表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
5章 ACT2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/130

第12話 魅了でどうにかなりました。

 無敵軍団をやり過ごした夜霧たちは再び移動を開始していた。

 逃げた彼らがまたもや襲ってくることはないはずだが、距離を置いて冷静になれば、今度は大軍を率いてやってくることもあるかもしれない。

 そこで、せめて国境を越えようということになった。

 それで安全というわけではないが、そう簡単に他国に干渉もできないだろうと考えたのだ。

 向かっているのは、マニー王国の東にあるリンディー王国だった。

 二国の境には結構な大きさの川があり、そこには橋がかかっていた。

 橋の両端にはそれぞれの国の関所があるとのことだった。


「国境ってのに馴染みがないんだけど、通してくれるものなの?」


 馬車の中。夜霧が、テオディジアに尋ねた。


「そうですね。そのまま通ることは難しいでしょう」


 この世界での国境はそれほど明示的なものではないらしく、国境を越えることそのものを問題視されることはないらしい。

 だが、この川のような場所は別だった。

 他に通れる場所がなく、橋で交通に制限をかけられるのだから、通行税を取れるのだ。

 なので関所が設けられ、検問が行われている。

 そこには国境警備兵が詰めているので、半魔が通ろうとすればたちまち捕らえられてしまうとのことだった。

 だが、馬車の列はすんなりとマニー王国の関所である砦を通過した。

 長い橋を渡り、リンディー王国の砦も越え、あっさりと国境越えを成し得ていた。


「どういうことなの!?」


 成り行きを見守っていた知千佳は驚いた。何か一悶着あるかと思っていたのだ。


魅了(チャーム)でどうにかなりました」


 エウフェミアがしれっと言った。

 エウフェミアはオリジンブラッドと呼ばれる吸血鬼で、強力な能力をいくつも有しているとのことだった。


「すごいな、魅了(チャーム)! あれ? でもだったらなんで追われてたの?」


 半魔を救出する際も、魅了(チャーム)を使えば犯罪と認識されることすらなかっただろうと、知千佳は思ったのだ。


魅了(チャーム)は一時的なものですから、いずれは解けます。人除けの結界があれば追跡されても問題ないかと思っていたのですが、油断がすぎましたね」


 本来なら見つかることなどないはずだったが、ダリアンの超常的な索敵能力が、人除けの結界の効果を上回ったのだろう。

 一度あったなら二度あるかもしれない。

 今後、人除けの結界を過信することはできないだろう。


「で、隣の国に来たけれど、どうするつもりなわけ?」


 キャロルが訊く。

 本来、半魔たちの里はマニー王国内にある原生林の中にあった。

 逃げ続けるのはいいが、それでどこまで行けばいいのかと思ったのだろう。


「あの、ですね。なんとなく成り行きで半魔の方を助ける形にはなってるんですが、本来の目的は違うんですよね」


 申し訳なさそうに、リズリーが言う。

 彼女は、頼みたいことがあって、夜霧を捜していたのだ。

 そして、夜霧は寝てばかりいるので、彼女のお願いをろくに聞いてはいなかった。


「ですけど、まあ、この大所帯をどうにかしないことには先に進めませんよね……」


 リズリーは少し後悔しているようだが、今さら放り出せる性格でもないらしい。


「何か、具体的な方策ってあるの?」

「どこか、人目につかないような拠点を見つけられればとは思うのですが」


 夜霧が問いかけるも、テオディジアにも答えはなさそうだった。

 知千佳も何かいい場所はないかと考えてみたが、異世界の事情にも詳しくないし、たいしたアイデアも思いつかない。


「森とか山とかがいいのでしょうか。自給自足できそうですし」


 知千佳が考え込んでいると、諒子が多少はましなことを言った。


「そうですね。人と交流するのは難しいですので、必要な物は自分たちでどうにかする必要があります。なので、人の寄りつかないような所で、ある程度の広さを確保できれば」

「心当たりはあるのですか?」

「この辺りには詳しくないので、さっぱりですね

「おおう、なんなんだ、この行き当たりばったり感!」


 仕方がなかったのかもしれないが、これでは先行きが不安すぎる。

 知千佳は頭を抱えたくなってきた。


『どれ。我が上空から見てきてやろうではないか!』

「そうだった! もこもこさん、上にならいくらでも行けるんだよね」

『いくらでもというわけではないが、水平方向よりはましだな』


 もこもこは知千佳の守護霊なのであまり側を離れることができない。

 だが、平面座標上で離れていなければさほど問題はないらしい。


「仕組みがいい加減だなぁ……」

『まあ、しょせんは我の認識によるものだしな』


 そう言ってもこもこが馬車の天井を抜けて空へと飛んでいく。

 そしてすぐに戻ってきた。


「どうだった?」

『近くの山に鉱物資源はありそうだが、あまり豊かとは言えんな。森はあったが、そう大きなものではない。近くの街の者たちが利用しているようなので、隠れ潜むには不向きであろう』

「駄目かぁ」

『このあたりに都合のよさそうな場所はなさそうだな。他に目立っていたのは、遠くにある巨大な街だ。この国の首都やもしれぬ』

「いきなり拠点にできそうな場所を見つけるのは難しそうだ。とりあえず、近くの街で話を聞いてみようか」


 夜霧が言う。


 確かに、この国のことを何も知らない者同士で話し合っていても、埒があかないだろう。

 なので、とりあえずは近くにある街とやらに向かうことになった。


  *****


 街にやってきたのは、夜霧、知千佳、エウフェミアの三人だった。


「ちょっと話を聞いてくるぐらいですから、エウフェミアさんは待っていてもらってもよかったんじゃ」


 残りの者たちは街の近くで待機していて、もちろんそこには人除けの結界を施してある。

 結界はつい最近破られたばかりだが、ダミアンのような規格外のバケモノがあらわれない限りは問題ないはずだった。


「いえ、さすがに当事者が他人任せというのもどうかと思いますし」

「ま、それもそうか。別に俺たちには関係のない話ってこともあるし」

「なんだかんだ言いながら、高遠くんもめんどくさがりのようで、付き合いはいいよね」


 夜霧が来たのは何があっても対処できるからで、知千佳はお目付役としてだった。

 夜霧は倫理面で危うい部分がある。知千佳は、夜霧を一人で行かせると何をしでかすかわからないと不安になったのだ。


「けど、吸血鬼ってなんでもありな感じでちょっとずるいですね」


 今のエウフェミアは、夜霧たちに合わせて日本人のような容貌になっていた。半魔とわからないように変身しているのだ。

 これはオリジンブラッドの能力の一つ、変化によるものだった。これは単なる幻覚やステータス偽装ではなく、身体そのものを作りかえている。よほどのことがない限り、正体がばれることはないとのことだった。


「そうですね。たいしたデメリットはありませんので、ただ強くなったという感じです」


 銀に弱い、陽の光に弱い、流水を渡れない、招かれなければ建物に入れない。通常の吸血鬼は弱点が多いものだが、オリジンブラッドはそれらを全て克服しているとのことだった。


「レインってもしかしてものすごく強かったの?」

「はい。賢者同士で戦うことは禁止されていますので比較はできませんが、賢者の中でも上位に位置していたかと思われます」

「レインか……いきなり攻撃してきてなんだかよくわからなかったよな」


 知千佳たちからすると、レインの襲撃は突然の出来事だった。そして、なんだかわからないうちに夜霧が倒してしまったので、けっきょく話もできていない。

 複製としてリズリーを作るなど面倒なことをしているので、そこには何か思惑があったはずだが、それも今のところよくわかってはいなかった。


「うーん……壁はあるけど、この街はこんなんでいいのかな」


 知千佳は首を傾げた。

 そこは半ば、森に食い込んでいるような街だった。

 城壁を辿っていくと、途中から森に入り込んでいる。

 街と森の境目が曖昧で、壁があっても木を伝って簡単に中へ入れそうだった。


「城壁は抑止力ですね。物理的な防衛力はさほど期待していません」


 基本的にこの世界の街は城壁に囲まれていて、賢者の庇護下にあるなら加護を受けている。

 加護は侵略者(アグレッサー)の侵入を防ぎ、賢者に通知を行うものだ。

 それなりに知能のある侵略者(アグレッサー)なら、城壁のある街を襲うと面倒なことになると学習しているので、城壁には抑止力としての効果があるとのことだった。

 三人は城門へと向かった。

 門番は、やってきた知千佳たちを見て驚いているようだった。


「入ってもいいんだよね?」


 夜霧が訊いた。


「あ、ああ。いいのはいいんだが……本当に――」

「入りたいって言ってるんだ。好きにさせてやればいいだろ」


 一人は止めようとしているが、もう一人は都合がいいと言わんばかりだった。


「なんのフラグだよ!」


 あまりにもうさんくさく、知千佳は声を上げていた。


「ねえ? 絶対中に何かあるんだよ。やめといたほうがいいんじゃない?」

「けど、ここで帰ったって何もわからないだろ」

「中に何があるんですか?」


 知千佳は訊いてみた。


「何もない」

「むっちゃ目が泳いでるな!」


 だが、それ以上のことは言うつもりはないようだ。


「街に何があるというんですか?」


 次にエウフェミアが訊くと、門番の二人の目が虚ろになった。


「あ、そうだよ。こんな時こそ魅了(チャーム)だよね! って吸血鬼が便利すぎる!」

「……街には何もない……ここはごく普通の街だ……」


 門番が寝ぼけたような声で答えた。


「嘘はつけないんだよね?」


 夜霧が確認した。


「はい。ですが、事前に記憶を操作されるなどされている場合は、その限りではありません」

「そっちの人。なんで止めようと思ったの?」

「……はい……ここ最近、あいつらはこの時間帯に来るので……出会ってしまったらとんでもない目に……」

「好きにしろって言ったのは?」


 夜霧はもう一人にも訊いた。


「……奴らの暴虐には人数制限がある……あんたらがあいつらに襲われたなら、街の人は助かると思ったから……」

「うーん。余計なことに首つっこまないほうがいい気も……」


 知千佳は少し迷った。

 どうしてもこの街に用事があるわけではない。この国について知りたいのなら、別の街で話を聞けばいいだけだ。


「あいつらってのは?」

「闘神の……賢者の手下だ……」


「なるほど。だったら行ってみるしかないな」


 夜霧はさっさと街の中に入っていった。


「ちょっと待って! 今、賢者とトラブるのまずくない!?」


 エウフェミアたちは、安全に暮らせる拠点を探しているのだ。賢者に関わってしまえばそれどころではなくなってしまうだろう。


「どこにいるのやらさっぱりな賢者の手がかりがあるんだ。悪いけど、こっちの都合を優先させてもらう」

「けどさぁ」

「いえ、どこにいても賢者と関わる可能性はありますので、無理に避ける必要もないかと思います」


 エウフェミアがそう言うので、知千佳も夜霧の後を追った。

 街の中には大きな樹がたくさん生えていた。

 中には建物と一体化している樹や、樹そのものにドアが付いている建物まである。

 自然豊かで、風光明媚な街だ。

 だが、街の中は奇妙なほどに静かだった。街の規模から考えるともっと賑わっていてもよさそうなものなのに、人がほとんどいないのだ。

 たまに見かける人も、こそこそと隠れるように歩いていて、すぐに建物へと入っていった。


「びっくりするぐらい、活気がないね……」

「これじゃ、ろくに話も聞けないな。とりあえず飯を食べられる所にでも行ってみようか」


 大通りを少し歩けば、すぐにレストランが見つかった。

 大きな樹にドアと窓が付いていて、飲食店を示す看板が掲げられている。ここも樹の内側をくり抜き建物として利用しているのだろう。


「元の世界だと、そこらのファミレスで情報収集なんてことはまったくしたことないけどな!」


 それが、こちらの世界だとウェイトレスなどが情報をぺらぺら喋ってくれそうな気がするのだから不思議なものだ。


「情報収集はエウフェミアさんがいたらイージーモードだろ。すごく助かる」

「まあ、そりゃね。高遠くんの場合、交渉になってないからね。ちょっと脅すだけでも人が死にかねないからね」


 知千佳はレストランの扉に手をかけた。


「って、定休日なの!?」


 扉は開かなかった。

 知千佳は窓を見た。窓には内側から板が打ち付けられていた。


「ここまで客を拒絶してる飲食店には、初めてお目にかかったよ!」

「人はいるね」


 夜霧が窓から中をのぞき込んでいる。

 確かに店員らしき人影は見えた。ドアに鍵をかけ、窓を封鎖し、閉じこもっているかのようだ。


「エウフェミアさん。どうにかなる?」

「はい。目が合えば……かかりました」


 すると、中にいた店員がふらふらとこちらにやってきてドアの鍵を開けた。


「罪悪感すら覚えるほどの便利さだな!」

「こうゆうのをチートって言うんだろうな。これがゲームなら文句の一つも言いたくなる」


 だが、これは現実であり、楽ができるならそれでいい気もする。

 知千佳たちはレストランの中に入った。


「なんで中に入れるんだよ!」


 別の店員が、知千佳たちを見て文句を言った。


「……え? なんで私、お客さんを中に……」


 正気に戻ったウェイトレスが呆気に取られている。


「とにかく鍵をかけろよ!」


 そう言われて、ウェイトレスが慌てて鍵をかけた。


「何がどうなってるの? 俺たち、この街に来たばかりでさっぱりなんだけど」

「この街は……もうおしまいなんです……」


 ウェイトレスがぽつりぽつりと事情を話しはじめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ