いきなり現れた騎士、距離感バグってます!?
「……おはよう、僕のお嫁さん。」
玲くんは今日も、やわらかい笑顔で私を迎えに来た。
異世界に来てから数日。
――正直、最初は驚いた。
「僕のお嫁さんなんだね!」って、いきなり押しが強くて、距離も近くて。
朝から晩まで隣にいようとして、正直ちょっと、怖かった。
でも、玲くんはちゃんと私のことを見てくれた。
私が戸惑っていると気づいたその日から、彼は少し距離を取ってくれるようになった。
今は、無理に触れたりしないし、歩くペースも合わせてくれる。
私はまだ、この世界のことも、玲くんのこともよく分からないけど。
でも……
「朝ごはん、一緒に行こう?」
「……うん。」
今は、この距離が少し、心地いいと思っている。
***
「お前が、王子の嫁だな。」
食堂に入った瞬間、背後から声をかけられた。
振り返ると、青い髪の青年が立っていた。
長い前髪、鋭い目、腰には剣――
玲くんの近衛騎士、リオン。
「お前、サトウ……えっと……シリリ?」
「栞里です!」
「オーケー、シリリだ。」
「どこで切った!?」
「だってオレ、日本生まれだけど、育ちはこっち。日本語、ちょっと、あやしい。」
「いや、惜しいのに間違えないで!」
リオンはにやりと笑って、遠慮なく私のすぐ隣に座ってきた。
全くためらいがない。
「オレ、お前、気に入った。たぶん、オレの方が合ってる、絶対。」
「え、いや、なんで!?初対面で!?」
「オレ、好きはすぐ決まる。そーゆータイプ。」
リオンはさらっと私の髪に触れようとする。
……その瞬間。
「リオン、それ以上は、だめだよ。」
玲くんが、いつもの優しい声で、でもちゃんとリオンの手を止めた。
ゆっくり、でもしっかりと――私の前に立ってくれる。
「栞里は、僕のお嫁さんだよ。」
「知ってる。でも、オレ、あきらめない。勝負する。オレの方がいいって、シリリが思うまで。」
「栞里って呼んで!」
「……シリリ、オーケー。」
絶対わざとだ。
リオンは悪びれもせず、私の顔をまっすぐ見つめる。
「次、お前、デート連れてく。オレ、イタリア式、知ってる。」
「え、やだ、めっちゃ怪しい!!!」
玲くんは、困ったように微笑んだ。
「……リオンはね、ちょっと不器用なんだ。」
「不器用のレベルじゃないよ!!!」
私の異世界生活は、どうやら――
押しの強い騎士と、ちゃんと見守ってくれる王子の間で、振り回される日々になりそう。
最後まで読んでくれてありがとう!
リオンに振り回される栞里、どうなるんでしょう……!?
もしよかったら、また次のお話も読みに来てください!