
「右腕しか動かぬようでは、今後の人生がだいぶヘビーだとは思うがな」
「なんなんだてめぇは! 何をしやがった!」
ライザの叫びで、周囲の瓦礫が吹き飛んだ。
瓦礫は少年へも飛んでいくが、当たらない。大きく動いて避けているのだ。その動きは雑だが、瓦礫が飛んでくることを予めわかっているようだった。
「なんで怒ってるんだよ。敗北を知りたかったんだろ? これがあんたの望んだことじゃないのか?」
ライザは強すぎる自分に嘆き、敗北を知りたいなどと公言していた。
だが、これが望みどおりの敗北なのかと言われると多大な疑問を感じる。
一方的にやられて、攻撃の正体すらわからない。これは実力差が開きすぎている際にはありえることだろう。
だが、何もわからなすぎて、これで敗北感を抱けと言われても納得ができないのだ。
ライザは力と力のぶつかり合いを望んでいた。
力負けするのなら納得できたのだ。だが、これは違う。
ライザの踏み込みは大地を割り、拳撃は大河を逆流させる。その目は光の速さを捉え、纏うオーラは概念的な攻撃すら無効化する。
なのに、それらが一切通用しない。何かをすることすらできていない。
ただ、淡々と、順に四肢を封じられていくだけのこれは、戦いにすらなっていないのだ。
「ふざけるな! こんなもの認めねぇ!」
「見苦しいな、あんた。もうちょっと武人めいた人かと思ってたよ。右腕」
ライザの右腕が力をなくす。
これで四肢は全て動かなくなり、身動きすらままならなくなった。
「さて。負けを認めてくれないなら、賢者の石は無理矢理奪うしかないな。こいつも胸の中かな」
「さてな。リズリーの元であるレインは外部に保管しておったようだが」
「体内に石がある場合は死んだら力を失うって聞いたけど、まだ喋れる状態だしなんとかなるだろ」
少女がライザへと近づいてくる。
ライザは咆哮を放った。ただ叫ぶだけではない、攻撃を意図しての渾身の呼気だ。
その爆発めいた怒号は、周囲の建物を根こそぎ消し飛ばした。
「うお! これでは近づけんな。口が動くだけでこれほどとはたいしたものだ」
少女は咄嗟に飛び退いて、少年の背後に隠れている。その判断力はたいしたものだった。
「どうしたもんかな。呼吸を封じるなら、横隔膜でいいんだろうか? けどさすがに筋肉を細かく殺すのは無理だし肺の周辺ってことで」
少年がそう言うと、ライザの呼吸は止まった。
呼吸関連の筋肉が動きを止め、肺は酸素を取り入れることをやめたのだ。
「さすがにそれは死ぬのではないか?」
「賢者ならしばらくは死なないんじゃないか? 生きてるうちに中を見てみてよ。外にあるなら後で探せばいいし」
「お主、知千佳の前では猫をかぶっておったろ……」
「自重もするよ。不必要に嫌われたくはないからね」
「まあよい。こやつに遠慮などいらんしな。ろくでもない奴なのはわかっておるわけだし」
再び少女が近づいてくる。
「……瞬きだけでも衝撃波がくるとは、こやつ本当にバケモンじゃな……」
ライザは動く箇所を総動員していた。
目や口はまだ動く。それだけでも、ただの人間なら殺せただろう。だが機械である少女の足を止めることはできなかった。
少女はライザを蹴ってうつ伏せにする。
ここまでされてようやく、ライザは恐怖を感じはじめていた。
もう自分は終わってしまっているのだと、とっくに取り返しがつかなくなっているのだと認識できたのだ。
もう、命乞いすらできはしない。
ライザは、敗北の苦さをこれ以上にないほど思い知らされていた。
*****
もこもこの指先が黒く染まって伸びていき、鋭利な刃物状へと変化する。
背に生やした翼と同様、これも侵略者からもらった謎の素材によるものだった。
もこもこは、この素材を自由に変形させることができるのだ。
もこもこは刃でライザの背を切開した。
「む? なかなか面倒だな」
刃も通さないほど頑丈ではないが、切っても次々に再生していくのだ。
だが、もこもこは固定具を作り出し、開いては固定しながら作業を進めていった。
「肺を封じたせいか、弱っておるようだな。それがなければ無理だったやもしれぬ」
もこもこはライザの中から丸い石を取り出す。それが賢者の石だった。
「ほれ」
賢者の石を持ったもこもこが、夜霧のもとへ戻ってきた。
「しかしあれだな。塔の中で出会った美少女たちとのフラグを全て叩き折りよって。普通あーゆーのは仲間にしながら、ボスへと挑むものであろうが」
そう言われても、敵対するなら美少女だろうと関係がないし、仲間など足手まといになるだけだ。
「これで二つ目で、三つ目の当てもあるけど、帰るには足りないのかな」
今回、シオンにもらったものに加えてライザの石が入手できた。そして、レインの石はリズリーが持っている。
「さてな。一度、侵略者のロボットに会ってみるのもよいかもしれん。あやつはそのあたりのことに詳しそうだった」
「そっちを先に確認しとくべきだったな」
だが、ここへ来たのは特に計画をしてのことではなかった。
半魔たちに出会ったことでここまでやってきてしまっただけなのだ。
「後は街の支配権だが……こいつはこんな様子であるし、どうしたものであろうか」
もこもこが倒れている男を見る。四肢と肺が死に、背中を開かれた状態でもライザは生きていた。
だが、この状態では意思の疎通は困難だろう。
「まあ、ライザに勝ったって言えば、どうにでもなるだろ」
夜霧たちを遠巻きに見守る者たちがいた。
この街にいる者でライザの強さと恐怖を知らない者はいないはずだし、そのライザに勝った夜霧に逆らおうなどという者もいないだろう。
夜霧はそう楽観的に考えた。




