9.辺境の村の困りごと
「……子供?」
「子供じゃない、冒険者クロネだ。それで、魔物を倒して欲しいんだろう? 力を貸す」
村人がクロネの姿を見て呆気に取られているところをもう一度用件を言った。さっき、あたしたちって言ったよね? もしかして、それには私も自然に入っているわけ?
そんな……。村人が怖がるような魔物を戦闘初心者の私が倒せるか分からないのに。クロネってば、私の事を信用しすぎ!
「子供があの魔物と戦うのは無茶だよ。大きな猿の魔物が三体もいるんだぞ」
「力も強いし、とても素早い。とても子供が敵う相手じゃないわよ」
「申し出はありがたいが、君たちじゃ力不足だ」
クロネの言葉に村人たちは難色を示す。それもそうだ。十歳にしか見えない子供が魔物と戦うなんて、普通は考えられない。
「だったら、お前たちとあたしで勝負だ。それで勝ったら信用してくれるだろう?」
クロネは剣を抜くと、いつでも戦えるように構えた。その姿に村人が戸惑い、距離を開ける。
「ちょっと、クロネ! そう言う事をしたらダメだよ!」
「この方が早い」
「実力行使じゃ戸惑うのも当たり前だって。ここは穏便に話し合いで信じてもらうしかないよ」
「……話すの得意じゃない」
慌てて私が間に入って、クロネの剣を下ろさせた。子供の私たちの話を聞いてもらえるようにするには、どうしたらいいんだろう?
「そうだ! クロネが持っているマジックバッグの中に私が倒した魔物を入れたよね? それを出して」
「あぁ、あれか。分かった」
クロネはマジックバッグという物を大容量入れられる不思議な鞄を持っている。その不思議な鞄の中に私が倒したヴォルグレイを入れてもらっていた。
クロネはマジックバッグを取り出すと、中からヴォルグレイの死体を取り出す。すると、その姿を見て村人たちがどよめいた。
「これは……ヴォルグレイ!」
「こんな強い魔物をこの子が倒したっていうの!?」
「本当に強いのか?」
反応は上々だ。どうやら村人もヴォルグレイの強さを知っているらしく、明らかに私たちを見る目が変わった。
「私たちにはヴォルグレイを倒せる力があるの。だから、きっとみんなの役に立てると思うよ」
「確かに……その力があるんだったら、あの魔物も倒せるんじゃないか?」
「でも、こんな子供たちに頼るなんて気が引けちゃうわ」
「大丈夫。あたしは冒険者、ユナは冒険者希望。依頼してくれれば問題ない。これが冒険者タグ」
クロネが服の下に仕舞ってあった、冒険者タグをチラつかせた。
「タグが……銀!? もしかして、Bランクの冒険者か!」
「こんなに小さい子供がBランク!? 凄い!」
「この子たち、本当に強いのかも!」
冒険者タグを見た村人はとても驚いた様子だ。なんだ、そういう物があるんだったら先に見せればよかったのに。クロネったら、すぐに行動に移したがるのね。
「だから、安心して依頼して欲しい。魔物はどこにいる」
「魔物はあの細道を真っすぐ行った先にある、オルディア様の像がある場所にいる」
「分かった。あとは任せろ。ユナ、行くぞ」
「う、うん!」
結局、戦うことになるのね。でも、出会った村の事はほっとけないし、解決してあげたい。
私たちが細い道に向かっていくと、後ろから村人の歓声が聞こえた。なんだか照れ臭くなって、お辞儀をしてから細い道へと入っていた。
◇
細い道を歩き、森の中を進んでいく。空気が澄んでいて、とても気持ちがいい。そこには微かに懐かしさを感じる。
どこかで感じたことのある感覚。一体どこでそれを感じたんだろう?
「ユナは機嫌がいいな」
「なんか、この森の居心地が良くてね」
「そうだな。きっとオルディア様の信仰が残っている場所だからだろう。この空気、懐かしい」
「えっ。クロネも懐かしいって感じるんだ! 私もどこかで感じた懐かしい気配がしたんだよ」
「へー、不思議だな」
そうか、私だけじゃないんだ。クロネも同じことを感じてくれたのが嬉しい。そのままニコニコしながら歩いていくと、クロネがおもむろに口を開く。
「さっきは助かった」
「えっ、なんのこと?」
「……魔物を出して、証明すること」
クロネは話すのが苦手だって言っていたから、変わりに話で解決しただけなんだけどな。それがクロネにはとても特別に映っていたらしい。
「その……ありがとな」
「ううん、いいんだよ! クロネが困った事があったら、助けて上げるから!」
「……そうか」
クロネはマントで顔を半分隠す。照れ隠しみたいだけど、しっぽが嬉しそうにユラユラと揺れてますよ。
しばらく、そんな様子のクロネだったけど、今度は真剣な顔で見つめてきた。
「だったら、ユナが困っていたらあたしが助ける」
「えっ、いいの? それって凄く頼りになるかも!」
「本当か? 本当に頼りになるか?」
「うん、とっても!」
困っている時に助けてくれるなんて、頼りになる! 知らないことが多いし、経験値も少ないし、クロネに助けてもらえればなんとかやっていけるかも。
嬉しそうに笑顔で答えると、クロネの表情が凛々しくなる。
「あたしは頼りになる」
自信満々といった様子で頷いていた。相当嬉しかったに違いない。クロネは頼られるのが嬉しいのかな?
細い道を歩く私たちは少しだけ心の距離が縮まった気がした。
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