騎士のポンコツデートと、王子様の夜の囁き
「今日、絶対に楽しいデートにする!オレ、完璧に計画した!!」
リオンに勢いよく手を引かれ、私は王都の街へと連れ出された。
「ここ!オレが見つけた、景色のいい場所!!」
「……って、ここは王都の裏路地だよ!?」
「え?あれ?地図逆さに読んでた!?」
そんな調子で、デートは最初から迷子スタート。
でも必死に地図をひっくり返して私を楽しませようとするリオンに、思わず笑ってしまう。
***
「サトウ、お茶しよう!ここ、オレおすすめのカフェ!」
やっと辿り着いた小さなカフェでホッとしたのも束の間。
「合計金額はこちらになります。」
「……あれ?足りない!?」
リオンは財布をひっくり返して必死に小銭を数えだすが、どうしてもあと少し届かない。
「サトウ、オレ……」
「もう、仕方ないな。出すから落ち着いて!」
結局私が支払うことになり、リオンは情けなく頭を下げた。
「でも……笑ってくれてありがとう。オレ、サトウを楽しませたかったんだ。」
真剣な目でそう言われると、胸が少しだけ熱くなる。
リオンはポンコツだけど、気持ちだけは本物なんだと思った。
***
夜。
部屋に戻ろうとした私を、玲くんが静かに待っていた。
「栞里、迎えにきたよ。」
王宮の長い廊下を並んで歩く。窓の外、月明かりが玲くんを優しく照らしていた。
「今日……楽しかった?」
「うん……大変だったけど、楽しかった。」
「そっか……よかった。」
玲くんは私の部屋の扉を開けたあとも、帰ろうとしなかった。
そのまま中へ入ってきて、ベッドに私を座らせる。
「少しだけ、話そう?」
玲くんが私の隣に腰を下ろし、落ち着いた声がすぐ耳元に届く距離。
「……君を誰にも渡したくないって思った。今日、初めて。」
「玲くん……」
玲くんの顔が近づき、唇が触れそうなところで止まる。
息が絡むような距離に、心臓が壊れそうなほど高鳴った。
「……もう少し、このままでいさせて?」
玲くんはそっと私を抱きしめる。
その胸の中で、私は自分の気持ちがどんどん玲くんに傾いていくのを感じていた――。