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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
4章 ACT2

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第19話 前にやられた時もこんな感じだった

 ガンスリンガーの竹倉希世子と、ドラゴンの力を得た人造人間、篠崎綾香の戦いは続いていた。

 城壁の中を移動しつつ、攻撃しあっているのだ。

 綾香の竜爪(ドラゴンクロー)が、壁を抉る。

 だが、希世子はすでにそこにはおらず、綾香の死角から銃弾を浴びせてきた。

 銃弾は着弾と同時に爆発。連続しての同じ箇所への攻撃は、不可視の防壁である竜鱗(ドラゴンスケイル)をも貫きダメージを与えてくる。


「ちょこまかと鬱陶しいですわね!」


 綾香は季世子へ竜息(ドラゴンブレス)を放とうとした。だが、放つ寸前にはもう季世子はそこにいない。

 何もかもを消滅させる竜息(ドラゴンブレス)だが、完全無欠の攻撃ではなかった。

 発動には若干のタイムラグがあるし、一度定めてしまえば方向を変更できない。つまりどれほど極太の竜息(ドラゴンブレス)で相手を焼きつくそうと思っても、発動の瞬間に射線上にいなくては意味がないのだ。

 それに竜息(ドラゴンブレス)はかなりのエネルギーを消費するし、連続での使用はできない。

 綾香は、竜息(ドラゴンブレス)を放つことができなかった。無駄撃ちは敗北に直結するからだ。


『大技は決まらない。やはり(クロー)(ファング)(テイル)などで少しずつ削っていくしかないだろう』


 なのでエネルギー消費の少ない(ドラゴン)(クロー)をメインに戦うことになる。

 瞬時に発動でき、隙も少ない(ドラゴン)(クロー)を連発して、季世子に休む隙を与えない作戦だ。

 作戦はわかっている。わかってはいるのだが、綾香の苛立ちは募るばかりだった。


竜翼(ドラゴンウイング)で追いつけないの!?」

竜翼(ドラゴンウイング)は速度は出るが小回りが利かない。あくまで遠距離移動用のものだ』

「なんだってこうも正確に同じ所ばかり攻撃してくるわけ!?」


 季世子は縦横無尽に動きながらも、同じ箇所に銃弾を命中させていた。

 最初こそ無駄撃ちもあったが、今では全ての銃弾が綾香に命中している。


『あれはスマートガンね。見覚えがあるわ。製造元は私たちと同じ』

「なんですって?」

『銃に様々なセンサーとAIが仕込んであって、どんな下手くそが撃っても命中するって代物。あいつがこちらの位置を把握しているのもセンサーとAIの連動によるものでしょうね。時間をかければかけるほど、周囲の状況、こちらの癖などを学習して命中精度は上がっていく』


 綾香は手当たり次第に(ドラゴン)(クロー)を放った。

 (ドラゴン)(クロー)の有効射程は十メートルほどだ。一番威力があるのが発生直後。そこから距離が伸びるにつれて威力は減衰し、十メートルを超えると威力は期待できなくなる。

 季世子は綾香の射程を見切っているようで、一定の距離を保っていた。

 なので綾香の攻撃はほとんどは当たらないし、当たってもたいして効果はない。だが牽制にはなっているし、体力を消耗させることができるだろう。

 大部屋から小部屋へ。小部屋から廊下へ移動し、一瞬外へ出てまた中へ。

 壁に穴を開け、設備を壊し、天井を崩し、障害物を一蹴しながら二人は攻撃と移動を繰り返す。

 そして、繰り返しに慣れきったところで、それはやってきた。

 ミサイル。

 弾速の遅い誘導機能を持ったミサイルが綾香に直撃する。

 それは、大爆発を巻き起こし、綾香もろとも一帯を蹂躙した。

 衝撃と高温が綾香を襲う。(ドラゴン)(スケイル)は破壊され、機能していなかった。

 ただの爆発物なら綾香は耐えることができる。なのに、季世子の攻撃は(ドラゴン)(スケイル)を貫き、綾香を傷つけていくのだ。


「さっきまで二丁拳銃だったでしょ! どこからあんなの出したのよ!」


 季世子は肩撃ち式のランチャーを構えていた。

 単発式のそれは一発撃てば無用の長物になる。季世子がランチャーを投げ捨てると、それは空中でふっと消えた。

 そして、次はアサルトライフルをどこからともなく取り出した。


『どうやら、銃器を自在に召喚できるといった能力のようだな』

『建物内での戦いは不利だ。外へ出て大きく距離を取ればいいのではないか? そうすれば(ドラゴン)(ブレス)で決着がつくはずだ』

『いや。距離を取ればこちらが有利だとは限らない。相手に遠距離でこそ使える高威力兵器がないとどうして断言できる?』


 幸い今までのダメージは耐えられる程度のものだ。

 この距離で使える武器がその程度なら、現状を維持し続けるのが最良の選択なのかもしれない。


『それにだ。この空間では(ドラゴン)(センス)が阻害されている。距離を取れば、敵の位置がわからなくなるだろう。仕切り直すということならそれでもいいが』


 ジャミングされているというか、とにかくソウルによる索敵が攪乱されているのだ。

 綾香には知る由のないことだが、単純な索敵は賢者シオンにより妨害されているのだった。


「わかりました。結局、この手で直接引き裂くのが一番よいということですわね!」


 ここで一度引くなどありえない。綾香は、再び季世子に向かって突撃を開始した。


  *****


 竹倉希世子と篠崎綾香の戦いは終結に向かいつつあった。

 それなりに拮抗していた戦いだが、その天秤は綾香へと傾きつつある。

 戦いの趨勢を決したのは、耐久力、回復力の差だった。

 季世子の機動力は綾香を上回っていたし、攻撃も通用してはいたのだが、それでも仕留めきるにはいたらなかったのだ。

 綾香の攻撃のほとんどを回避する季世子だったが、それでも絶対というわけではない。

 かすり傷程度でも積み重なればダメージとなるし、回避し続けていれば体力は消耗していく。

 ジリ貧だった。季世子には決定打がなかったのだ。

 じわりと絶望がにじみよってくる。

 このまま続けていても埒があかない。逃げることも考えたが、それは綾香が許さないだろう。

 綾香も、自分が優勢なことに気付いているはずだ。復讐鬼たる彼女がこの機会を逃すわけがない。

 先が見えてきたこの戦い。はたして続ける意味があるのかと、季世子は考える。

 攻撃を止めれば、足を止めれば、それだけで決着は簡単につくはずだ。

 どうせ負けるなら、さっさと負けてしまえばいいのではないか。

 そうすれば、無駄な努力をせずともすむ。限界ギリギリの努力を続けて苦しまずにすむ。

 そう思いはするのだが、身体は勝手に動いていた。

 どうやら、自分で思っていたよりも季世子は負けず嫌いだったらしい。

 どうせ死ぬにしても、一矢報いてやる。そう考えている自分に季世子は驚いていた。

 銃撃を続ける。

 綾香の死角に回り込み、様々な銃器で攻撃をし、少しずつ綾香の体力を削っていく。

 飛んでくる衝撃波を避け、さらに先を読み、有利な位置へと移動し続ける。

 こんなことがあとどれだけ続けられるのか。

 その終焉は、唐突に訪れた。

 疲労からの足のもつれ。一瞬の回避の遅滞。

 綾香が繰り出す衝撃波は、季世子の右手指を吹き飛ばしていた。

 それによる攻撃の遅れが、綾香の攻撃に拍車をかける。

 回避不能。

 そう判断した季世子は、両腕を交差して綾香の攻撃を食らい、派手に吹き飛んだ。

 錐揉み状に吹き飛び、壁にぶちあたり、壁を突き破って、外へと飛び出す。

 森の木々に激突し、ようやく季世子は地面に転げ落ちた。

 季世子は、生きていた。だが、綾香が繰り出した不可視の刃は全身を切り刻んでいる。

 致命的だった。もう今までのようには動くことができない。

 それでも季世子は、壁にあいた穴から姿をあらわす綾香を睨み付けていた。


「ようやく決着がつきそうね」


 綾香はすぐに止めを刺そうとしなかった。ゆっくりと片手を上げ、季世子へと掌を向ける。

 これまで綾香が何度も繰り出そうとしては止めていた攻撃。それで決着を付けるつもりなのだ。

 おそらくはそれが、王都に大惨事をもたらした光線状の技だ。

 都市を一直線に焼きつくし、軌道上の一切を消滅させたそれをこの距離で喰らえば、季世子など跡形も残らないだろう。


 ――何かないの!? こいつを倒せるような、反撃が可能な武器は!


 そんなものがあるのならとっくに使っている。だが、この期に及んでも諦めきれない季世子は、使用可能な武器を検索した。

 脳裏にあらわれる仮想の武器庫。その中を季世子は駆けた。ここは能力の成長に従って拡張されてきたのだ。

 ならば。

 今この瞬間にでも成長して、さらなる扉が開かれないとどうして言い切れる。

 限界を超えて奥へ。

 より高威力で、避けようがない。こんな状況からでも、綾香を倒せる武器を求めて突き進む。

 そして扉に突き当たり、季世子はそれをこじ開けるべく力を込めた。

 途端に激しい頭痛が季世子を襲った。

 それは、ここから先はまだ早いという警告。引き返せと、お前には無理だと、何かが囁く。

 だが、ここでどうにかしなければ、遅いも早いもない。ただ殺されるのみだ。


「ああぁぁああああぁああぁあああああっ!」


 脳が灼き切れるような負荷にさらされながら、扉を叩き、揺さぶり、殴りつける。

 そして、それは唐突に訪れた。

 ドスン。

 目前に、巨大な塊が出現したのだ。

 丸々とした、数トンはあろうかという金属の塊。

 綾香は、突然あらわれたそれを呆気に取られたように見つめていた。

 それが何かわからなかったのだろう。だが、季世子にはわかっていた。

 それは、実戦使用された中で最も高威力であろう爆弾だ。

 季世子は、その塊の中にある雷管を起動させた。


  *****


 知千佳と合流できた夜霧は、城壁へと戻ることにした。

 現在の選抜戦範囲は魔界の中心部を囲む城壁までとなっている。つまり、城壁から外へと出れば逃げ出したと見做されるのだ。


「いや、もう賢者を誘き出すとかやめとかないでござるか? さっさと魔界を出ればいいだけでは」

「エレベーターを使っても、範囲外に出たと見做されるのは同じだろ」

「だったら、ここに来た時点で詰んでいるのでござるが!?」


 夜霧と知千佳が並んで歩き、その後ろにデイヴィッドを背負った花川がついてきている。


「あ、まだついてきてたんだ」


 もこもこは、知千佳の背後におどおどとした様子で浮いていた。


『いや、その、悪気があったわけではないんで、そろそろ許してくれてもよくはなかろうか?』

「あのさ。バトルスーツ装着時に服を脱いでおく必要ってあったかな?」

『突然必要になった場合は仕方がない。だが、魔界などという危険極まりない場所へ行くことになり、常に装着しておかなければならない状況になったのだ。ならば、余計なものを挟んで、皮膚感覚を阻害する意味などなかろうが。本来なら下着もいらんところだが、お主が譲らんかったからな』

「そのおかげであんなことになったよ!?」

「もこもこさん。そこはもうちょっと粘って、素肌スーツを推さないと……」

「高遠くんまでなに言ってんの!?」


 そんなことを言い合っているうちに、すぐに内側の城門に辿り着いた。


「高遠くん! 二宮とキャロルです!」


 すると、城壁の上から人が飛び降りてきた。

 名乗りどおり、二宮諒子とキャロル・S・レーンの二人だ。

 諒子は羽織袴に二本差しの侍のような格好で、キャロルは赤く派手な忍者装束を着ている。

 二人は両手を挙げていて、逆らう意思のないことを表明しているようだった。


「よかった。無事だったんだ」


 知千佳がほっとした表情を見せた。二人のことは気にかけていたのだろう。


「とにかく逃げることを最優先したのよ。高遠くんと合流できれば、どうにかなるだろうってね」


 そう言うのはキャロルで、諒子はというと、どこか緊張の面持ちだ。


「なんなんでござるか!? 俺は女なんかに興味ないですー、みたいなすかした顔しときながら、実際はハーレム作ってやがるんですか!」

「女に興味ないとか、そんなこと言ったことないと思うけど」


 ただ、好みというものがある。それだけの話だと夜霧は思う。


「あ、ジャパニーズキモオタの花川だ。生きてたんだ!」

「日本代表のように言われても困るのでござるが!」

「で、これからどうするの?」

「範囲外に出て、シオンを誘き出して、情報を得る」


 キャロルの質問に、夜霧は端的に答えた。


「なるほどねー。じゃあ、付いていくしかないよね」

「当然ですね」


 キャロルが言い、諒子が同意する。選抜戦をまともにやるつもりがないなら、そうなるだろう。

 夜霧ならシオンをどうにかできると思っているのだ。


「んー、でも、高遠くんたちって参加者じゃないよね?」

「だから、花川を外に放り出して様子見てみようかと」

「ちょっと待って!? 拙者を囮にするという話はそこまで、ひどい話だったでござるか!? てっきり一緒に来るものかと! あ、というかでござるよ? 今なら、二宮さんもキャロルさんもいるわけでござるよね?」


 夜霧は花川の肩を叩いた。


「花川。女子を囮にするとかあんまりだろう。男を見せてくれよ」

「そんな男気はいらんのでござるよ!」


 実際は、面倒なのでわざわざ放り出そうとは思っていない。普通に皆で範囲外に出ていけばいいだけだと思っている。

 さすがにからかいすぎたので、少しフォローしようとしたところで、夜霧は気付いた。

 殺気だ。

 それも、見える範囲全てを覆いつくすほどにどす黒い、絶対の死圏。

 逃げ場のない、確実な死を夜霧は見ていた。


「とりあえず、みんな俺の後ろに」


 いつにない夜霧の真剣な口調に、皆は黙って従った。

 次の瞬間、目の前にあった城壁が消し飛んだ。


「は?」


 誰かが呆気にとられたような声をあげた。

 城壁を構成していた石材が、凄まじい勢いでバラバラになって飛んでいく。森の木々が一瞬で燃えつき、吹き飛び、土砂と一緒に吹き飛んでいく。一瞬であたりは更地と化していた。

 凄まじい上昇気流が発生し、粉塵が上空へと舞い上がっていく。あっというまに空は曇っていった。至近距離なのでよくわからないが、おそらくそれはキノコ雲を作りあげているのだろう。

 だが、そんな中にあって、夜霧たちの周囲だけが凪いだようになっていた。

 本来は夜霧たちを襲っていたであろう、光、爆音、熱、暴風。その一切が届いていないのだ。


「えーと……これは……」


 言葉を失っていた知千佳がようやく口を開いた。


「たぶん、核兵器だと思う。前にやられた時もこんな感じだった」

「その、さらっと言われても、どうツッコンでいいのか……」


 知千佳はとまどっていた。


「あの、第二門が開いてるんですけど……」


 ぶるぶると震えるスマホを見ながら諒子が言う。

 夜霧は、自分を監視するための機器があったことを思い出した。


「放射線とかの見えない脅威に対応するには必要になるね」


 自分と仲間を守るために、面倒なプロセスを全てすっ飛ばしてフェイズ2を発動させたのだ。

 今、自分たちの命に関わる現象を全て殺し続けている。この状況が核によるものだとすれば、影響がすぐになくなることはない。この空間を脱出するまで門を閉じることはないだろう。


「あの、大丈夫なんでしょうか。その、物理法則が消え去ったりとか……」


 諒子が恐る恐る聞いてきた。研究所の関係者なら、フェイズ2について知っているのだろう。


「今のところは、俺たちに影響を与える危険な現象を個別で殺してるから大丈夫だとは思うけど。しかし、困ったな。これじゃ城壁の外がどこかわからなくなった」

「気にすんのそこ!?」

「そんなことより、そもそも核兵器で狙われたことがあるってどーいうことなんでござるか!?」


 ようやく知千佳と花川がツッコんだ。

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