第6話 その努力というのは、システムメニューから魔法を選択し続けるだけのことかい?
ジョルトは前世の記憶を持っている。
いわゆる転生をしたのだ。
前世のジョルトはゴミのような人生を送ってきた。
幼いころはどこにでもいるようなよくできた子供だったが、高校受験の失敗で人生に影が差す。そこから自暴自棄になり、ひきこもり、中年になるころには取り返しがつかなくなっていた。
何の生産性もないうえに、そう裕福でもない親に寄生して迷惑をかけ続けるだけのクズ。彼の世間的評価はそのようになるだろう。
もちろん、この手の人物の自己評価が世間の評価と一致することなどない。彼は五十歳を目前にしても、まだ自分には可能性があると思っていたからだ。
ジョルトの前世での死因は、おそらく餓死だ。
ひきこもり続けていたところ、いつのまにか食事が運ばれてこなくなったことは覚えている。
いつもの時間に食事が届かず、床を何度も踏み鳴らして催促しても何の反応もない。けれど、それぐらいでは階下へ確認に行こうとは思わなかった。
ただ口を開けて餌が流し込まれるのを待つ雛のような精神しか持ち合わせていない彼にとっては、その程度のことでさえ億劫だったのだ。
食事が届かなくなって二日目。彼はようやく重い腰を上げた。廊下へ出て一階へと下りる。それは二十年ぶりのことだった。
肥え太った重い身体を引きずるようにして、リビングへと赴く。
テレビが点けっぱなしで、母親は身体を丸めるようにしてソファに横たわっていた。
久しぶりに見る母親は想像以上に年老いていた。
こんなにも小さかったのか。一瞬そう思いはしたものの、そんな感慨など吹き飛ばすような怒りがこみ上げてくる。
食事の用意もせずに呑気に寝ているとはどういうことだと、憤りを覚えたのだ。
「おいババア! 飯はどうしたんだよ!」
だが、なんの反応もない。
母親の身体を揺さぶり、ジョルトはぞっとした。あまりに軽く、手応えがなかったのだ。
ジョルトがひきこもったせいで家庭崩壊し、一人でこの家を守り抜こうとした母親の心身は限界に達していたのだろう。
もちろん、ジョルトは母親の苦労になどまるで気付かない。この状況でも心配するのは自分の飯のことだけだ。
そして、ジョルトは死んだ。
馬鹿みたいな話だが、彼は家を出ることができなかったのだ。
家の中に食料はあったが、それを食い尽くせば終わりだった。
今さら外に出て働くこともできず、ネット通販で何かを頼んでも受け取るために人と会うことすらできはしない。
死ぬぐらいならいくらでもやりようはあったと人は言うだろう。
だが、ジョルトにはできなかった。ただそれだけのことだったのだ。
幸い、死の直前のことはよく覚えていなかった。
覚えていれば、生まれ変わったところで飢え苦しむ記憶に苛まれ続けたことだろう。
気付けば、赤ん坊になっていた。
最初は混乱した。
目も見えず、身体もうまく動かせず、自分が赤ん坊になっていることもわからなかったぐらいだ。
状況が把握できたのは、ようやく立ち上がれるようになったころのことだった。
前世の記憶があるからか、言葉を理解できるようになるのは早かった。
ここは日本ではなく、魔法があり、モンスターのいる世界だ。
マニー王国の裕福な貴族の三男として生まれ、ジョルトと名付けられた。
そんなことを、周囲の会話から知ることができたのだ。
ジョルトは、信じてもいなかった神に感謝した。ここで一からやり直せと言われていると考えたのだ。
前世ではちょっとした油断で道を誤った。だが、赤ん坊のころから意識と記憶がある今回はうまくいくのではないか。
そう思ったのだ。
貴族に生まれたのも幸先がよかった。
魔法がある世界だとしても、それは誰にでも使えるものではなかったからだ。
この世界にはギフトと呼ばれる超常的な力があるが、それは人から与えられて使えるようになるものであり、貴族の家系では強力なギフトが伝承されていた。
ジョルトのクラスは家伝の魔拳士だった。
これは格闘術と魔法を同時に利用可能な、近接から遠距離まで幅広く対応できる戦闘系クラスだ。
ジョルトは神童と呼ばれた。
赤ん坊のころからの修行と、前世の記憶と意識による理解力。
順風満帆の人生が待っている。ジョルトは当初、そのように思っていた。
*****
格技場の床に這い蹲りながら、ジョルトは呆然となっていた。
床を舐め、ジョルトを見上げるのは、対戦相手のはずだったのだ。
いけすかない先輩からの洗礼を華麗に反撃し、学内での地位を不動のものとする。
それは、入学時に自分がやったことだ。
そして、今後自分が学生の間には二度と発生しないイベントのはずだった。
生意気な新入生を、ジョルトが一方的に叩きつぶすはずだったのだ。
試合開始と同時に、魔力で身体を強化。瞬時に相手の背後に回り、死角から一方的に痛めつける。
そのつもりだったのに、回り込んだと思ったら相手の姿が消えていたのだ。
「どうして……こうなった!?」
手加減はするつもりだった。
相手は王族だ。学園内では身分は関係ないとされているが、やりすぎればまずいことはわかっている。
だが、距離を詰めるまでは本気だった。背後に回り込み、そして気付けば床に叩きつけられていたのだ。
ジョルトには圧倒的なアドバンテージがあったはずだ。
他の者がまだ物心もつかないうちから、修業を始めていた。前世のように漫然と過ごすのではなく、日々努力を続けてきたのだ。
赤ん坊のころ。まだ動けないうちから使い続けてきた防御魔法。それは熟練の域に達していて、何者の攻撃も防ぎきれるはずだった。
『その努力というのは、システムメニューから魔法を選択し続けるだけのことかい?』
心の中に響く声に驚愕し、ジョルトは背後を見上げた。
そこには、王子と聞いて誰もが想像するような美少年が立っている。
マニー王国の第二王子ダリアン。今年の新入生で一番注目されている少年だ。
ジョルトは混乱した。
心を読まれている。そして、心の中に話しかけてきているとしか思えなかったのだ。
『驚かせたなら悪かったよ。けど安心してほしい。僕がシステムに干渉して到達できるのは表層意識までだ。心の奥底にまで勝手に踏み入ることはないから』
この世界には念話に関する術も存在している。だがジョルトの知る限り、それらの術の使用には両者の同意が必要だった。今のように一方的に心を読み、話しかけるなどできるはずがないのだ。
『まあ、魔法を何度も空打ちしても熟練度は上がるからね。それも努力は努力なのかもしれないけど』
鼻で笑われたように感じたジョルトは思わず立ち上がっていた。
そして、ダリアンへと向き直る。
『背後の取り合いは僕の勝ちだったけど、まだやるのかい?』
「黙れ!」
負けるわけにはいかなかった。
ここで負けてしまえば、また同じことの繰り返しだ。一度折れればもう立ち上がれない。それは前世で十分に思い知っている。
ジョルトは崩壊の使用を決意した。
崩壊は文字どおり、崩壊をもたらす魔法だ。光線状に放てば鋭く穿つこともできるし、範囲を拡大すれば大規模破壊魔法と化す。
もちろんこんなことをすれば、王族殺しどころの騒ぎではない。学園そのものが崩壊するだろうし、ここにいる全ての者が死に絶えるだろう。
だが、ジョルトはどうでもよくなっていた。
負けるぐらいなら何もかも滅茶苦茶にしてしまえばいいと、本気で思っていたのだ。
「喰らえ!」
魔法が発動する。
だが、ジョルトが期待したような光景はあらわれなかった。
全てが塵となって、砂漠と化すはずだった。だが、目前の景色は何も変わっていないのだ。
魔力はごっそりと減っていた。
なので魔法は発動している。
なのに、周囲になんの影響も与えてはいなかった。
ダリアンに効かない可能性はあった。
ランクが上の防御魔法で防ぐことはできるし、威力を減衰することもできる。
だが、何も起こらないはずはないのだ。ダリアンが防御したとしても、周囲の人や建物まで守ることはできないはずだったのだ。
『悪いけど、魔法は解析して無効化させてもらったよ』
ジョルトは崩れ落ちた。
そんなことができるなど思いもしなかったのだ。
魔法などというのは、しょせんはスキルであり、選択して発動するだけのものにすぎない。
解析だの研究だのが意味を成すはずなどないと、思い込んでいた。
ダリアンが近づいてくるが、ジョルトは俯いたままだった。
『実は一回目は失敗してさ。僕は無事だったけど、学園が砂になっちゃったんだ。だから今のは二回目なんだ。それほどあっさり無効化したわけじゃないんだよ』
ダリアンは楽しそうに言うが、その言葉にジョルトは背筋が凍る思いだった。
それが本当なら、ダリアンは時空すら操れることになる。
そんな相手にどうやって太刀打ちできるというのか。
『何者だ……お前は……』
『ああ、そうたいした者でもないよ。君が魔拳士のクラスであるように、僕のクラスはSEってだけのことさ』
聞いたこともないクラス。だが、漠然とジョルトは理解した。
それは、この世界を支配するシステムに手が届く力なのだと。
それはシステム上で発動する魔法やスキルを無効化し、システムを介して時間すら操る。
『……殺せ……』
そんな相手を前にしていったい何ができるのか。ジョルトは絶望に沈んだ。
もう無理なのだと。人生をやり直したところで無駄だったのだと悟ったのだ。
『殺すつもりならこんな回りくどいことはしないよ』
ダリアンがしゃがみ込み、ジョルトの顔をのぞき込む。
『殺すなって言われてるからね。それに今の魔法は面白かったよ。どうやって身に付けたんだろう。研究させてくれないかな』
ジョルトはよろよろと顔を上げた。
何を言っているのか、よく理解できなかったのだ。
『何、悪いようにはしないよ。僕は話がわかるほうだからね』
ジョルトは、ダリアンの軍門に降るしかなかった。
*****
ダリアンは次々に転生者を仲間にしていった。
けっきょく、ジョルトと同じような者はいくらでもいたのだ。
転生後の環境に大差がないなら、前世の差がそのまま力の差となる。
前世で何の努力もせず、何も成し得なかったジョルトでは、他の転生者にはとても敵わなかったことだろう。ジョルトができるような努力なら他の者もやっているはずだからだ。
ダリアンは転生者を集め、その集団はいつしか無敵軍団と呼ばれるようになった。
力を求めてのことではないのだろう。力なら、ダリアン一人で余りあるからだ。
何が目的なのかはよくわからなかった。
王族ではあるが、王位には興味がないようだ。
その力があれば、王都の地下にある魔界すら攻略できるのではとも思うが、ダリアンが魔界に赴くことはなかった。
彼が言うには、魔界はもう庶民の生活の一部になっているので、現状を変えるのは好ましくないとのことだ。まるで自分が行けば、魔界を封じるなど簡単だとでも言わんばかりだった。
では、彼が何をしているのかと言えば、国内を漫遊しての世直しだった。
この国では王族があちこちに出かけるのはよくあることなのだが、それでも出ずっぱりなのは珍しいほうなのだ。
国中を巡り、怪しげな事件や噂を聞きつけては、駆けつけてそれを解決する。
それは、何かを探しているようにも、ジョルトには思えた。
「半魔か。あんな扱いづらい物を奪ってどうするつもりなんだろう」
ある日、ダリアンが半魔強奪事件に目をつけた。
それが一つ二つのことならば、無敵軍団が出張るほどのものではない。
半魔は物でしかないし、その所有者は概ね貴族以上の上流階級であるとはいえ、ただの窃盗事件にすぎないからだ。その程度のことは、当事者が解決すればいい。
だが、同一犯による連続強奪事件となると話が違ってくる。しかも、犯人の中に吸血鬼がいるらしいのだ。
ただの人間では、この事件を解決に導くのは難しいだろう。こんな事件にこそダリアンが必要なのだった。
*****
「いいぜ、殺すってのなら俺をやってみろよ!」
ロバートが挑発するように少年の前へと馬を進めていく。
ジョルトは、憐憫を込めてその少年を見つめていた。
見た目は日本人なので、ジョルトたち転生者とは異なり転移者なのだろう。
もちろん、転移者が相手なら油断などしない。取り得る限りの手段で解析するのは当たり前だ。だが、結果は、ギフトを持たないただの少年だとわかっただけだ。
それにギフトを使えたところで、ダリアンが手がけた無敵装甲の前ではなんの意味もない。
「死ね」
少年がロバートを指差す。
実に滑稽な姿だった。それが最後の抵抗だというなら実に間抜けな話だ。
ジョルトは、この後の少年の姿を幻視した。
人としての姿を留めることはできないだろう。それがロバートの性癖だからだ。限界まで痛めつけられ、死んだほうがましだという苦痛を与えられ、それでも死ぬことは許されない。
だが、ロバートは落馬した。
ジョルトには意味がわからなかった。
ぐらりと揺れたロバートは、馬から落ちてそのまま動かなくなったのだ。
「俺は任意の相手を殺すことができるんだ。だから立ち去ってくれ」
少年が、噛んで含めるように言う。
そこにあるのは諦めだ。
どうせあんたらには理解できないんだろう、とでも言いたげだった。
言葉の意味はわかる。
ならば、ロバートはこの少年に殺されたのだ。
だが、わけがわからない。
ロバートの軍服には、ダリアンが開発した無敵装甲が施されている。
これは奇跡のごとき代物だ。以前、ダリアンはジョルトの魔法を無効化したことがあったが、それを誰にでも扱えるように、ただの布きれでしかない軍服に効果を付与したのだ。
それはどんな魔法も解析して無力化し、ありとあらゆる状態異常、属性攻撃、物理攻撃まで完全に無効化する。
それは、この世界を支配するシステムに干渉していた。
だからこその無敵なのだ。
ダリアンが気まぐれで作ったような代物ではあるが、それでも今までにこの装甲を破った者はいない。
システムに囚われている者にとって、この装甲は想像の埒外の存在だ。
この世界では力とはギフトのことであり、ギフトはシステムが処理する現象にすぎない。
ならばギフトで無敵装甲を破ることなど、絶対にできないのだ。
「貴様! 我ら無敵軍団をなんと心得る!」
だから、ジョルトはそんなことを口走っていた。
我々は無敵なのだと、装甲が破られるはずがないのだという思いが、そう言わせたのだ。
「いいわ! こんな奴、ダリアン様の手を煩わせるまでもない! 私の魔法で――」
氷炎の魔女、イレーネが叫ぶ。
ジョルトは止めようとした。この女は手加減というものを知らない。
その力を解放すれば、周囲一帯に絶対零度の暴風が吹き荒れることだろう。
ジョルトたちは無敵装甲のおかげで無傷かもしれないが、それでは回収すべき半魔たちが根こそぎ死んでしまう。
だが、その心配も杞憂に終わった。
イレーネもまた言葉を途切らせて、落馬したからだ。
二人が死んだことを、ジョルトは認識していた。
システムを介して見れば、彼らのステータスが死亡になっていることがわかったからだ。
それは、この場にいる仲間たち全員が認識したことだろう。
「当たり前だけど、攻撃してきたら反撃するからな。それと、逃げる人は攻撃しないから、安心して逃げて」
少年は、イレーネを殺したことについて言っているのだろう。
だが、少年は何をしたとも思えなかった。
先ほどのように、死ねとすら言っていないのだ。
「馬鹿な……」
バナードがつぶやく。
「こんなことがあってたまるか!」
激昂して抜刀し、またもや落馬する。
三人目。
もはや疑いようもない。
この少年の言葉は事実なのだ。任意の対象を殺すことができ、殺そうとしただけで反撃される。
「蘇生!」
サリアが落馬した三人を対象に魔法を使う。
彼女の蘇生魔法は破格だ。
誰が誰なのかわからないほどバラバラになった十数人を一度に蘇生したことすらあり、それが故に命を弄ぶ者、冒涜の魔女とすら呼ばれている。
だが、その魔法は効果を発揮しなかった。
そもそも、何が原因で死んだのかもわかってはいなかった。
見たところ、落馬した三人に外傷はない。なのに死んでいる。動かなくなっている。
「何がどうなってるってのよ! 多重蘇生!」
サリアが、少年に向けて魔法を唱えた。
それは、生きている人間に蘇生魔法を行使する禁忌。魂と身体を重ね合わせ、見るも無惨なありさまへと変える外法だ。
だが、結果は同じだった。
サリアもまた、力なく落馬し、動かなくなったのだ。
「なあ。あんたら馬鹿なのか?」
少年が呆れたように言う。
さすがに、これ以上無駄に突っかかっていこうとする者は出てこなかった。
原因はわからないが、四人が死んでいるのだ。
自分は大丈夫だと突っ込んでいく気にはとてもならなかった。
とりあえずはそういうものとして理解するしかない。
そして、それは仲間たちも同様だろう。わけがわからないながらも、これ以上何かをするのはまずいと悟ったのだ。
誰もが動きを止めた。
馬が不満げに唸る声だけが、草原に響いていた。
――おかしい……こんなことがあっていいわけがない!
ジョルトは幸せだったのだ。
ゴミのような前世から脱却し、新たな人生を生きる。
それはうまくいっていた。
自らの力で好き勝手にすることこそ挫折した。だが、より強大な力の庇護下におさまることにこそ幸せはあったのだ。
ジョルトは傍若無人に振る舞うことにどこか罪悪感を覚えていた。
気に入らない奴を殺し、気に入った女を傅かせる。力があれば好き放題にはできるが、そんなことが本当にしたかったのかといえば、自信はなかった。
制限のない自由を得たとしても、途方にくれてしまう。ジョルトはそんな人間であって、ダリアンのような強者に従うことこそが喜びだったのだ。
何が正しいか自分で考える必要はない。
どんな場合でもダリアンが正しい。ジョルトにとってはそれでよかった。
なので、どう見ても人間でしかない半魔を物として扱おうと、邪魔をする民間人を殺そうと、ダリアンがよしとするならそれでいい。
それはいつもの、世直しの旅の一行程でしかなかった。
ただそれだけのことであり、どんな複雑怪奇な事件でも、魔王の手下である魔族共がやってこようとも、たとえ吸血鬼が相手であろうともなんの問題もない。
全ては、ダリアンがどうにかしてくれて、ジョルトたち仲間はそれをもてはやす。今回もそうなるはずだったのだ。
なのに。
あっという間に四人が死んでいる。
それは、恐怖だった。
ぼんやりと突っ立っている少年からはなんの脅威も感じられないというのに、仲間はなんの抵抗も許されずにあっさりと死に至っている。
点と点が繋がらないとでもいうのか、何か重要なものを見落としているかのような、記憶に齟齬でもあるかのような気持ちの悪さがある。
少年は何かをしたはずだが、それが何なのかがまったくわからない。
わからないということが何よりも恐ろしかった。
理屈が通っていれば警戒もできるし、たとえ死んだとしても納得はできる。
だが、この少年にはそれがない。なんの理屈も因果もわからず、ただ死んでしまう。それはあまりにも理不尽だった。
ジョルトはすがるようにダリアンを見た。
ダリアンならきっとなんとかしてくれる。そう、信じるしかなかったのだ。




