おはよう、僕のお嫁さん!
はじめまして!
異世界転生したら、なぜか天然王子様のお嫁さんになってしまった佐藤栞里の、ドタバタなお話です。
恋愛とツッコミと甘々(予定)を楽しんでいただけたら嬉しいです!
それでは、第1話スタートです!
目が覚めると、私は知らない天井を見上げていた。
……ここ、どこ?
ふかふかのベッド、金色の刺繍が施されたカーテン。
部屋の隅には薔薇の彫刻。どう考えても、私の家じゃない。
「おはよう、僕のお嫁さん。」
低くて、心に優しく響く声が、ふいに耳を撫でた。
その声は、驚くほど心地よくて、まるで温かいお湯に浸かっているみたいに安心する。
でも、内容が安心できない。
「……お嫁さん?」
声のほうを見ると、そこには金色の髪をふわりと揺らし、片目が前髪に隠れた男の人が立っていた。
黒のスーツを着こなし、胸元には一輪の赤い薔薇。
少しがっしりした体格に、柔らかい笑顔。
美形……ではない。
でも、なぜかすごく目を引く人だった。
「えっと……どちら様でしょうか?」
「僕は、山田玲。君のお婿さんだよ。」
「いやいやいやいやいやいやいやいや!?」
待って。
私、昨日までただの高校生だったんだけど!?
お婿さんって何!?結婚した覚えないんだけど!?
「君、昨日、急に倒れちゃったからすごく心配したよ。無事で良かった……!」
玲はふわっと笑って、ゆっくり私の手を取る。
その手は温かくて、優しくて――。
「……って、いやいやいや!!勝手に触らないで!!!」
「え?お嫁さんだもん、普通だよ。」
「いや普通じゃないから!?初対面だよね!?」
「そうだね、今日が初めまして。でも、昨日、婚約の儀式はちゃんとしたんだよ。」
「記憶にない!!!」
やばい、この人、天然すぎる。
しかもこの心地いい声で、当たり前のように話すから、ツッコんでも全然ダメージがない。
「これから、よろしくね。」
玲は私の手をぎゅっと握り、嬉しそうに微笑んだ。
「僕は、君を大事にするから。」
低くて優しい声が、やけに胸に響く。
……って、いやいや、落ち着け私!!
騙されちゃダメだ。これ、絶対おかしいから!!
「とりあえず、ごはん食べに行こう。お嫁さんと朝ごはん、一緒に食べるのが夢だったんだ。」
「勝手に夢にしないで!?」
完全にペースを握られたまま、私は立ち上がる。
異世界でのお嫁さん生活は――
どうやら、いきなり始まってしまったらしい。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
玲くん、ちょっと不思議で天然だけど……気になる存在になれたでしょうか?
次のお話も、覗きに来てくれたら嬉しいです。